

警察の機動隊が災害現場で展開する際に欠かせない存在が、多目的災害対策車です。通常は治安維持の場に立つ機動隊ですが、大規模災害では救助、情報収集、人員輸送、インフラ確保など、多方面の任務を担います。その幅広い役割に応えるため、車両は“多目的”という名の通り、状況に応じて機能を切り替えられる総合的な災害対応ツールとして設計されています。


大型のバスやトラックをベースにしたものが多い災害対策車ですが、近年は小型四輪駆動車をベースとした小型の車両も重要な存在として導入が進んでいます。小回り性や走破性を重視したこのタイプは、大型車両が入れない被災地の奥まった地域や、狭い生活道路が入り組む市街地での活動に強みを持ちます。なお、機動隊もまた警察組織ですが、その車両はパトカーのような白黒ではなく、青と白の塗り分けが用いられており「機動隊カラー」と呼ばれています。また、レスキュー部隊の車両には緑色が用いられています。色の由来は定かではありませんが、警察車両と言っても白黒の車両ばかりではありません。
2025年11月の第3土曜日に、それまでの『No.99 スバル フォレスター 消防指揮車』に代わって『トミカ』に登場した『No.99 スズキ ジムニー 多目的災害対策車』は、そんな小型の多目的災害対策車をモデル化しており、特に最近導入が進んでいる、スズキのジムニーシエラをベースとした車両が選ばれています。
ジムニーは、1970 年に軽自動車唯一の四輪駆動車として発売されて以来、悪路走破性とコンパクトな車体による取り回しの良さにより、様々な作業現場や山間部、積雪地の重要な交通手段としてと、日々の生活からレジャー用途まで、全世界194 の国と地域で幅広く活躍してきたスズキの、いや日本を代表すると言ってもいいコンパクト4WD車です。最新型は2018年に発売されたJB64型で、これは初代から数えて4代目にあたります。

この4代目ジムニーはジムニーの伝統であるハシゴ型に組んだ頑丈なラダーフレーム構造、エンジンを縦置きに配したFRレイアウト(車両前方にエンジンを置き、後輪を駆動させる方式)、悪路走破性に優れる機械式副変速機付きパートタイム4WDシステム、一般的な乗用車の独立懸架式サスペンションに比べ、凹凸路で優れた接地性と大きな対地クリアランスが確保された3リンクリジッドアクスル式サスペンション、機能に徹した飾らない潔さを追求したデザインなどが継承されています。
もちろんこれらの優れた特徴は継承されただけでなく、ラダーフレームにはX(エックス)メンバーと前後にクロスメンバーが加えられて、ねじり剛性が先代モデルより約1.5 倍向上、車体とラダーフレームをつなぐボディマウントゴムが新設計されて乗り心地が改善され、優れた操縦安定性が実現されています。
また、機械式副変速機付きパートタイム4WDシステムは路面状況に合わせて2WDと4WDとを任意に切替えて走行できることはもちろん、4WDでは4H(高速)と4L(低速)のモードに切替えが可能で、4Lは、通常の約2倍の駆動力を発揮し、急な登坂路や悪路の走破性を高めますが、4代目ではブレーキLSDトラクションコントロールを全車標準装備としたことで、4Lモード走行時、エンジントルクを落とすことなく、空転した車輪にだけブレーキをかけることでもう一方の車輪の駆動力を確保し、高い脱出性能を実現しています。

ジムニーは軽自動車ですが、これをベースに小型車用エンジンを搭載した小型車版のジムニーシエラという兄弟車があります。ジムニー同様に本格的な走行性能を備えて、日々の生活の道具からレジャーにいたるまで幅広く活躍し、世界中で愛されています。今回の『トミカ』では『No.99 スズキ ジムニー 多目的災害対策車』とされ、商品名にも車両にも軽自動車版のジムニーが使われていますが、実車の多目的災害対策車は、この小型車版のジムニーシエラをベースとしています。
ジムニーシエラもジムニー同様に卓越した悪路走破性が最大の特徴です。ラダーフレーム構造と副変速機付きパートタイム4WD、短いホイールベースと高い最低地上高により、瓦礫、陥没、冠水、ぬかるみといった複雑な路面でも前進可能です。軽量な車体は路肩崩落など不安定な地形でも負担が少なく、倒木・土砂が散乱した林道や山間部にも入りやすいため、孤立した集落の調査や救援物資の運搬に力を発揮します。また、ルーフキャリアや作業灯、無線アンテナが追加され、警告灯やサイレンを備える仕様もあります。車外装備には救助用ロープ、シャックル、ハンドウインチ、スコップなどが積載され、必要に応じて簡易の牽引や障害物除去が可能です。一部車両にはスノープラウやスノーチェーンが常備され、豪雪地域の災害現場でも機動力を維持します。

車内は限られた空間を有効活用し、救急キット、携帯発電機、簡易通信装置、飲料水や携帯食料を搭載できるよう収納が最適化されています。後席を折りたたむことで物資輸送に使えるほか、要救助者を乗せての搬送にも対応します。大型車のような移動指揮所機能は持たないものの、現場偵察や情報収集の先遣隊としての役割が大きく、被災状況をいち早く把握して本隊に伝える役目を担います。

また、小型の多目的災害対策車は単独での活動だけでなく、大型車両との連携にも向きます。大型の対策車が到達できる拠点まで物資を運び、そこから先の狭路を小型車が担うことで、途切れやすい物流経路を維持できます。さらに、燃費が良く、整備性も高いため、長期的な災害派遣で部隊の運用負担を軽減できる点も大きな利点です。大規模災害では重装備の大型車が主力となりますが、細かい生活道路が多い日本では小型4WD車の存在が不可欠です。ジムニーシエラをはじめとした小型多目的災害対策車は、俊敏さと走破性を武器に、災害現場の隅々まで駆けつける“機動力のスペシャリスト”として活躍しているのです。
『トミカ』に登場した『No.99 スズキ ジムニー 多目的災害対策車』は、このユニークな車両の特徴的なスタイルを的確にモデル化しています。あなたのコレクションに加えてみてはいかがでしょうか?
■スズキ ジムニーシエラ(JB74W型・JL・5MT) 主要諸元(『トミカ』のモデル車両と同一ではありません)
全長×全幅×全高(mm):3550×1645×1730
ホイールベース(mm):2250
トレッド(前/後・mm):1395/1405
車両重量(kg):1100
エンジン形式:型 K15B型 直列4気筒DOHC
排気量(cc):1460
最高出力:74kW(101ps)/6000rpm
最大トルク:130Nm(13.3kgm)/4000rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション(前/後):3リンクリジッド
ブレーキ(前/後):ディスク/ドラム
タイヤ:(前後):195/80R15
■毎月第3土曜日はトミカの日!

毎月第3土曜日は新しいトミカの発売日です。2025年11月の第3土曜日には、上でお伝えしているように、それまでの『No.99 スバル フォレスター 消防指揮車』に代わって『No.99 スズキ ジムニー 多目的災害対策車』が登場します。また、それまでの『No.8 日産 サクラ』に代わって『No.8 フェラーリ プロサングエ』が登場します。なお、『No.8 フェラーリ プロサングエ』には初回のみの特別仕様(特別色)もあります。






