PHEVのバッテリーパックを新開発。容量30%増でEV航続距離151kmを実現

【新型トヨタRAV4 GR SPORT】攻めずとも、その違いがわかる! パーキングスピードですら実感できる一体感

新型RAV4に初めて設定された「GR SPORT」に試乗した。あいにくの雨、しかも高速は大渋滞で、大きなGをかけるような走りはできていない。それでも、乗り比べてみるとベース車との違いは明確。RAV4 GR SPORTがスポーティなのは、決して見た目だけではないことがはっきりとわかった。

新型トヨタRAV4は先代まで設定のあったガソリン車をなくし、ハイブリッド車(HEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)のラインアップになった。エンジンとモーターのふたつの動力源を持つ点はHEVとPHEVで共通しているが、PHEVはより電気自動車(EV)に近い使われ方を想定している。HEVは外部からの充電に対応していないが、PHEVは外部から充電ができる。普段はEVとして使用し、バッテリーに蓄えた電気エネルギーを使い切ったらガソリンエンジンを使って走るHEVとして使用するのが基本だ。

新型RAV4のPHEVにはトヨタ車で初となる「第6世代シリーズパラレルハイブリッドシステム」が搭載される。

新型RAV4のHEVはいわゆる第5世代のハイブリッドシステムを搭載しているが、PHEVは最新の第6世代ハイブリッドシステムを搭載する。なぜ同一モデルなのに異なるシステムを搭載するのか。開発者のひとりは「(PHEVは)エンジンを使うハイブリッドの性能も求められるし、EVの性能も求められるので裾野が広い技術が必要。そのため、トヨタで最も進んだ電動化技術が必要だと考え、第6世代ハイブリッドシステムを搭載することにした」と説明する。

1997年登場のプリウスから始まったトヨタのハイブリッドシステム。2003年の2代目プリウスで2世代目、09年の3代目プリウスで3世代目、15年の4代目プリウスで4世代目、22年の現行型ノア/ヴォクシーで5世代目と進化を続けてきた。

先代RAV4の満充電からのEV走行距離は95kmだった。これは国内仕様の数値で、試験モードに負荷の高い領域を含む米国では67km、EUでは75kmだった。日本のユーザーは一日あたりの走行距離が短く、走行負荷も低いのでEV走行距離が95kmでも充分に日常使いに応えることはできたが、米国や欧州ではEV走行距離の延長が必要だと考えられた。

そこで新型RAV4 PHEVは新開発のバッテリーパックを採用することにより、容量を30%増加した(17.4kWh→22.68kWh)。電動コンポーネントの高効率化などと合わせて国内仕様のEV航続距離を151kmまで伸ばした。通勤で一日30km走るような使い方なら、途中で充電せずに月曜日から金曜日までEV走行でこなせる計算が成り立つ。米国/欧州仕様のEV走行距離も相応に伸びており、プラクティカル(実用的)な環境車としての価値を高めている。新型RAV4ではPHEVの価値をさらに高めるために、充給電性能や動力性能、静粛性の向上に取り組んだ。

欧州・北米では走行負荷が高く、PHEVを環境貢献技術として受け入れてもらうにはEV距離の延長が不可欠。一方、日本でも先代の95kmからさらに伸ばすことで、週1回の充電で月曜日〜金曜日の通勤をEVでカバーできる実用的な電動車として訴求できると判断。EV走行距離延長を開発方針とした。

電動パワートレーンを構成するコンポーネントのレイアウトは大幅に見直している。先代RAV4 PHEVでリヤシートの下にあったDC-DCコンバーターはPCU(パワーコントロールユニット)と一体化してエンジンコンパートメントに搭載。同じくリヤシート下にあったAC充電器もエンコパに移動することでHEVと同じ車室内空間を実現した。先代で対応していなかったDC(急速)充電に対応したのも新型の大きな特徴のひとつである。

第6世代PHEVシステムでは、主要コンポーネントの統合・小型化・高効率化が大きく進んだ。先代でリヤシート下にあったDC-DCコンバーターをPCUと一体化してeアクスル化し、空いたスペースにAC充電器を移設。ハイブリッドと同じ車室内空間を確保した。

