腰のマッサージ機能も備わって至れり尽くせりの次世代フラッグシップ
新型プジョー3008(サンマルマルハチ)はプジョーの次世代フラッグシップモデルだ。「革新性と実用性を備えたCセグメントSUV」との触れ込みだが、実物を目にし、走らせてみたところ、「まさしくそのとおり」との実感である。革新性は「先進的なデザイン」という表現に置き換えてもいいかもしれない。見てのとおりデザインに力を入れたモデルだが、デザイン一辺倒ではなく、実用性をないがしろにしていない。「これはいい」とうれしくなる装備も付いている。


前も後ろも、というのは表現としては変だが、まさしくプジョーの顔だ。ライオンのかぎ爪で引っかいたようなライトのグラフィックは新しい3008にもしっかり受け継がれており、まさしく個性となっている(ランプ点灯時により際立つ)。一見攻撃的に見えるが嫌味がない。凝ったデザインではあるが、ウルサくない。

ルーフ後端に庇状に張り出す空力付加物の形状や、フロントフェンダーアーチに設けられた3つの突起を見ると、空力(とくに空気抵抗低減)にこだわっていることが見てとれる。静止した状態で「いい」と思わせるだけでなく、走ってナンボのクルマとしての機能がよく考えられていることがわかる。19インチサイズのアルミホイールの名称は「YARI(ヤリ)」で、日本の北アルプスに位置する槍ヶ岳に由来するそう。槍の穂先のようなデザインはやはり、空力を意識したものだ。

インテリアには圧倒された。湾曲したフロントウインドウと呼応するようにカーブした長いディスプレイがドライバーに向き加減となって配置されている。21インチサイズだそうだ。センターにはいくつかメニューが並んでいるが、液晶パネルをタッチするタイプ。その右横にシフトセレクターがコンパクトに収まっている。
ステアリングはプジョーの定番で、長円形に近い形状の小径だ。ここが一番好き嫌いの分かれるところだろう。筆者は許容派。操作フィールに難があるのは認めるが、ステアリングの上からディスプレイを覗き込む格好になるので、表示される情報がステアリングのグリップ部に邪魔されずに済むのがいい(最近邪魔されるパターンが多い)。

インパネからドアトリム、そしてセンターコンソールにかけてはテキスタイル(織物)調のトリムが配されている。ボルボEX30にもこの手のトリムが設定されているが、温かみのある質感だからか、筆者の好みだ。インパネからセンターコンソールにかけてはドライバー側とパッセンジャー側を明確に仕切った左右非対称の造形となっており、テキスタイル調トリムがあるドライバー側にはハザードやデフォガーなどのハードスイッチが並んでいる。張り出したインパネとセンターコンソールの隙間にある空間がスマホを置くトレイ(ワイヤレス充電機能付き)だ。
21インチカーブドディスプレイで隠れない助手席前と運転席側Aピラー下のインパネは凹断面のパネルに金属調のドットパターンが配されており、日中でもアンビエントライトの効果で妖しく照らされている。運転中、視界の隅に照明が入るのだが、目障りなどころか、いいムードを醸し出しているように感じた。
新しい3008はファストバックスタイルをしているが、リヤ席頭上空間は充分に確保されており、身長184cmの筆者でも快適に過ごすことができる。筆者が運転席でドラポジをとった状態でリヤ席に移動しても、わずかではあるものの足元に空間が残る。リヤ席にもシートヒーターが付いているのはポイントが高い。
フロントにももちろん、シートヒーターは付いている。ステアリングヒーターも付いているし、なんならフロント席にはマルチポイントランバーサポートという名称のもみほぐし機能が付いている(GTハイブリッド・アルカンタラパッケージに標準)。なくても困らないが、あるとうれしい機能だ(試乗中は終始オンだった)。
プラットフォームはステランティスが新たにCおよびDセグメントの電動車向けに開発したSTLA-Mediumを初適用している。電気自動車(BEV)に最適化したプラットフォームとのことだが、ステランティスは欧州の他の多くのブランドと異なり、BEV専用プラットフォームは設定せず、エンジン(ICE)搭載モデルと共用する。STLA-Mediumもその流れを汲んでいる。
パワートレーンは、1.2L直列3気筒直噴ターボエンジンに電動モーター内蔵6速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)を組み合わせた48Vマイルドハイブリッドシステムだ。アルファロメオ・ジュニアやシトロエンC4に搭載されているユニットと同じ。最高出力100kW、最大トルク230Nmを発生するエンジンは、吸気バルブの閉じタイミングを制御することにより圧縮比よりも膨張比を大きくとって熱効率を高めるミラーサイクルを適用。さらに、可変ベーンによって流路を狭くしたり広くしたりしてレスポンスと出力を両立する可変ジオメトリーターボを適用している。

6速DCTに内蔵するモーターの最高出力は16kW。システム最高出力は107kWである。48Vバッテリーの容量は0.897.9kWhだ。余談だが、モーター内蔵6速DCTのサプライヤーはベルギーのパンチ・パワートレーン(Punch Powertrain)。ステランティスは同社と設立していた電動DCTを生産する合弁会社を2025年1月に完全子会社化している。
発進は常にモーターが受け持ついわゆるEV走行となる。(高電圧系ではなく)低電圧系ハイブリッドの常で、モーターが受け持つ役割はほんのわずかだ。車速が高まるとすぐにエンジンは始動する。アイドリングストップ機能は付いているが、夏場はエアコンの要求からキャンセルしてエンジンを始動するケースが多い。3008の電動パワートレーンが(燃費面も含めて)本領を発揮するのは、気温が低い冬場だろう。
残念ながら、それがモーターのおかげなのか、エンジンの制御のおかげなのか、相乗効果なのか感じ取る解像度は持ち合わせていないので不明だが、アクセルペダルを踏み増した直後にグッと押し出してくれる気持ちいい反応があるのは確か。これが味わえるだけでもこのパワートレーンは「買い」である。ただし、1620kgの車重にシステム最高出力はしょせん107kWなので、全開加速に感激はない。必要充分といった印象だ。
プジョー3008はオシャレだけに気を配ったクルマではない。装備や機能にまで目が行き届いている。売れ行きは好調と聞いているが、納得できる内容だ。
| グレード | プジョー3008 GT HYBRID アルカンタラパッケージ | ||
| 全長 | 4565mm | ||
| 全幅 | 1895mm | ||
| 全高 | 1665mm | ||
| ホイールベース | 2730mm | ||
| 室内長 | ー | ||
| 室内幅 | ー | ||
| 室内高 | ー | ||
| 乗員人数 | 5名 | ||
| 最小回転半径 | 5.4m | ||
| 最低地上高 | ー | ||
| 車両重量 | 1620kg | ||
| パワーユニット | 1.2L直列3気筒DOHCターボ+モーター | ||
| エンジン最高出力 | 100kW(136PS)/5500rpm | ||
| エンジン最大トルク | 230Nm/1750rpm | ||
| 燃料(タンク容量) | プレミアム(55L) | ||
| モーター型式・種類 | ー・交流同期電動機 | ||
| モーター最高出力 | 16kW(80PS)/4264rpm | ||
| モーター最大トルク | 51Nm/750-2499rpm | ||
| バッテリー種類 | リチウムイオン電池 | ||
| バッテリー容量 | 0.9kWh | ||
| 燃費(WLTCモード) | 19.4km/L | ||
| サスペンション | 前:ストラット式 後:トーションビーム式 | ||
| ブレーキ | 前:ベンチレーテッドディスク 後:ディスク | ||
| タイヤサイズ | 225/55R19 | ||
| 価格 | 558万円 | ||






