アフリカの農村部で働く人のため、用途に応じてさまざまな姿に変身

IMVオリジンの「IMV」は、「Innovative International Multi-purpose Vehicle」の略。トヨタが2004年から展開するグローバル新興市場向け車両シリーズのプロジェクト名だ。ピックアップトラック、SUV、ミニバンといったモデルを共通のプラットフォームで開発・生産し、各地域に最適な仕様を供給する。

トヨタ IMVオリジン。「誰でも組み立て/誰でも修理できる超簡単構造」を採用する。

例えばピックアップ用ディーゼルエンジンをタイで、ガソリンエンジンをインドネシアで、トランスミッションをインドやフィリピンで生産するなど、地域ごとに機能を分担しながら供給網を最適化。こうした仕組みにより、トヨタは品質とコストの両立を実現し、新興国市場を中心に約180の国・地域(2023年時点)へ展開してきた。

そんなIMVシリーズのコンセプトカー、IMVオリジンの主たるターゲットはどこかというと、アフリカだ。それも都市部ではなく農村部。現地で仕事を生み、成長し続ける仕組みをつくることを目的としている。

プレスカンファレンスに登壇した佐藤恒治社長は、IMVオリジンにふたつの工夫を盛り込んだと説明した。ひとつめは、「未完成のまま工場を出荷する」こと。生産ラインを出る段階では、まだ“走るクルマ”として組み立てられておらず、現地で人々の手によって組み上げられることを前提にした超簡単組み立て構造を採用する。

もうひとつの工夫は、「組み立てても完成形ではない」という点だ。荷物を運ぶ道具として使うのか、人を乗せる移動手段にするのか。軽トラックとさほど変わらないサイズの車体は、用途によってさまざまな姿に変身が可能だ。

「TO YOU」をブランドメッセージに掲げるトヨタ。プレスカンファレンスで佐藤恒治社長は「このクルマ(IMVオリジン)を企画する際に思い描いたYOUは、アフリカの農村に住む人々でした」と説明した。
展示車両はフラットな荷台になっていたが、用途に応じたアレンジが可能。
運転席も超シンプルなレイアウト。これぞワークホースという趣だ。

現在、アフリカでは貨物の運搬を二輪車が担っている地域が少なくない。このクルマは、二輪車と(高価でなかなか普及しない)四輪車の間を埋める存在を目指している。とはいえ、日本の道路を走っても十分に魅力的に見えるだろう。展示車は荷台下にバッテリーを積んでいるEVモデルだが、動力源は地域のエネルギー事情に合わせて選択できる設計だ。

展示車両は荷台の下には大きなバッテリーを搭載するが、IMVオリジンは地域に適したさまざまなパワートレインを想定する。

IMVオリジンは、まるで組み立て自在なプラモデルのようだ…と思っていたら、なんと本物(!?)のプラモデルを発見! トヨタブース内の「TOYOTA Create LAB」では、バンダイスピリッツとコラボしたJMS限定のプラモデルが用意されており、来場者はそれを自分好みに組み立てられるだけでなく、完成したプラモデルは持ち帰ることができるのだ。楽しみながらIMVオリジンのコンセプトを学べるとは、一石二鳥というほかない。リアルなIMVオリジンとプラモデル、両方とも要チェックだ。

トヨタブース内のTOYOTA Create LAB。この中で、IMVオリジンのプラモデルを組み立てられる。
トヨタ IMVオリジンのプラモデルの作例。実車のコンセプトに沿って、使い方に応じたアレンジが加えられている。
こちらはサファリ仕様!? こんな楽しい作例が、ブース内には多数展示されている。