第6世代ハイブリッドシステムでは、従来別体だった走行用と発電用のふたつのモーターとインバーター、トランスアクスル、PCUをひとつのユニットに統合。これにより出力を12%向上しつつ、高さを15%、重量を18%低減することができている。また、トランスアクスルのギヤは歯当たりを改善することで小型化と高効率化を実現。同じくベアリングの数を4つから3つに減らすことで、やはり小型化と高効率化を図っている。

eアクスルにはトランスアクスル、モーター、PCU、DC-DCコンバーターを一体統合。出力を12%向上させながら、高さ15%・重量18%の削減を実現した。ギアは歯当たり分布の均等化で小型化し、ベアリングも4つから3つに削減することで、さらなる軽量化と効率向上を果たしている。

走行用モーターはステーター内の銅線密度の向上と磁石配置の見直しにより、サイズを変えることなく出力を向上させた。先代の最高出力は134kWだったが、新型は151kWとなっている。モーターおよびトランスアクスルの冷却回路はシンプル化し、トヨタのハイブリッドシステムとしては初めて、ローターの直接油冷を採用することでモーターの出力向上に貢献した。

モーターはステーター内の銅線密度を構造変更により向上させ、磁石の見直しなど電磁気回路を再設計することで、出力密度を高めている。その結果、サイズを変えることなく151kWの高出力化を実現した。
eアクスルに内蔵された電動オイルポンプ。複雑な潤滑・冷却回路をシンプル化しながら油量を最適制御し、ローターへの直接油冷によるモーター出力向上にも貢献している。

PCUはトヨタのハイブリッドシステムとしては初めてパワー半導体にシリコンカーバイド(SiC)を採用(燃料電池車のミライで採用済み)。これにより、PCUの電気損失を約70%低減。従来は2つのマイコンでモーターを制御していたが、新型は1つのマイコンで制御する設計とし大幅な小型化を実現している。

パワー半導体にはトヨタのハイブリッドとして初めてシリコンカーバイド(SiC)を採用。電気損失を約70%低減している。
従来は2つのマイコンで制御していたモーターは、1つのマイコンで制御可能とし、大幅な小型化を実現した。

正極材にニッケル、マンガン、コバルトを用いる、いわゆる三元系のリチウムイオンバッテリーは、セルの中身も含めて新開発だ。先代RAV4 PHEVが搭載していたバッテリーセルは出力型だったが、新型は容量型(つまりBEV寄りの特性)を採用。セルのエネルギー密度が高くなったこととセル数の増加(96→104)により約30%の容量増を実現している。

PHEVのバッテリーパックには新開発セルを採用し、セル数を96から104に増やすことで容量を約30%向上。EV距離の延長に直結している。

従来はセルを前後方向に並べていたが、新型では左右方向に並べるレイアウトに変更。この構造を採用することでEA材(衝撃吸収材)を効果的に使うことができ、衝突安全性を担保しつつバッテリーパックの拡大に結びつけた。また、バッテリーパックの剛性を1.5倍に高めて構造部材として使うことで、車両運動性能の向上に寄与している。

写真左上が先代、写真左下が新型。セルの配列を前後方向から左右方向に変更し、衝撃吸収材を効率的に配置することで衝突安全性を担保しながらパックを拡大。この構造変更は車両横方向の剛性を1.5倍高めることにもなり、走行性能の向上に貢献している。

熱マネジメントも大きく変更した。先代はエアコンの冷媒でバッテリーを冷やしていたが、新型はEVと同じ方式で、水回路を設けて冷却と昇温を行なう。冷却の場合は冷却水をエアコンの冷媒と熱交換して冷やし、昇温時は電気ヒーターで冷却水を温める。この熱マネジメント系は車室の空調と共用。先代のPHEVはヒートポンプ式のエアコンを採用していたが、電池の昇温とセットで考えるとヒートポンプ単独では能力的に厳しく電気ヒーターが必要。ヒートポンプと電気ヒーターを両方搭載するとコストが跳ね上がってしまうため、新型ではヒートポンプをやめ電気ヒーター1本に絞った。

新型RAV4 PHEVは新しい熱マネジメントシステムを採用したことにより、低温や高負荷走行時においてもEV走行をしっかり維持できるようになったという。

バッテリーのサーマルマネジメントも刷新。従来のエアコン冷媒による冷却から、水回路を介した冷却・昇温方式へ変更した。冷却はエアコン冷媒との熱交換、昇温は電気ヒーターとエンジン冷却水で行い、いずれの性能も従来比で向上している。
PCU内部のコンポーネント間を、外部の配線ケーブルではなくユニット内部のバスバーで直接つないだ構造とすることで、銅の使用量低減にもつなげている。

