1987年式いすゞジェミニZZハンドリングbyロータス。

子育てが一段落したり仕事の定年が近づいてくると、若かった頃に憧れたクルマや以前の愛車にもう一度乗りたいと思う人は多い。単なるノスタルジーではなく、やり残したことがあるような気になるのが理由だろう。現在60代の人であれば、その対象がネオクラシックカーである1980年代から2000年前後のクルマであることが多い。2026年4月5日に埼玉県毛呂山町で開催された「第1回ゆずの里 毛呂山町 昭和平成名車展示会」に並んだクルマたちの中にも、そのような人とクルマが結構な割合で多かったように見受けられた。

購入時にマフラーは新品部品へ交換されていた。

今回紹介するいすゞジェミニのオーナーである池原聡さんもそんな一人。現在60歳である池原さんが30年ほどに乗っていたのが2代目ジェミニのハンドリングbyロータスだった。当時は仕事の関係で広島県に住んでいた。地元マツダではなくいすゞジェミニを選んだのは、やはりスポーティなハンドリングとジウジアーロによるデザイン。2代目ジェミニは4ドアセダンと3ドアハッチバックが用意され、1.5リッターのガソリンとディーゼルエンジンが選べた。86年には1.5ターボのイルムシャーが追加され、87年にマイナーチェンジを受けて後期型へ移行。さらに88年には1.6リッターDOHCエンジンと、名門ロータスが足回りを監修したハンドリングbyロータスが追加された。

純正のBBSアルミホイールを履いている。

年々スポーティさをプラスしていったジェミニだが、その優れたハンドリングは前期型から定評あるもの。池原さんも存分にそのハンドリングを楽しまれたが、数年して普通のクルマへ乗り換えることになる。また仕事の関係で東京へ転勤になってしまう。都内ではクルマ通勤でなく電車通勤になり、所有するなら趣味のクルマがいいと考えるようになった。であるなら、以前の愛車であるジェミニにもう一度乗ってみようと結論付けるまで、それほど時間はかからなかった。

ロータス創始者のアルファベットACBCが入るエンブレム。

それが2020年のこと。今から6年ほど前だが当時すでにジェミニの売り物は少なく、見つかったのはいすゞ専門店の在庫車だった。見にいってみるとすこぶる程度が良い。前オーナーがガラスを外して全塗装してあったボディはツヤツヤで、サスペンションやマフラーも純正新品に交換されていた。しかも走行距離は8万キロ台と伸びてなく、これだけの状態にあるジェミニはそうそう見つかるものではない。ほぼ即決だったそうだ。

エンジンは1.6リッター4気筒DOHCの4XE1型。

ジェミニは2台目になる池原さんだから、装備や仕様についてはすこぶる詳しい。ロータスなら本来車名デカールがゴールドだが現車は全塗装されているため色の違う個所があったり、新車時のマフラーはタイコ部分が黒かったはずなど、現車との相違を気にされている。いずれもすでに入手困難であり、これから仕様を変更するのは事実上不可能だろう。とはいえ、これだけ程度の良い個体なので購入時のまま楽しんでいる。

ステアリングをMOMOヴェローチェに変更しただけのインテリア。

とはいえ、購入時から変更した部分もある。それがステアリングホイールでロータス純正もMOMOだったものの、経年による劣化は避けられず表皮が傷んできていた。そこで純正MOMOは外して保管することにして、日頃は同じMOMOのヴェローチェを使うことにされた。また本革巻きの純正シフトノブだが、使用を続けるうちに表皮が破れてしまった。そこですべて剥がしてみると、なんと内部はイルムシャー用だということが判明する。

購入時に8万キロ台だった走行距離は、もうすぐ10万キロに達する。

そもそも趣味のクルマとして入手したジェミニなので、日頃から乗ることはない。もっぱら晴れた休日に楽しむ程度なので、購入から6年が経ったものの走った距離は1万キロほど。今回のようにイベントへ参加したりすることも多いそうで、それも楽しみの一つなのだ。若い頃に乗っていたのと同じハンドリングbyロータスなので、やはりお気に入りはサスペンションセッティング。もちろんDOHCエンジンらしい吹け上がりも好きで、タコメーターを見れば1万rpmスケールであることに驚かされる。

アルパインのオーディオは純正オプションだった。

実際にそこまで回ることはないものの、高回転でのレスポンスはやはり楽しい。ジェミニはこのJT150に継いで1990年に3代目へ進化するものの、評論家に足回りを酷評されたことで販売台数がJT150ほど伸びなかった。そのためか4代目以降はホンダからOEM供給を受ける形で車名を継続させたものの、いすゞ生産ではなくなってしまう。さらにいすゞ自動車が2002年に乗用車市場から撤退してしまったため、残存数は減る一方。このような状態のジェミニが1台でも多く残ってくれることを祈るばかりだ。

ハンドリング・バイ・ロータスには標準でレカロシートがフロントに装備された。