連載

【歴史を飾ったライバル対決】

デートカー誕生の背景

1980年代のバブル景気とともに隆盛を極めたのは、トヨタの「ソアラ」や「マークII」に代表される、ゴージャスなインテリアを持つスポーティなハードトップが特長の“ハイソカー”だった。一方、それ以前に若者から人気を集めていたスペシャリティカーはその勢いに押され気味だったが、スペシャリティカーのうち若者のデートを演出する都会的なイメージを訴求した“デートカー”は若者から熱い支持を受け、ハイソカーにも負けない人気を獲得した。

ハイソカーの代名詞、トヨタ「ソアラ」

デートカーという言葉は、メディアが創った造語だが、その代表となったのがホンダの2代目~4代目「プレリュード」と日産自動車の4代目~5代目「シルビア」である。

ハイソカーと同時期に別のコンセプトで大ヒットしたデートカー

バブル時代の1980年代に一世を風靡したハイソカーとデートカーだが、そのコンセプトとユーザー層には大きな違いがある。

・ハイソカー:スポーティさと高級車の雰囲気を融合させたクルマ
静かでゴージャスな室内空間とスタイリッシュなハードトップボディによって、大人の余裕と品格をアピール。主に6気筒エンジンを搭載して快適性や静粛性を追求し、スポーティさよりも高級感と質感を重視。ユーザー層は、20代後半~40代でクルマにある種のステータスを求めた。

・デートカー:彼女を連れてデートするためのお洒落なクルマ

明るい室内空間とスポーティで流麗な2ドアクーペスタイルが基本で、デートを演出する楽しさをアピール。主に4気筒エンジンを搭載し、ショートホイールベースで軽快なハンドリングが楽しめたが、実際の走りよりも若々しさやスポーティな雰囲気を重視。ユーザー層は、10代後半から20代前半で女性受けするカッコよさを求めた。

デートカーはコレから始まった!? ホンダ2代目「プレリュード」

デートカーという言葉を誕生させて世間に広めたのは、1982年11月にデビューした2代目「プレリュード(AB型)」である。“FFスーパーボルテージ“というキャッチコピーを冠し、リトラクタブルヘッドライトを装備したワイド&ローのスポーティかつお洒落なスタイリングと先進メカニズムをフルに搭載。女性を含めた若者層を中心に支持されて大ヒットモデルとなった。

そして、デートカーの勢いが最高潮に達したのは、2代目の後を継いだ3代目「プレリュード」、そして日産の5代目「シルビア」が登場した1980年代後半である。

華やかな美しさと先進技術で魅了した3代目プレリュード(BA5)

1987年4月にデビューしたホンダ3代目「プレリュード」

1987年4月、プレリュードは3代目に生まれ変わった。3代目プレリュードは、2代目から受け継いだリトラクタブルヘッドライトを配したワイド&ローの流麗なスタイリングにさらに磨きがかけられ、国産車離れした華やかな美しさがあった。インテリアには、ラップラウンド形状のインパネ、最上級グレードにはメモリー付リクライニングシートやランダーサポート調整機能付ドライバーズシートなどが装備された。

ホンダ3代目「プレリュード」4WSシステム構成図
ホンダ3代目「プレリュード」4WS、ハンドルの切れ角と前輪/後輪の動きの概念図

また当時はバブル時代の真っ只中。潤沢な資金をバックに、3代目にはホンダ自慢の最新技術がフルに盛り込まれた。なかでも最大のアピールポイントは、世界初を謳った4WS(4輪操舵)だ。ステアリングの角度0~230度の状態で同位相、230度以上では逆位相に後輪が転舵し、安定性と最小回転の縮小が実現された。

ホンダ3代目「プレリュード」に搭載されたB20A型2.0L DOHCエンジン
ホンダ3代目「プレリュード」に搭載されたB20A型2.0L 1カム3バルブSOHCエンジン

パワートレーンは、高性能グレード「2.0Si」用の最高出力145ps/19.0kgmの2.0L 直4 DOHCエンジン、新設定の110ps/15.5kgmの2.0L 直4 SOHC(ツインキャブ)の2種エンジンと、5速MTおよび電子制御4速ATの組み合わせ。エンジンについても、電子制御燃料噴射式、可変式デュアルポート・インマニを採用するなど、最新技術満載の仕様だった。