AC充電の最大出力は7kW(従来は3.5kW)。6kWのAC充電器で充電した場合は4時間半で満充電になる。また、DC充電は約28分でSOCを10%から80%まで回復させることができる。EV給電モードを使用すると、満充電状態から消費電力400Wで供給した場合、約1日供給できる。エンジンで発電した電力も使うHV給電モードでは、ガソリン満タン状態から消費電力400Wで供給した場合に最大約7日もつ計算となる。

AC充電器は7kWを標準搭載。従来の空冷から水冷化したことでエンコパへの搭載が可能になった。自宅での6kW充電なら4時間半で満充電になる。DC急速充電も新たに追加され、10%から80%まで約28分で回復できる。
急速充電口はフロントフェンダー左側に配置。リッドとカバーが一体となっているのも使い勝手に優れている。
普通充電口はフロントフェンダー右側に配置。

第6世代ハイブリッドシステムでは、エンジンの構造にも手を入れた。NV(振動騒音)対策のためである。従来はエンジン車と共用する都合からブロックにCVTを取り付けるための作業穴を設けた形状だった。新型ではPHEV専用としたためeアクスルと締結する部分の穴をなくし、丸みを帯びた形状とした。これによりエンジンの剛性がアップし、NVの低減に寄与している。

エンジンブロックを丸みを帯びた新構造に刷新して剛性を向上。さまた豊富なバッテリーパワーを活かして同じ加速度でもエンジン回転数を抑えることで、静粛性とリニアな加速感を両立している。
eアクスルとエンジンをスティフナーで連結することで剛性を高め、エンジン音を低減した。

新型RAV4 PHEVは豊かなバッテリーパワーを生かすことにより、同じ加速度でもHEVや先代のPHEVに対してエンジンの回転数を落とすことが可能。そのため、より静かで、よりリニアな加速が実現するという。システム最高出力は先代の225kWから242kWに向上し、0-100km/hの加速タイムは6.0秒から5.7秒に短縮。上質感を高めると同時に、走りの爽快感を際立たせているのが特徴だ。

さて、実際の走りはどうなのか。走行モードは「EV MODE」「AUTO EV/HV」「HV MODE」の3種類が用意されている。バッテリー残量が充分ある限り、というか、充電に関して無頓着でない限り、バッテリー容量が増えた新型の場合はほとんどのケースでバッテリー残量は充分に残っている状態だろう。となると、AUTO EV/HVモードを選んでいても、あるいはHVモードでも基本的にはEV走行となる。

新型RAV4 PHEVの走行モードは「EV MODE」「AUTO EV/HV」「HV MODE」の3種類。

新型RAV4 PHEVを運転してわかったが、まるっきりEVに乗っている感覚だ。バッテリー残量が充分ある限り、エンジンの出番はほとんどない。それでも動力性能的には充分であり、ストレスは一切感じない。アクセルペダルの踏み込みに対する、リニアで応答性の高い反応と、静粛性が高く、振動と無縁な乗り味がEV感覚にさせるのだろう。新型RAV4 PHEVは外部充電ができるハイブリッド車というより、シーンによってエンジンが助け船を出してくれる電気自動車の感覚だ。

試乗の途中、バッテリーの充電量を確かめてみたところ、残量90%でEV走行可能距離は123kmだった。計算上は135kmほどEV走行できることとなる(カタログ値は151km)。

エンジンが始動したときの様子を確かめたかったのでHVモードに切り換えて走ってみたが、市街地や高速道路を周囲のペースに合わせて走っている限り、そしてバッテリー残量が充分に残っている限り、やはりエンジンの出番はない。アクセルを強く踏んだ際に動力アシストのためにエンジンは始動するが、走行音にまぎれるのでエンジンの存在感はとことん希薄。意識していなければ聞き逃しそうだ。高回転で回ってもエンジン音は耳障りな音質ではないし、振動面での変化も感じられない。

日常使いならば、ほとんどをEV走行で賄うことができる。走りの上質さ、環境性能の高さは先代から飛躍的に向上した。

HVモードでそこそこ走ったところでEV走行比率を確かめてみると数パーセントはエンジンが始動していたことを示していた。そんなにエンジンかかっていないでしょ、と思ったが、HVモードを選択した際に触媒暖機のためエンジンが始動してしばらく動いていた時間がEV走行比率を侵食していたようだ。急勾配の山道でも走らない限り、エンジンの力を借りるシーンはほとんどないと考えていい。

試乗ではエンジンがかかった際の状況を確かめたくてモードを切り替えながら走った。たっぷりしたバッテリー容量のおかげで近距離移動の日常使いならEV走行に終始するはず。新型RAV4のPHEVは、ただただ上質な、EV感たっぷりのSUVという印象である。