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自衛隊新戦力図鑑

迎撃が難しい、特殊な飛翔方式

25式高速滑空弾は「射程数百km」、「超音速」などの能力が報道され、なんとなく「長射程で速く飛ぶミサイル」くらいには理解されていると思う。

さて、長射程ミサイルは、飛び方の違いで「弾道ミサイル」と「巡航ミサイル」に分けられる。それぞれ以下の通りだ。

●弾道ミサイル:宇宙ロケットのように宇宙空間に向けてブースターで打ち上げ、その後は地球の重力によって目標に向けて“落ちてくる”。落下速度はマッハ5~20以上。

●巡航ミサイル:飛行機のようにエンジンがあり、水平飛行して目標に向かう。飛行速度は基本的に亜音速。

弾道ミサイルと巡航ミサイルの軌道。弾道ミサイルの飛翔は3段階に分かれている。ブースターで宇宙に向けて加速される「ブースト段階」、宇宙空間を飛翔する「ミッドコース段階」を経て、大気圏に再突入し目標に向けて落下する「終末段階」だ。ブースターの燃焼が終了した後は、慣性によって飛んでいくので、大きな軌道変更はできない(AIによる作図)

弾道ミサイルは、北朝鮮関連の報道で聞いたことがある人も多いだろう。極超音速(マッハ5以上)で落下してくるミサイルの迎撃は難しく、日本は専用の迎撃ミサイルを複数導入した。

25式高速滑空弾は「弾道ミサイルの亜種」といえる。ブースター切り離し後、本体である「滑空体」が大気圏上層を「石の水切り」のように滑空飛翔したのち、目標上空で急降下する。このタイプのミサイルは「極超音速滑空体(HGV)」と呼ばれる。

極超音速滑空体(HGV)は、ブースターで打ち上げる点は弾道ミサイルと一緒だが、ブースターを分離した後、大気圏上層を滑空飛翔する(AIによる作図)

弾道ミサイルは、地球の重力に引っ張られて“高く上がってから落ちてくる”だけの単純な放物線軌道を描く。このため既存の迎撃ミサイルは、軌道を予測して迎撃を実行してきた。対してHGVは大気圏上層をマッハ5~10で滑空しつつ積極的に機動するため、こうした予測に基づく迎撃が困難になっている。

弾道ミサイル(青線)とHGV(黄色線)の軌道の違い。打ち上げ後は慣性により単純かつ平面的な軌道で目標に向けて落下してくる弾道ミサイルと違い、HGVは滑空飛翔により複雑な軌道を描くことができる(アメリカ会計監査院作図)

またHGVは、高く打ちあがる弾道ミサイルよりも飛翔高度が低いため、地上のレーダーからは地球の湾曲の裏側に隠れてしまい、早期探知が難しい。さらに、その飛翔高度(高度80~40km)は、従来の大気圏外用迎撃ミサイル(ミッドコース段階での迎撃用)の想定高度より低いため、有効に機能できないという厄介なシロモノなのだ。

25式高速滑空弾の発射試験。先端のやや細く、翼のある部分が「滑空体」であり、その下の太い円筒はブースターだと思われる(写真/防衛装備庁)

歴史的な転換点となった25式の導入

そもそも、日本はこれまで「専守防衛」の観点から射程数百kmという長射程ミサイルを保有していなかった。その点で25式高速滑空弾の導入は、とても大きな意味がある。

総火演で公開された25式高速滑空弾。発射車両のほか、指揮統制車両や弾薬運搬車両などで部隊を構成する(写真/筆者)

なぜ、長射程ミサイルが必要なのか? 東西1000km、南北1200kmに広がる南西諸島を防衛するためだ。日本に侵攻する敵に対して、反撃できない遠距離から対処することで、自衛隊員の安全を確保しつつ、効果的に侵略を阻止できると防衛省・自衛隊は考えている。

現在、日本では複数の長射程ミサイル、「スタンドオフ・ミサイル」の開発が進められており、25式高速滑空弾も射程をさらに延長した発展型を開発中だ。「ブロック2A」型が2027~2028年度、「ブロック2B」型が2030年度の開発完了を目指す。

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