
2026年5月24日に静岡県富士市で開催された「富士山オールドカーフェスタ2026」の会場では同じ車種同士が整列するように360cc時代の軽自動車が展示されていた。多かったのはダイハツ・ミゼットだったが、当時最もパワフルだったスズキ・フロンテクーペも2台が並んでいた。360ccの排気量から37psもの最高出力を発生する2ストローク3気筒エンジンは、パワーだけでなく音も楽しめることで人気を集めた。

パワフルなエンジンはリヤに搭載されるRR方式を採用していたため、長めのホイールベースによりスポーティなハンドリングと安定性を得ていた。まさに軽自動車の本格スポーツカーといえる存在で、今もファンが多い。実際セダンは非常にレアな存在になってしまったが、クーペはイベント会場でよく見かける車種。今回のように2台並んでいることも珍しくないが、今回はロイヤルスカイブルーが美しい個体を紹介したい。

ロイヤルスカイブルーのクーペオーナーは59歳になる松井伸彦さん。写真でもお分かりのように松井さんは背が高く身長186センチもある。それなのに小さなクーペで窮屈ではないのだろうか。と思えば「意外なほど居住性が良いんです」と快適なドライブができるそうだ。

松井さんがこのクーぺを手に入れたのは2006年のこと。今から20年ほど前のことだが、実はそのさらに20年前にもクーペを所有していたことがあるそうだ。幼少の頃からの憧れだったそうで、最初に手に入れたのはフロンテクーペではなく後継モデルのセルボだった。セルボからの乗り換えで最初のフロンテクーペを手に入れたのが40年前の19歳の時。だがその後手放すことになってしまった。

クーペを手放して手に入れたのは新車で購入したカプチーノだったという、筋金入りのスズキマニアでもある松井さん。そのカプチーノは今も所有しているそうで、さらにはSJ30ジムニーまで所有されている。ただ、若い頃に乗っていた幼少期からの憧れの存在だから、フロンテクーペは忘れ得ぬクルマだったのだろう。またいつか乗りたいと思い続け、2台目のクーペを手に入れたのが20年前のことなのだ。今のように旧車の価格が高騰する前で、ネットオークションで見つけて落札した。

今でも人気のフロンテクーペだが、やはり補修部品を探すのに苦労されているそう。またトラブルも経験されている。フロンテクーペはフロントにラジエターが配置され、長い配管を伝ってエンジンを冷やしている。その途中で配管が破れてしまったことがあるそうだ。

トラブルと同時にモディファイも楽しまれている。一見ノーマルに見えるのだが、電装系に永井電子製のフルトランジスターイグナイターを装着して強化してある。また燃料ポンプをホンダの発動機用に変更したり、ウエザーストリップなどのゴム製品はマツダ・ボンゴのものを流用するなど、良い程度を維持するために苦労されている。

だが苦労の甲斐あって今もフロンテクーペは好調。この日はお住まいの山梨県から駆けつけたそうで、程度に自信がなければできないこと。しかもサブロクと呼ばれる古い軽自動車なのだから、長距離を走るには覚悟が必要だろう。とはいえ「360ccとは思えないほど走行性能が良い」そうで、松井さん自身はあまり気負って参加されているわけでもなさそうだ。

このクーペは4人乗りのGXFというところもポイント。そう思って室内を覗けば当時の8トラック式カセットステレオが装備され、リヤシートの両脇に純正オプションだったスピーカーまで残っている。とても大切に維持されてきた個体であることがわかる状態で、さらに松井さんの管理の良さも際立っている。補修部品が少ないフロンテクーペだから、最新の技術も駆使されている。3Dプリンターを使って樹脂部品を自作しているそうで、これからも末長く乗り続けられることだろう。

