PHEVのバッテリーパックを新開発。容量30%増でEV航続距離151kmを実現
新型トヨタRAV4は先代まで設定のあったガソリン車をなくし、ハイブリッド車(HEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)のラインアップになった。エンジンとモーターのふたつの動力源を持つ点はHEVとPHEVで共通しているが、PHEVはより電気自動車(EV)に近い使われ方を想定している。HEVは外部からの充電に対応していないが、PHEVは外部から充電ができる。普段はEVとして使用し、バッテリーに蓄えた電気エネルギーを使い切ったらガソリンエンジンを使って走るHEVとして使用するのが基本だ。

新型RAV4のHEVはいわゆる第5世代のハイブリッドシステムを搭載しているが、PHEVは最新の第6世代ハイブリッドシステムを搭載する。なぜ同一モデルなのに異なるシステムを搭載するのか。開発者のひとりは「(PHEVは)エンジンを使うハイブリッドの性能も求められるし、EVの性能も求められるので裾野が広い技術が必要。そのため、トヨタで最も進んだ電動化技術が必要だと考え、第6世代ハイブリッドシステムを搭載することにした」と説明する。

先代RAV4の満充電からのEV走行距離は95kmだった。これは国内仕様の数値で、試験モードに負荷の高い領域を含む米国では67km、EUでは75kmだった。日本のユーザーは一日あたりの走行距離が短く、走行負荷も低いのでEV走行距離が95kmでも充分に日常使いに応えることはできたが、米国や欧州ではEV走行距離の延長が必要だと考えられた。
そこで新型RAV4 PHEVは新開発のバッテリーパックを採用することにより、容量を30%増加した(17.4kWh→22.68kWh)。電動コンポーネントの高効率化などと合わせて国内仕様のEV航続距離を151kmまで伸ばした。通勤で一日30km走るような使い方なら、途中で充電せずに月曜日から金曜日までEV走行でこなせる計算が成り立つ。米国/欧州仕様のEV走行距離も相応に伸びており、プラクティカル(実用的)な環境車としての価値を高めている。新型RAV4ではPHEVの価値をさらに高めるために、充給電性能や動力性能、静粛性の向上に取り組んだ。

電動パワートレーンを構成するコンポーネントのレイアウトは大幅に見直している。先代RAV4 PHEVでリヤシートの下にあったDC-DCコンバーターはPCU(パワーコントロールユニット)と一体化してエンジンコンパートメントに搭載。同じくリヤシート下にあったAC充電器もエンコパに移動することでHEVと同じ車室内空間を実現した。先代で対応していなかったDC(急速)充電に対応したのも新型の大きな特徴のひとつである。

第6世代ハイブリッドシステムでは、従来別体だった走行用と発電用のふたつのモーターとインバーター、トランスアクスル、PCUをひとつのユニットに統合。これにより出力を12%向上しつつ、高さを15%、重量を18%低減することができている。また、トランスアクスルのギヤは歯当たりを改善することで小型化と高効率化を実現。同じくベアリングの数を4つから3つに減らすことで、やはり小型化と高効率化を図っている。

走行用モーターはステーター内の銅線密度の向上と磁石配置の見直しにより、サイズを変えることなく出力を向上させた。先代の最高出力は134kWだったが、新型は151kWとなっている。モーターおよびトランスアクスルの冷却回路はシンプル化し、トヨタのハイブリッドシステムとしては初めて、ローターの直接油冷を採用することでモーターの出力向上に貢献した。


PCUはトヨタのハイブリッドシステムとしては初めてパワー半導体にシリコンカーバイド(SiC)を採用(燃料電池車のミライで採用済み)。これにより、PCUの電気損失を約70%低減。従来は2つのマイコンでモーターを制御していたが、新型は1つのマイコンで制御する設計とし大幅な小型化を実現している。


正極材にニッケル、マンガン、コバルトを用いる、いわゆる三元系のリチウムイオンバッテリーは、セルの中身も含めて新開発だ。先代RAV4 PHEVが搭載していたバッテリーセルは出力型だったが、新型は容量型(つまりBEV寄りの特性)を採用。セルのエネルギー密度が高くなったこととセル数の増加(96→104)により約30%の容量増を実現している。

従来はセルを前後方向に並べていたが、新型では左右方向に並べるレイアウトに変更。この構造を採用することでEA材(衝撃吸収材)を効果的に使うことができ、衝突安全性を担保しつつバッテリーパックの拡大に結びつけた。また、バッテリーパックの剛性を1.5倍に高めて構造部材として使うことで、車両運動性能の向上に寄与している。

