1987年式日産ブルーバードマキシマ4ドアハードトップV6ターボ・ルグラン。

商業施設であるアリオ上田で開催された「昭和平成名車展示会」には、幅広い年代の名車たちが展示された。古くは1960年代から、新しいものでは1990年代までが揃い各世代のクルマを楽しめる内容となっていた。そのためネオクラシックカーで参加する人も年々増えていて、旧車としての認知が広まっている。国産旧車という呼び方が生まれた当時はキャブレター時代で排出ガス規制が厳しくなる以前のモデルを差したものだが、今では90年代はおろか2000年前後のクルマでも旧車扱いとなっている。時代が変われば扱いも変わるものだ。

後期型ではブルーバード4ドアハードトップより全長が80mm長かった。

幅広い世代のクルマが展示された会場をひと通り見渡してみて、思わず唸ってしまった1台を紹介したい。それがブルーバードマキシマだ。マキシマの名は当初、アメリカやカナダで用いられた経緯がある。910型ブルーバードをベースに直列6気筒であるL型エンジンを搭載したモデルで、日本国内では販売されなかった。それが1984年のフルモデルチェンジで国内にも導入され、国内ではブルーバードマキシマを名乗ることになった。

純正オプションのフォグランプはカバーが電動で開閉する。

ブルーバードマキシマはFFへ駆動方式を変更したU11型ブルーバードをベースに、V型6気筒であるVG型エンジンを搭載していた。そのためフロントが90mmほど延長され、大きく重いVG型エンジンを横置きする。引き続き海外向けモデルが主役で輸出仕様には3リッターのVG30が、国内では2リッターのVG20型が採用された。国内向けモデルではボディが4ドアセダンと4ドアハードトップで構成され、エンジンもVG20型の自然吸気とターボがラインナップされた。

4ドアハードトップならではの開放感が得られる。

国内ではブルーバードより高級なハイソカー的存在で、トヨタのマークⅡ三兄弟のような大ヒットとはならなかったが、日産車ユーザーを中心に根強い人気があった。当然はそれなりに売れたのだが、悲しいかな平成の世になる頃にはすっかり姿を見かけることは無くなった。ネオクラシックカーとして90年代前後のクルマが人気となった現在でも、ブルーバードマキシマをイベント会場で見かけることはほぼない。だからアリオ上田の会場で見つけた時は、オーナーを探し出して取材しようと意気込んだ。

エンジンはセドリック・グロリア譲りのVG20ET型。

ところが探せど探せどオーナーが見つからない。仕方ないので主催者である日本旧軽車会代表である吉崎 勝さんにお願いして、オーナーを探していただいた。すると、どこかでお会いしたことのある人。「あれ」とお話を進めると、以前に取材したセリカ・カムリのオーナーである天沼好弘さんが所有されているクルマだった。セリカ・カムリも悶絶級のレア車だが、同じくらいにレアなブルーバードマキシマを増車してしまうとは恐れ入ってしまう。

明るい色調でまとめられたインテリアは高級感漂う。

どうしてまたブルーバードマキシマを入手されたのか聞けば「今年の冬に開催されたイベントに展示されていたのを見て、懐かしさのあまり欲しくなってしまったのです」とのこと。天沼さんは現在65歳であり、ブルーバードマキシマが現役だった頃をよく知る世代。その当時は乗っていなくても40年近く経った今見直すと、それは懐かしくも思うことだろう。当然、イベントから帰ったその日からインターネットでブルーバードマキシマの中古車を探す日々が始まった。

メーターパネルにはターボ車らしくブースト計が備わる。

すると幸運なことに比較的すぐ見つけることができた。しかも売られていたのは2リッターV6ターボエンジンを搭載するルグランで、ボディは4ドアハードトップ。年式が最終年なので販売されていたのもほぼハードトップのターボルグランが中心だったはず。それにしてもラッキーであり、見つけるとすぐさま販売店まで足を運んだ。するとご覧のような状態で、塗装のツヤが生きていれば装備やメカ的な部分まで含めてフルノーマルを維持している。ほとんど即決で買われたそうだ。

一段高くなるダッシュボードの内側に警告灯が並ぶ。

走行距離こそ10万キロを超えているが、この年代のクルマであればまだまだ走る。実際、天沼さんがお住まいの埼玉県からイベント会場である長野県上田市まで自走で参加されている。しかも暑さが残る9月なので「エアコンは効きますか」と尋ねれば納車時にガスを注入してもらったため絶好調だそうだ。またエアコン以外でも不安はなくV6ターボの走りは今でも魅力的だという。

電子制御式スーパーソニックサスペンションを装備。

ただし納車後に少々手を加えられている。それがライト関係で、やはり夜に乗ると今のクルマのように明るくない。点灯しているのか不安になる程の光量だったそうで、不安要素を消すため変更することにされた。灯火類のほとんどをLED化してあり、省電力化とともに明るい灯火としている。とはいえ今後トラブルになる可能性がないわけではないが、セリカ・カムリとの2台体制を長く楽しみたいとお話されていた。セリカ・カムリもステアリングを変更したくらいでノーマルを保っている。やはりネオクラを長く楽しむならノーマルを維持することが秘訣になるのだろう。

ソファのようなシートは80年代らしいデザイン。