欧米で人気となった上級スペシャリティカー
日本の自動車メーカーは、1970年代のオイルショックと段階的な排ガス規制強化を乗り越え、クルマの高性能化と高機能化に本格的に取り組めるようになった。日産自動車とトヨタ自動車は、1970年代終盤に6気筒エンジンや大排気量エンジンを搭載した高級グレードを設定した。

しかし、絶好調期に入った日本経済を背景に、ユーザーからはさらに高品質で高性能なモデルを要望する声が高まった。日産とトヨタは、既存モデルのバリエーション展開ではもはや限界であると判断して、新ジャンルの高級パーソナルカーであり、スペシャリティカーを開発して対応した。まず、日産が新世代の高級スペシャリティカー「レパード」を、続いてトヨタは“スーパーグランドツーリスモ”と称した「ソアラ」をリリースしたのだ。

国産車初のスペシャリティカーは、1970年12月にデビューしたトヨタ「セリカ」であり、若者から支持されて大ヒットした。日産からは、ややスポーティ寄りだが「フェアレディZ」がライバルとして、やはり走り好きの若者から人気を獲得しスペシャリティカーブームが起こった。

一方で、欧米では若者に人気のスペシャリティカーとともに、ワンランク上の上級クラスのスペシャリティカーやパーソナルカーも人気となっていた。欧州車の「メルセデスベンツSLCクーペ」や「BMW 6シリーズクーペ」、米国車では「フォード・サンダーバード」や「キャデラック・エルドラド」などが相当する。
1970年代のオイルショックと排ガス規制強化を乗り越え、同時に日本経済が好調期を迎えつつあった1970年代終盤には、日本市場でも30歳代から40歳代のハイステータス層ユーザーを対象にした大人のための高級スペシャリティカーやパーソナルカーが求められるようになった。
これに最初に対応したのが、日産「レパード」であり、続いたのがトヨタ「ソアラ」だった。両モデルとも、大きめのボディに高性能・高機能、そして豪華な装備と多くの点で時代を先駆けていた。
先行した新世代高級スペシャリティカーのレパード

1980年10月、6代目「ブルーバード(910型)」のボディを拡大した北米向け「マキシマ」をベースにした高級スペシャリティカー「レパード」がデビューした。

レパードのスタイリングは、シャープな直線基調にスラントさせたフロントグリルやヘッドライト、長く伸びたボンネット、傾斜のきついリアウインドウなどを巧みに組み合わせ、ボディは2ドア/4ドアハードトップ(HT)が設定された。

室内は、総ソフトトリムで仕上げられ、マルチ電子デジタルメーターや目的地までの距離や時間を計算してくれるドライブコンピューター、オートボリュームコントロールといった先進的な装置が備えられ、また機能的にはオートレベライザーやASCD(オートスピードコントロール)、ワイパー付きフェンダーミラーなどの最先端の装備が備えられた。


パワートレーンは、最高出力105ps/最大トルク15.0kgmを発揮する1.8L 直4 SOHC、125ps/17.0kgmの2.0L 直6 SOHC EGI(電子制御燃料噴射)、145ps/23.0kgmの2.8L 直6 SOHC EGIの3機種エンジンと、5速MTおよび3速ATの組み合わせ。駆動方式は、FRである。
車両価格は、2ドア/4ドアHTとも同額で139.5万~262.0万円に設定。当時の大卒初任給は11.5万円(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約279万~524万円に相当する。

レパードは、デビューとともに高級感あるスポーティなクーペスタイルが注目を集めて人気を獲得。しかし、半年も経たないうちにトヨタから「ソアラ」が登場すると、ソアラの圧倒的な人気でレパードは後塵を拝することになってしまった。
トヨタの先進技術を結集したソアラ

レパードから4ヶ月遅れの1981年2月に、トヨタから“スーパーグランツーリスモ”を謳った「ソアラ」がデビューした。ソアラは、トヨタを代表するイメージリーダーとして、欧州車にも負けない先進技術を結集した高級スペシャリティカーを目指した。


クリーンノッチバックと呼ばれたシャープなエッジを持った上品かつスポーティな2ドアクーペスタイルとともに、多彩なエレクトリック技術を採用した豪華なインテリアが大きな注目を集めた。


具体的な装備としては、デジタルスピードメーターやバーグラフのタコメーターなどを表示するエレクトロニクス・ディスプレイ、電子制御クルーズコントロール、目的地までの時間を予測できるドライブコンピューター、タッチパネル式マイコン式オートAC、さらに音声警告の電子スピークモニター、エア式ランバーサポートなどである。

エンジンは、新開発の国内最高出力170ps/24.0kgmを誇る2.8L 直6 DOHCと 125ps/17.5kgmの2.0L 直6 SOHCエンジンの2種を搭載。トランスミッションは、5速MTと4速ATを選ぶことができ、駆動方式はFRである。
さらに、トヨタ初の油圧パワーアシストのラック&ピニオン、足回りはコイルスプリングを用いた4輪独立懸架、ブレーキはサーボ機構を持つ4輪ベンチレーテッドディスクブレーキが採用され、優れた走りと上質な乗り心地が実現された。

車両価格は、166.2万~236.0万円(2.0L車)/266.7万円~275.0万円(2.8L車)。現在の価値では、約319万~452万円/511万~527万円に相当する。
ソアラのターゲットは、40歳代以上のハイステータス層だったが、高級車ながらスポーティなイメージが強調されたソアラは多くの若者にも支持され、特にスーパーホワイトと呼ばれた白いソアラは大人気となり、一大旋風を巻き起こしたのだ。
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ソアラはレパードに対して価格も高いが、装備の面でも上回っていた。驚くべきことに、ソアラで最も売れたのは、今なら500万円以上する2.8L GTグレードであり、2.0Lの廉価グレードは販売比率が低かった。もちろん、ソアラにそれだけに価値があったとも言えるが、当時の日本は“高いものほど売れて、安いものは売れない”という、上級グレード偏重という今では考えられない風潮があったのだ。





