開発現場でサウンドを聴く
通されたのは、ケンウッドの試聴室。そこに設置されていたのは、お馴染みのカスタムフィットスピーカー「KFC-XS175S」。独特のグラスファイバー振動板と、ゴールドに光るディフューザーが目を惹く。
ほどなくして、そのスピーカーからハイレゾサウンドが転がり始める–––。
ここは横浜の JVCケンウッドに、昨年誕生したばかりの開発拠点“ハイブリッドセンター”。幸運にも、カーオーディオ用の試聴室での試聴が許された。
リアルな開発現場で聴く珠玉のサウンドは、「KFC-XS175S」の存在を無視して一歩前に音像を作り上げる。実にワイドであり立体的。定位は左右だけでなく、高さ、そして奥行きまでをも表現する。また、ボーカルの唇の動き、時折聴こえる喉のかすかな「かすれ」すら艶っぽい。しかし、それらの音に誇張はなくフラット。これがモニターサウンドの再現というものなのか。


ハイレゾは当たり前の先にあるものへ
JVCケンウッドの特異性は、ハードとソフトの両面を自社で持つ点にある。スピーカーという“出口”を設計する一方で、音源制作の現場である「ビクタースタジオ」を擁していることは他社にはない強みだ。同スタジオは、数多くの著名アーティストが信奉を寄せる録音と原盤製作の聖地である。
2013年にハイレゾスピーカーを初めて世に問うたJVCケンウッドであるが、「次世代スピーカーは単なる高解像度再生にとどまらない提案が必要」と考えた。その答えを探るため、企画部担当者はビクタースタジオのマスタリングエンジニアの中でもカリスマといわれる川崎 洋(かわさき・ひろし)氏と接触。そこで得られた示唆が、このXSシリーズの核となっていく。
マスタリングエンジニアの感覚を頼りに開発と試聴会が繰り返され、マスタリングエンジニアが評する「言葉」を、開発者が扱う「特性」に落とし込む作業が進んだ。この過酷な開発によって「スペック至上主義」から脱却し、「コミュニケーション主導」の開発スタイル確立につながった。こうして開発ストーリーを振り返ると、「アーティストの想いをそのまま伝える」それが結実したのが、XSシリーズなのである。

