タウンエースよりも+100ccの排気量がNV200の走りにゆとりを与える
コンパクトクラスキャンピングカーのベース車両といえば、トヨタ「タウンエース」と日産「NV200バネット(以下NV200)」が双璧をなしている。そう言えば聞こえがいいが、要はこのクラスの商用バンは、市場ではこの2台しかない。タウンエースの製造元であるダイハツから「グランマックス」、マツダから「ボンゴ」が出ているが、バッジが違うだけの話だ。
実質2台しかないベース車のうち、NV200が2026年いっぱいで生産を終了することが日産から発表された。これは日産湘南工場の閉鎖によるものだが、キャンピングカー業界にも少なからず影響が出そうだ。


コンパクトキャンピングカー市場を見渡すと、ベース車になっているのはタウンエースが圧倒的に多い。これは、両車の排気量の違いが要因になっている。タウンエースは1500cc、NV200は1600ccであり、ここで自動車税支払額の差が発生する。
8ナンバー登録にした場合での東京都の標準税率を見てみると、タウンエースは2万4400円、NV200は2万8800円となる。1500ccのところに税率の区切りがあるため、わずか100ccの差で年間4000円もの差が出てしまうのである。
しかし、100ccの排気量の違いは、明確に動力性能差として現れる。筆者はタウンエースバンベースのキャンパーに乗っているが、取材でNV200ベースモデルに乗ると動力性能のゆとりに驚かされる。
加えて、構造の違いによる快適性の差も大きい。タウンエースは運転席・助手席の下にエンジンがあるセミキャブオーバー車だが、NV200はエンジンがバルクヘッドから前にあるミニバンタイプのクルマだ。もともとワゴンとして設計されたため、タウンエースに比べると静粛性が高く、ハンドリングも乗用車に近い。
デメリットがあるとすれば、タウンエースよりも車内空間が狭いこと、そして前述のとおり、自動車税が高いことである。このふたつの理由から、タウンエースをベース車に選ぶビルダーが少なくないが、NV200の走りの良さやデザインの良さを理由に同車ベースのモデルをリリースしているビルダーもいる。
特にキャブコンは重量増が多いカテゴリーで、しかもコンパクトサイズのモデルを造ろうとするとベース車選びは重要だ。埼玉にある老舗ビルダーであるAtoZは、かつてマツダの旧型ボンゴベースのモデルをリリースしていた。ボンゴはこのサイズの商用バンには珍しく、1800ccというスペックに余裕のあるパワーユニットを搭載していたため、キャンパーベースとして人気があった。
しかし、2020年で旧型が廃番となり、現行型がタウンエースのOEM車となったことで、あえてボンゴを選ぶ理由が少なくなってしまった。その後同社は、ボンゴの代わりとなるNV200ベースのキャンパーを積極的にリリースするようになっている。NV200が廃番となると、果たしてその代わりのクルマは何になるのだろうか。
2025年に「NV HOP」というニューモデルを出したばかりの老舗ビルダーがTACOSだ。NV HOPは運転席・助手席に回転対座機能を備えた画期的なモデルで、前方はダイネット、後方はベッドの2ルームとして使える画期的なキャンパーだ。同社の増 浩子社長は、NV200生産終了の報に頭を抱える。
「新規ユーザーを開拓するために、満を持してNV HOPをリリースしましたが、まさか2026年で生産終了になるとは…。おかげさまでNV HOPは皆さんから好評で、弊社としても力を入れていこうとしていたモデル。まさか来年でベース車両が手に入らないとは頭が痛いです」


日産はNV200に代わる後継モデルを投入する予定だが、サイズアップされることが濃厚だ。となると、エンジンはどうなるのだろうか。日本では1600ccエンジンのみだが、北米向けは2000ccエンジン、欧州向けは1500ccディーゼルエンジンも搭載されていた。仮にサイズアップして2000ccエンジンを搭載した場合は、小排気量の魅力がなくなるし、従来エンジンを使うと動力性能不足が心配だ。NV200は登場から15年以上が経過するモデルだが、実は大きさと排気量のバランスを考えれば現状でも悪くないクルマなのである。
もちろんサイズアップをすればキャンパーとして居住空間も拡大するだろうし、排気量が2000ccになっても税金は今までどおりだ。明るい未来も見えなくはないのだが、サイズが大きくなって心配なのは取り回しが悪化することだろう。
そんな状況を考えれば、NV200ベースのキャンパーを入手するチャンスは「イマ」ということになる。現在は日産からの供給も安定しているようなので、購入を検討するなら早めに考えた方がいいかもしれない。





