
埼玉県在住のメンバーを主に構成している旧車クラブ「日本旧軽車会」では、埼玉県内だけでも年間10回前後の旧車イベントを開催している。筆者も何度も取材させていただいているが、日本旧軽車会主催のイベントであまり目にすることのないクルマと接することができたのが今回のイベント。埼玉県秩父市荒川上田町にある「ちちぶ花見の里」では、蕎麦の花が咲くこの時期にイベントを開催している。このイベントに旧車展示が行われた。

秩父市に隣接する場所に住んているため気負わずに訪れてみたが、近いと思いながらも到着までに1時間以上かかってしまった。それほど秩父市は周囲の市町村から離れており、高速道路もないためアクセスに時間がかかる。地理的な理由もあってだろう、秩父地方に在住の旧車オーナーが同じ埼玉県内で開催されるイベントへ参加されることは少ないようだ。

イベント名は「花見の里で感謝の集いやります!」というもので、一見しただけでは旧車が展示されるとは気付きにくい。なおかつ会場の都合からか、参加台数は30〜40台ほどど控えめ。当初は取材になればいいかな、くらいに考えて訪れたのだが、地理的な理由から日頃のイベントでお目にかかることのできないクルマたちに会うことができた。

前回の記事で紹介したランサーセレステもそうだが、今回のギャランGTOも初見のクルマだった。オーナーは68歳になる髙橋寿(ひさし)さんで、地元のトヨタディーラーにお勤めの方。古くからの旧車マニアで長らくトヨタスポーツ800とパブリカ800を所有してきた。さらに旧ミニ・クーパーまでお持ちだそうで、根っからのマニアと呼べそうだ。

地元では旧車好きとして知られる髙橋さんだから、友人知人から相談されることも多いのだろう。今回紹介するギャランGTOは新車登録時から秩父地方で維持されてきた個体。だがオーナーが高齢になりそろそろ手放すことを考えた時、自然と旧車好きな髙橋さんに乗ってもらいたいと考えられた。もちろん、こんな良縁を断るわけにもいかない。同じ地元であることから貴重な「埼55」ナンバーを引き継ぎつつ、GTOを譲り受けたのだ。

実は髙橋さんが中学1年生の頃、初めて実家に新車として迎えたのがギャランGTOだったというのも何かの縁だったのだろう。とても印象に残っていたクルマに、改めて乗ることができる幸せを感じられた。国産スペシャルティカーの元祖でもあるGTOはアメリカ市場を強く意識したスタイリングが特徴でもある。国産2ドアクーペとして初めてダックテールを採用したリヤスタイルは後にセリカLBが発売される契機でもあり、髙橋さんにとっても印象的だったそうで忘れ難い名車なのだった。

現在のオドメーターは4万キロ台を指しているため、最低でも14万キロ以上は走っているようだ。ところが最初のオーナーによるメンテナンスが良かったのだろう、ほとんどトラブルもなく過ごされているという。唯一のトラブルは高速道路を走行中にオルタネーターが故障してしまったこと。JAFを呼んで運んでもらったそうだが、この程度のトラブルであれば髙橋さん自ら対処できる。

貴重な新車時の塗装が残るGTO、しかも髙橋さんで2オーナー目ということで極力ノーマルを保つようにされている。おそらく新車時に装備されたであろう8トラック式カセットステレオや、センターキャップが印象的なスチールホイールなどもそのまま維持している。ただし、手を加えた点もある。それがシートで長い年月とともに破れが目立っていた。

そこで地元の業者に頼んで前後ともシートを総張り替えすることにされた。痛んでいるのが運転席だけの場合でも、そこだけ張り替えると室内全体でチグハグなイメージを与えることになる。そこで痛んでいない助手席やリヤシートなども一緒に張り替えることにされた。新車時のシート色はボディカラーに合わせて何パターンかあったのだが、純正と同じ生地が入手できるわけもなく色柄は髙橋さんの好みに合わせている。

リヤウインドー内に純正オプションだったルーバーが残りGTOらしさが感じられるが、その手前のボードには新たにスピーカーが設置されていた。おそらく新車時のものは左右両端にある四角いケースのもので、その内側にあるものは追加されたスピーカー。今でも音楽を楽しめるくらい快適な室内であることを表すものだ。DOHCエンジンのMRではなくSOHCのMⅡであることも音楽を楽しめる理由の一つかもしれない。