日本ではあまり馴染みがありませんが、北米のホンダ車では、給油時に燃料キャップを外す必要のない「キャップレス給油口」が広く採用されている。ところが、「プレリュード」と「シビックタイプR」の2車種だけは例外です。給油口を開けると、そこには昔ながらのガスキャップが備わる。

なぜ、この2台だけが従来型を採用しているのだろうか。調べてみると、そこにはホンダの意外な開発戦略と、両車が想像以上に多くのメカニズムを共有するという興味深い事実が隠されていた。

ホンダ プレリュード とシビックタイプR

ホンダによると、理由のひとつがシャシーの共通化です。新型プレリュードは、シビックタイプRの主要なハードウェアやエンジニアリングを活用して開発されたモデルで、一部のグローバル市場で必要となる燃料キャップの規格に対応するため、共通の給油システムが採用されているという。

背景には、この2車種がいずれも少量生産モデルであることも関係している。量販車であれば、販売地域ごとに細かな仕様変更を行うことも可能ですが、生産台数が限られるモデルでは、できるだけ仕様を共通化した方が生産効率やコストの面で有利になる。その結果、プレリュードとシビックタイプRには、あえて従来型の燃料キャップが採用されたというわけだ。

もっとも、両車の共通点は給油口だけではない。これまでも、プレリュードがシビックタイプR由来のフロントサスペンションを採用していることは知られていた。しかし、さらに詳しく見ていくと、前後のトレッド幅も両車で共通していることが分かっている。

シビックタイプR

ホンダによれば、両車は基本となるプラットフォームアーキテクチャやサスペンション設計、主要なハードウェアシステムを共有しているという。
リヤまわりも同様だ。プレリュードにはタイプR由来のマルチリンク式リヤサスペンションが採用されており、リジッドマウント式サブフレームやコントロールアームの構成、ハブキャリアなどの主要部品も共通だ。

もちろん、そのまま流用したわけではなく、スプリングレートやスタビライザー、ブッシュ類などは、ハイブリッドクーペであるプレリュードに合わせて専用チューニングが施されている。

さらに、両車はアダプティブダンパーシステムやデュアルピニオン式電動パワーステアリング、ブレンボ製ブレーキなども共有している。

ホンダ プレリュード

もっとも、両車に求められる役割は大きく異なる。シビック タイプRがサーキット走行まで視野に入れたピュアスポーツであるのに対し、プレリュードは日常域での扱いやすさと上質な走りを重視した電動スポーツクーペだ。

そのため、各コンポーネントのセッティングは大きく異なるものの、ホンダによれば、プレリュードのステアリングギア比はタイプRよりも約3%クイックな設定になっているという。数値だけを見ても、単なる快適志向のクーペではないことがうかがえる。

ホンダ プレリュード とシビックタイプR

一見すると、接点が少ないようにも見えるプレリュードとシビックタイプR。しかし、その中身を掘り下げていくと、両車は想像以上に多くの技術や部品を共有していたのだ。あの小さなガスキャップは、実はホンダのスポーツモデル同士を結ぶ「意外な共通の証し」とうわけだ。