マイナーだからこそ愛おしい
“リトラのシルビア”を探し行き着いたS12!
シルビアと聞けば、多くの人が真っ先に思い浮かべるのはS13だろう。しかし、今回紹介するのは、その1世代前にあたるS12だ。
80年代はスペシャリティスポーツカーが人気を集めた時代。S12もリトラクタブルヘッドライトを備えたスポーティなスタイルに加え、190psを発揮するFJ20ET搭載のターボRS-Xや、135ps仕様のCA18ETを積むターボR-Xをラインアップ。世界初のワイパー付きヘッドランプやパワーウーハー、日本初のキーレスエントリーシステムなど、当時としては先進的な装備も惜しみなく投入された。

今回の取材車両は、後期型のツインカムターボRS-X。1986年のマイナーチェンジでFJ20に代わって145ps仕様のCA18DETが搭載され、グレード名もRS-Xへ受け継がれたモデルである。

そんなS12を愛車に選んだのは、なんと19歳の女性オーナー・きさらさん。S12とは親子ほど年齢が離れているが、その愛情は誰にも負けない。
「免許を取ったらシルビアに乗ろうと思っていました。でも、スポーツカーならリトラクタブルヘッドライトが絶対にカッコいい。最初はワンビアを探していたんですが、『シルビア』『リトラ』で検索していたらS12を見つけて、一目惚れしました」。

しかし、いざ探し始めると中古車はほとんど見つからず、見つかってもプレミア価格の個体ばかり。SNSでようやく予算内の1台を発見し、免許取得と同時に名古屋から福岡まで引き取りへ向かったという。

だが、念願の愛車は決してコンディションが良いとは言えなかった。エンジンはなんとか走れる状態で、ボディは腐食によって穴が開くほど傷んでいたのである。

転機となったのは、購入後に参加したイベントだった。そこで知り合った板金ショップへボディリペアとオールペンを依頼したところ、偶然その場にS12に精通したユーザーが来店。ボディだけでなく、点火系トラブルを抱えていたCA18DETまで復調へ導いてくれた。
現在もオイル滲みなど年式相応の不安は残るため、工具や補充用オイルを積み込んでドライブを楽しみつつ、将来的なオーバーホールも視野に入れている。

ルックスとサウンドの両方を楽しむためにワンオフ製作したマフラーは、縦デュアルのテールエンドでリヤビューにオリジナリティをプラス。手動式の可変バルブも備えた快適なストリート仕様だ。

完成したエクステリアは、DR30をイメージしたシルバー×ガンメタのツートンカラー。お気に入りだという薄くシャープなボディラインをより際立たせるため、派手なエアロは装着せず、純正フォルムを活かしたスタイルを追求した。

さらに、クリアレンズ化したコーナーマーカーやフロントマーカー、スモークテール、プレスラインを強調するヒロ製デコラインなど、細かなアレンジによって80年代らしい雰囲気を現代的にブラッシュアップしている。

足元には、アオシマのプラモデルで見て一目惚れしたヒロV2ホイールをセット。半年かけて探し出した希少品をラメ入りグリーンブラックへリペイントし、本来は5穴用だったホイールを変換スペーサーを介して履きこなすなど、その苦労を惜しまない姿勢からもS12への深い愛情が伝わってくる。



インテリアは、水中花シフトノブやネオンサイン、DIY施工によるブルーのチンチラなど、街道レーサーテイストを程よく取り入れた80年代スタイル。高校卒業祝いにもらったミニカーを飾り、スピーカー脇にはウインカーと連動して光るバルタン星人を配置するなど、遊び心も満点だ。
「最初はターボでもエンジンが2種類あることすら知りませんでした。でも、乗れば乗るほどS12の魅力にハマっていって、今ではパーツ探しも楽しみのひとつになっています。当初は走りも楽しもうと思っていましたが、コンディションを考えると全開走行は厳しいので、ドリフト用にS15も増車しました(笑)」。

デッドストック部品を探し回り、ときにはワンオフ製作も取り入れながら、自分だけのS12を育てていく19歳のオーナー。オーナー歴はまだ2年弱ながら、その知識と愛情はベテラン顔負け。唯一無二のシルビアライフを、心から楽しんでいた。
