連載

【歴史を飾ったライバル対決】

パトロール(日本名:サファリ)とランドクルーザーの源流

1980年代中盤から始まったクロカン4WD車がけん引したRVブーム。キャンプやスキーといったアウトドアを楽しむための本格4WDながら、乗用車ライクな装備を持たせた三菱自動車「パジェロ」やトヨタ「ハラックスサーフ」、日産「テラノ」が人気を獲得していた。

1951年に登場した日産初代「パトロール(4W61)」

一方で、当時日産とトヨタには長い歴史を持つ「パトロール」と「ランドクルーザー」という、ハードな本格クロカン4WDが存在していた。パトロールとランクルの起源は、1951年に自衛隊の前身である警察予備隊が使う制式車両の入札のため、各自動車メーカーが試作した小型4WD車に遡る。採用されたのは、米国カイザー・ウィリス社と技術提携していた中日本重工業(現在の三菱重工のルーツのひとつ)の「三菱ジープ」だった。そのとき試作競争に参加した日産とトヨタの試作モデルを市販化したのが、日産「パトロール」とトヨタ「ランドクルーザー」だ。

パトロール(サファリ)とランクルの進化の歴史

初代パトロールは、ラダーフレームに4輪リジット・リーフ式サスペンションの頑強な4WDオフローダーで、まだ庶民のレジャー用としての需要は少なく、農林業や建設土木業などの用途に限られた。

1951年に誕生したランクルの元祖「トヨタジープ BJ型」

パトロールは、1960年10月に2代目(Y60型)に移行し、一般にも親しみやすいランドローバー風のスタイリングに変貌。1980年に3代目(160型)へと進化、日本では「サファリ」を名乗って販売された。

日産初代「サファリ バンAD」
1980年にデビューした日産初代「サファリ」に搭載されたSD33型エンジン

初代サファリ(3代目パトロール)は、レジャーユースも狙ったSUV色を強めたスマートなイメージに変貌。ボディは、3ドアショートボディ(乗用車登録)と5ドアロングボディバン(貨物登録)の2モデル。悪路走破性と耐久性を確保するため、車体はラダーフレーム+4輪リジット・リーフ式サスペンションの構成が踏襲された。

1955年11月に発売されたトヨタ2代目 FJ25L型「ランドクルーザー」(20系)

一方のランクルは、BJジープから20系、30系と進化し、1960年に登場した40系は、耐久信頼性の高さが世界中で認められ、本格クロカンとしての地位を確立。その後、海外でRV用途が人気となったため、1967年に40系と棲み分ける形で4ドアワゴンを設定した「ランクル55系」、さらに1980年にはラグジュアリーな乗用車テイストの「ランクル60系」へと進化した。

1967年に登場して長く世界中で愛用されたトヨタ「ランドクルーザー50系」
1980年8月に発売されたトヨタFJ60V型「ランドクルーザー」

ランクル60系は、当初は商用車カテゴリーだったが、乗用車カテゴリーのモデルも追加され、従来のベンチシートからファブリックのセパレートシートに変更し、エアコン、パワーステアリング、電動シートやサンルーフといった豪華かつ快適装備を一部モデルに採用し、幅広いユーザーの獲得に成功した。

“キング・オブ・アドベンチャー”を目指した日産2代目サファリ

1987年にデビューした日産2代目「サファリ」

1987年10月にデビューした日産2代目「サファリ(Y60型)」は、“キング・オブ・アドベンチャー”を開発コンセプトに、オフロード性能はもちろん、オンロードでの走りも磨きをかけた。

1987年にデビューした日産2代目「サファリ」

ボディタイプは、2ドア乗用ワゴンと4ドア商用バンの2種類で、多くの基本機能が一新された。フレームは、サイドメンバーの断面拡大やサイドメンバーのレインフォースの採用などで大幅に剛性を強化。さらに、サスペンションは4輪リーフリジット式から、フロントが3リンク式、リアが5リンク式を採用することで、オンロードでの直進性やコーナリング時の走行安定性が改善された。

1987年にデビューした日産2代目「サファリ」
1987年にデビューした日産2代目「サファリ」のシャシー、エンジン

パワートレーンは、新開発の最高出力125ps/最大トルク27.8kgmを発揮する4.2L 直6 OHVディーゼルエンジンと5速MTの組み合わせ。駆動方式は、40km/h以下であれば走行中にFR→4WDの切り替え可能なセレクティブ4WDが搭載された。

日産2代目「サファリ」のコクピット
日産2代目「サファリ」のフロントキャビン

乗用ワゴンの車両価格は2グレードで、252.2万円/286.7万円に設定。当時の大卒初任給は15.2万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約382万円/434万円に相当する。その後、1991年2月に3ナンバーワゴン、同年10月には4.2Lガソリンエンジンを追加するなど、商品力強化を行なった。

1987年にデビューした日産2代目「サファリ」

2代目サファリは、従来の頑強なクロカン4WDのイメージから、アウトドアやレジャーなどマルチユースの高級志向の本格クロカン4WDへのイメージチェンジに成功。国内よりも、海外でパトロールとして高い人気を獲得した。

“4WDの頂点”を謳ったトヨタ・ランドクルーザー80系

1989年10月にデビューしたトヨタ80系「ランドクルーザー ワゴン VXリミテッド」

ランクル60系の後継として1989年10月にデビューした「ランドクルーザー80系」は、“陸の巡洋艦(ランドクルーザー)”のネーミングらしい大型の本格クロカン4WDとして、”4WDの頂点”を謳って3列シートの8人乗り乗用ワゴンと2列シートの5人乗り商用バンが設定された。

1989年に発売されたトヨタ「ランドクルーザー ワゴン VXリミテッド」のコクピット

堂々たるボディに、曲面構成のダイナミックなデザインが採用された。異形ヘッドライトとともに一体感のあるフォグランプを装備、フロントグリルには立体感のある横バータイプを採用。インテリアについては、インパネからコンソールまでを一体化し、さらにオートACやオーディオなどの装備も一級品が用意され高級感が一層高まった。

1989年に発売されたトヨタ「ランドクルーザー ワゴン VXリミテッド」のフロントシート

足回りについては、フロントはリーディングアーム式コイルスプリング、リアは4リンク式/コイルスプリングを採用、上位グレードには2ステージショックアブソーバーも設定された。

パワートレーンは、ワゴンには最高出力165ps/最大トルク29.5kgmを発揮する4.0L 直6 OHVガソリン、バンには135ps/28.5kgmの4.2L 直6 SOHCディーゼル、165ps/37.0kgmの同エンジンのターボディーゼルの3種エンジンと、5速MTおよび4速ATの組み合わせ。駆動方式は、従来のパートタイム4WDからセンターデフ式のフルタイム4WDに進化した。

トヨタ「ランドクルーザー VXリミテッド(80系)」のリアビュー

ガソリンエンジン搭載乗用ワゴンの車両価格は2グレードで、306.0万円/369.0万円。現在の価値では約429万円/518万円に相当する。

ランクル80系の走破性は世界で高い評価を受けた。一方でサルーン並みの快適性も併せ持ち、どこでも安定して走れるオールラウンダー4WDとして世界で人気を獲得した。

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上級のクロカン4WDへと変貌した2代目「サファリ」と「ランクル80系」は、日本のみならず北米や中東、オーストラリアなど世界市場を重視して開発された。その後もパトロールとランクルは、フラッグシップ4WDとして「レンジローバー」や「メルセデス・ベンツGクラス」をライバルとして世界の舞台で戦っている。

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