熱マネジメントも大きく変更した。先代はエアコンの冷媒でバッテリーを冷やしていたが、新型はEVと同じ方式で、水回路を設けて冷却と昇温を行なう。冷却の場合は冷却水をエアコンの冷媒と熱交換して冷やし、昇温時は電気ヒーターで冷却水を温める。この熱マネジメント系は車室の空調と共用。先代のPHEVはヒートポンプ式のエアコンを採用していたが、電池の昇温とセットで考えるとヒートポンプ単独では能力的に厳しく電気ヒーターが必要。ヒートポンプと電気ヒーターを両方搭載するとコストが跳ね上がってしまうため、新型ではヒートポンプをやめ電気ヒーター1本に絞った。
新型RAV4 PHEVは新しい熱マネジメントシステムを採用したことにより、低温や高負荷走行時においてもEV走行をしっかり維持できるようになったという。


AC充電の最大出力は7kW(従来は3.5kW)。6kWのAC充電器で充電した場合は4時間半で満充電になる。また、DC充電は約28分でSOCを10%から80%まで回復させることができる。EV給電モードを使用すると、満充電状態から消費電力400Wで供給した場合、約1日供給できる。エンジンで発電した電力も使うHV給電モードでは、ガソリン満タン状態から消費電力400Wで供給した場合に最大約7日もつ計算となる。

第6世代ハイブリッドシステムでは、エンジンの構造にも手を入れた。NV(振動騒音)対策のためである。従来はエンジン車と共用する都合からブロックにCVTを取り付けるための作業穴を設けた形状だった。新型ではPHEV専用としたためeアクスルと締結する部分の穴をなくし、丸みを帯びた形状とした。これによりエンジンの剛性がアップし、NVの低減に寄与している。


新型RAV4 PHEVは豊かなバッテリーパワーを生かすことにより、同じ加速度でもHEVや先代のPHEVに対してエンジンの回転数を落とすことが可能。そのため、より静かで、よりリニアな加速が実現するという。システム最高出力は先代の225kWから242kWに向上し、0-100km/hの加速タイムは6.0秒から5.7秒に短縮。上質感を高めると同時に、走りの爽快感を際立たせているのが特徴だ。
さて、実際の走りはどうなのか。走行モードは「EV MODE」「AUTO EV/HV」「HV MODE」の3種類が用意されている。バッテリー残量が充分ある限り、というか、充電に関して無頓着でない限り、バッテリー容量が増えた新型の場合はほとんどのケースでバッテリー残量は充分に残っている状態だろう。となると、AUTO EV/HVモードを選んでいても、あるいはHVモードでも基本的にはEV走行となる。

新型RAV4 PHEVを運転してわかったが、まるっきりEVに乗っている感覚だ。バッテリー残量が充分ある限り、エンジンの出番はほとんどない。それでも動力性能的には充分であり、ストレスは一切感じない。アクセルペダルの踏み込みに対する、リニアで応答性の高い反応と、静粛性が高く、振動と無縁な乗り味がEV感覚にさせるのだろう。新型RAV4 PHEVは外部充電ができるハイブリッド車というより、シーンによってエンジンが助け船を出してくれる電気自動車の感覚だ。

エンジンが始動したときの様子を確かめたかったのでHVモードに切り換えて走ってみたが、市街地や高速道路を周囲のペースに合わせて走っている限り、そしてバッテリー残量が充分に残っている限り、やはりエンジンの出番はない。アクセルを強く踏んだ際に動力アシストのためにエンジンは始動するが、走行音にまぎれるのでエンジンの存在感はとことん希薄。意識していなければ聞き逃しそうだ。高回転で回ってもエンジン音は耳障りな音質ではないし、振動面での変化も感じられない。

HVモードでそこそこ走ったところでEV走行比率を確かめてみると数パーセントはエンジンが始動していたことを示していた。そんなにエンジンかかっていないでしょ、と思ったが、HVモードを選択した際に触媒暖機のためエンジンが始動してしばらく動いていた時間がEV走行比率を侵食していたようだ。急勾配の山道でも走らない限り、エンジンの力を借りるシーンはほとんどないと考えていい。
試乗ではエンジンがかかった際の状況を確かめたくてモードを切り替えながら走った。たっぷりしたバッテリー容量のおかげで近距離移動の日常使いならEV走行に終始するはず。新型RAV4のPHEVは、ただただ上質な、EV感たっぷりのSUVという印象である。