ホンダ3代目「プレリュード」のコクピット
ホンダ3代目「プレリュード」のフロントシート
1987年4月にデビューしたホンダ3代目「プレリュード」

2代目をブラッシュアップした3代目は、2代目を凌ぐ人気を獲得。バブル時代に生まれたデートカーの象徴的なクルマとなった。

秀逸の美しさと走りで魅了した5代目シルビア(S13)

1988年5月にデビューした日産5代目「シルビア」

シルビアの歴史は古く、初代(CSP311型)は1965年4月にスペシャリティカーとして誕生した。その後は、トヨタ「セリカ」をライバルとして進化し続け、1988年5月にシルビアは5代目(S13型)に生まれ変わった。

1988年5月にデビューした日産5代目「シルビア」
日産5代目「シルビア」のコクピット
日産5代目「シルビア」のフロントシート

注目はその美しいスタイリングだった。“エレガント・ストリームライン”と称したボディラインは、従来の2ドアクーペにはなかったシンプルで張りのあり面構成によって表現された。その秀逸なスタイリングは、日本のみならず世界でも高い評価を受け、1988年のグッドデザイン大賞を受賞した。

日産5代目「シルビア」に搭載されたCA18DE(NA)、CA18DET(ターボ)型エンジン

パワートレーンは、最大出力135ps/最大トルク16.2kgmを発揮する1.8L 直4 DOHC、175ps/23.0kgmのインタークーラーターボの2種エンジンと、5速MTおよび4速ATの組み合わせ。駆動方式は、プレリュードなどFFレイアウトが普及する中で、当時としては珍しいFRが踏襲され、シルビアの魅力のひとつだった。

日産5代目「シルビア」の新開発マルチリンク式リヤサスペンション
日産5代目「シルビア」の新開発マルチリンク式リヤサスペンション

また、新世代FRに相応しいリヤサスペンションとしてマルチ・リンクシステムを採用。さらにオプションだが、コーナリング中にステアリングの切れ角に応じて操舵する4WSのHICAS-IIも設定。高性能なエンジンによって実現される高いレベルの走行性能とシャープなハンドリング性能が、スポーツ派のユーザーを夢中にさせた。ちなみにプレリュードの4WSは機械式、シルビアの4WSは電子制御式だが逆位相は使わず、小回りよりもスポーツ走行時の安定性を目的としている点が異なる。

日産5代目「シルビア」のHICAS IIシステム概要図

5代目シルビアは、デートカーとしてライバルのプレリュードにも負けない人気を獲得した。

1988年5月にデビューした日産5代目「シルビア」

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3代目プレリュードと5代目シルビアは、いずれもデートカーを代表する人気モデルだが、それぞれ異なる個性を発揮した。簡単に、特徴をまとめてみた。

ホンダ3代目「プレリュード」

●3代目プレリュード(1987年4月~)
ワイド&ローのボディに流行のリトラクタブルヘッドライトを装備したお洒落感抜群のFFクーペ。スペック的にはシルビアより劣るが、若い女性からは人気が高かった。まさにバブルが生んだデートカーの代名詞的なモデルである。
・エンジン:2.0L 直4 DOHC(145ps/17.8kgm)、2.0L 直4 SOHCツインキャブ(110ps/15.5kgm)
・価格:148.5万、165.0万円、182.0万円、214.5万円(Si)

1988年5月にデビューした日産5代目「シルビア」

●シルビア(1988年5月~)
シンプルながら流麗な玄人好みの秀逸なデザインととともに、FRらしい爽快な走りが特徴。人気のデートカーだったが、一方で走り好きの若者が好んだことからややワイルドなイメージがあった。
・エンジン:1.8L 直4 DOHC(135ps/16.2kgm)、1.8L 直4 DOHCインタークーラーターボ(175ps/23.0kgm)
・価格(5速MT):166.5万円、176.5万円、214万円(ターボ)

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