
2025年5月に東京サマーランド駐車場で開催された「第17回モンキーミーティング」の模様は過去の記事で紹介した通り、550台以上が集まり大盛況だった。このイベントは過去に何度も取材させていただいているが、名前の通りでホンダ・モンキーなら新旧問わず参加可能。さらに同系の横型エンジンを搭載するホンダ製4MINIでも参加が可能とあって、モンキー以外にもさまざまなモデルが集まる。しかも、その多くが趣向を凝らしたカスタムが施されていて、見ているだけでも楽しめるのだ。

2025年はモンキーを中心に取材を進めたのだが、モンキー以外の車種に乗るオーナーから「取材してほしい」と声をかけられることしばし。「今回はモンキーに絞っているんです」とお断りするのが心苦しいのだが、何しろ550台以上もの参加台数なので、的を絞らないと取材しきれるものではない事情をご理解いただきたい。ただ、声をかけていただいた方のお一人から衝撃的なお話を聞けた。なんと1人で20台もの原付コレクションがあるというのだ。しかも、その多くをカスタムしているという。

話しかけてくれたのは東京サマーランドからほど近い場所にお住まいの長澤勝美さん。以前にモトチャンプ誌で「変態さん、いらっしゃい」という連載を担当させていただいた。全国の原付カスタムマニアを訪問して、その変態っぷりをあからさまにするという趣旨のコーナーだ。何年も続いたのでそれこそあらゆるタイプの変態さんを取材してきたが、一人で20台もカスタムしていて、そのすべてを所有し続ける人はやはり少ない。その場で後日改めて取材にお邪魔することをお伝えした。

モンキーミーティングから4か月も経ってしまったが、改めて長澤さんのご自宅へお邪魔することになった。取材当日は地域のお祭りと重なり、朝から合図代わりの打ち上げ花火の音が響く。聞けば長澤さんも毎年参加されているが取材のために今年は辞退されたそうで、これまた恐縮だ。その話の延長で長澤さんはこの地に代々住まれているという。しかも敷地は広大でお爺さんの代まで農家と酪農を営まれていた。それだけに自由になるスペースは困らない。自宅を建て替えることになったタイミングで、自ら自宅の奥にガレージを作ることになった。

と言っても当時は今ほど4MINIがあったわけではなく、どちらかといえば4輪を複数所有されていた。転機になったのは息子さん。もともと長澤さんもバイク好きで高校時代に友人から譲り受けたホンダCBX400Fを今でも所有しているくらい。さらに数台のバイクがあったから、息子さんもその背中を見てバイク好きになったのだろう。聞けば広大な敷地には砂利の通路(一般道ではなく敷地内の道)があり、免許取得前からミニバイクで練習を重ねてきたそうだ。

息子さんが晴れて免許を取得すると、選んだバイクがホンダ・エイプだった。だが数年して4輪へステップアップすると、エイプに乗る機会はグッと減った。ほぼ乗らずにいたので、父である長澤さんが「それなら」と乗ってみることにする。すると改めて小さなサイズなのに本格的なライディングができるエイプに夢中になってしまう。乗れば乗るほど楽しくなるが、やはり50ccという排気量が不満になる。そこでカスタムが開始されたのだ。

それが今から7年前のこと。4MINIマニアとしては意外にも最近からのことで、長澤さんは現在56歳だから40代後半から始めたことになる。だが、タイミングとしては良かったのだろう。息子さんたちも仕事に就き育児にお金がかからなくなる時期だから、お小遣いは好きなように使える。すると4MINIたちがどんどん増殖していった。と同時にカスタム熱もどんどん上がり、横型エンジンを何機も組んできた。限界を試したくてハードチューンを施すと当然ながらブローすることもある。そんなわけでエンジンが車体以上に増えていった。

すると当初の車庫では不足してしまう。しかも以前の車庫は壁がない構造だったため、エンジンを組むには適さない環境。そこで周囲を囲えるガレージを建てることにした。ちなみに長澤さんは建物の外装などの修理・工事を請け負う仕事を自営でされている。だから新築する建物のために仕入れて余った資材や、解体現場から引き取った材料などが手に入る。そんなわけでガレージを建てる材料にも困らないし、工事は自分でできる。自然とガレージもDIYで建ててしまうことになった。

紹介しているガレージは固定資産税がかからないようにするため、基礎を打たずにブロックや単管パイプなどを用いて壁と屋根を立てかける構造。体力盛りの息子さんに手伝ってもらいながら、コツコツと建てたのだ。材料費も人件費もゼロだから、例え好きなだけ作り込んでも奥様から睨まれることもない。バイク好き・クルマ好きにとって大きなハードルになるのがガレージなどの環境と家族の理解。どちらかが欠けても趣味は完徹できないが、長澤さんの方法なら一石二鳥というわけだ。

エイプで始まった4MINI趣味はその後、ダックスやモンキー、シャリィと幅を広げていった。現在メインにしているのはエイプとダックス、シャリィの3台でモンキーは製作中の個体が複数あるものの完成していない。それなのにスーパーカブにも目覚めてしまい、希少なスポーツカブやアンドン、初期C50、キャブ時代のリトルカブと揃えていった。スポーツカブこそノーマルだが、そのほかのカブは走りが楽しめるようにエンジンなどをチューニングしてある。

何台もの4MINIをカスタムしてきた長澤さんは、前述のようにモンキーミーティングだけでなく4MINI系イベントがあれば顔を出している。そのうち仲間の輪が広がり、今では全国各地にあるクラブやマニアとの交流を大切にしている。呼ばれればトランポに積んでカスタムした愛車を運び現地へ向かう。本州なら大抵は参加されているそうだが、さすがに北海道や九州には遠征できていない。

そんな縁で上写真で着ているTシャツは、マニアの間で知られる「栃木のツインカム三兄弟」と親しく交流する縁で作ったもの。長澤さんも「ながさわ輪業」で知られる存在。遠征先で数十台規模のツーリング中をしていた時、思わぬもらい事故にあったこともある。事故処理するのに時間がかかるため「先に行ってて」と伝えても誰一人その場を去らない。『しっかり見てたから大丈夫!』と声を掛け合い、笑顔で支え合う姿に、長年の信頼関係がにじむ。今回は長澤さんのガレージを紹介したが、改めてメインの3台を追って紹介する予定だ。
純正なのはフレームとタンクだけ! 中古部品で仕上げたエイプ改【4MINIマニアの肖像】 | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム