RAV4では国内初設定となる「GR SPORT」は、“意のまま”の走りを磨き上げた

トヨタは新型RAV4を開発するにあたり、顧客の多様なニーズに応えられるよう当初から3タイプのデザインを考えていた。洗練された印象の「Z」、冒険心をかき立てるラギッドさ(荒削りな感じ)や無骨さを際立たせた「アドベンチャー」、そして、走りの楽しさを機能とともに表現した「GR SPORT」である。今回はRAV4 GR SPORTについて話を進める。

新型RAV4はアドベンチャー、Z、GR SPORTの3グレード展開。パワートレインはアドベンチャーがHEVのみ、ZはHEV/PHEVの両方、GR SPORTはPHEVのみという構成だ。

GRの商品ラインアップには階層がある。限定生産の「GRMN」は「究極のフラッグシップモデル」の位置付けで、レース由来の技術でGRの使命を体現したフルチューニングモデルだ。

GRヤリスやGRカローラでおなじみの「GR」は「本格スポーツモデル」の位置付け。モータースポーツ活動で直接磨き上げた性能と技術が特徴である。

今回、新型RAV4に設定された「GR SPORT」は、「エントリースポーツモデル」の位置付け。GRの世界観を幅広いライフスタイルの顧客に届けるのが狙いで、操縦安定性を高めるスポーツチューンドサスペンションや機能性を備えた専用スポーティデザインを採用しているのが特徴だ。

商品ラインアップの階層ではGR SPORTの下に「GR PARTS」がある。カスタマイズのためのアフターパーツ、アクセサリー、アップグレードパーツを指し、カジュアルなドレスアップ用品からプロの競技用パーツまで幅広くカバーしている。

RAV4 GR SPORT(PHEV)
RAV4 GR SPORT(PHEV)
GR SPORTはモータースポーツで培った知見を幅広いユーザーに届ける「エントリースポーツモデル」の位置付けで、RAV4ではPHEV専用車として設定される。
GRロゴ付きステアリング、アルミペダルが走る気分を高める。GR SPORT(とZ)はシフトがコンパクトなスイッチタイプとなる。

RAV4では国内初導入となるGR SPORTはプラグインハイブリッド(PHEV)専用車とし、「コンフィデント&ナチュラル」を旨とする新型RAV4のクルマづくりのコンセプトをベースに、とくにハンドリングにかかわる性能を引き延ばし、意のままに走る楽しさ、すなわちGR SPORTの走り味を強化した。具体的には、ライントレース、旋回姿勢、ターンイン、インフォメーションの項目について重視した。開発にあたってはトヨタテクニカルセンター下山のテストコースで走り込みを行なっている。

搭載するのは2.5L直4エンジンと、トヨタ初となる第6世代シリーズパラレル方式の新PHEVシステム。シリコンカーバイド半導体の採用などで小型・高効率化を実現し、システム最高出力は242kW(329PS)に達する。
写真はトヨタテクニカルセンター下山のテストコースで走り込みを行なう際に使われた開発車両。機密保持のため偽装が施されている。

足まわりとエアロを中心に投入された「GR SPORT」専用アイテム

専用アイテムは11項目に大別できる。1点目はタイヤ。235/50R20のサイズはZ PHEVと同じだが、GR SPORTは専用のハイグリップタイヤ(ダンロップSP SPORT MAXX 060)を履く。2点目はホイールで、専用デザインを採用するとともに1本あたり2.2kgの軽量化を図った。

タイヤはダンロップSP SPORT MAXX 060を採用。サイズはZ PHEVと同じ235/50R20。
ホイールは1本あたり2.2kg軽量化した専用デザインを履く。

3点目はトレッドで、ホイールオフセットの変更で前後のトレッドをワイド化した。フロントトレッドはHEV比+20mmの1620mmである。タイヤが外側に10mm張り出す格好になるので、これをカバーするためアーチモールを12.5mmワイド化。全幅はベース車比+25mmの1880mmとなっている。

ホイールオフセットの変更で前後トレッドをワイド化。タイヤが外側に張り出すため、カバーするアーチモールも追加された。

4点目はサスペンション。コイルスプリングのレートはZ PHEV比でフロントは1.25倍、リヤは1.24倍に高められている。また、ダンパーの減衰力は専用にチューニングした。5点目は空力パーツで、リヤのロワーアームにカバーを設けることで床下の流れを改善。6点目はフロントに装着したパフォーマンスダンパーで、ボディに発生する微細な振動を減衰することにより操縦安定性・乗り心地の向上に寄与している。

フロントサスペンション:マクファーソンストラット式
リヤサスペンション:ダブルウィッシュボーン式
リヤサスペンションのロワアームにはカバーを装着。
フロントにはパフォーマンスダンパーを装着。ボディの変形を素早く収束し、車体の不安定な挙動を抑える。

7点目はリヤサスペンションメンバーの補強だ。開断面のメンバーを閉断面化することでボディ剛性の向上を図っている。8点目はEPS(電動パワーステアリング)で、専用マップを採用。より手応えのある操舵感になるようチューニングした。9点目はバンパーで前後共に専用品を採用。フロントはエクストラの開口を設けることで、低速時の冷却風量を確保しながら、高速時は通気により空気抵抗の低減を図る設計となっている。

リヤサスペンションブレースは閉断面化(写真右)。
EPSは専用チューニングを実施。
グリル内にエクストラ開口を設定。高速域では空気抵抗になることなく、低速域でしっかりと冷却風量が確保できるよう、位置と面積が吟味された。

10点目はエアロパーツだ。フロントリップスポイラー、リヤウイングスポイラーともに(前後のバランスを考えながら)ダウンフォースを発生させる狙い。ワイド化したボディとワイド感を強調したフロントグリル、それにリヤウイングスポイラーの視覚的効果は大きく、Zやアドベンチャーとは一線を画したスポーティな佇まいである。

ルーフにはウイングタイプのスポイラーを設置。

11点目は除電機能付き運転席シート。簡潔に効果を表現すれば、帯電によってタイヤまわりに空気が付いたり離れたりするのを防ぎ、空力的に安定させる効果がある。除電シートのありなし評価ではステアリングニュートラル付近の違いが確認できたし、定量データも取れたので採用と公表を決断したという。

後席もフロントと同じ黒基調にスエード調表皮と赤ステッチを組み合わせ、室内の一体感を演出。
GR SPORT専用スポーティシート。運転席は除電機能付きで、帯電によるタイヤまわりの空気の乱れを抑えて空力的な安定に寄与する。

引き締まった一体感。快適性を犠牲にせず、見た目に相応しいスポーティさが味わえる

あいにく試乗日は雨で、ルート上の高速道路は大渋滞だった。大きな旋回Gがかかるような走りは体験していないが、Z PHEVと乗り比べができたこともあり、GR SPORTらしさ(のほんの一部だと思うが)を体感することはできた。

ひと言でいえば、しっかりしている。ハイグリップタイヤを履いているし、コイルスプリングのレートは高められているが、減衰が利いており(収まりがいい)、不快な感じは一切ない。フラット感は強く、引き締まった乗り味である。リヤサスペンションメンバーの補強による剛性向上と、パフォーマンスダンパーによるボディ減衰の効果だろうか。パーキングスピードですら、Z PHEVに比べステアリング操作に対する一体感が増した動きが実感できる。RAV4 GR SPORTはスポーティな見た目だけがウリのクルマでは決してない。

スポーティだが、不快ではない。RAV4 GR SPORTは快適性を損なうことなく、一体感のある走りを実現している。

GR SPORT特有の機能ではなく新型RAV4全体に言えることだが、運良く(?)高速道路が渋滞していたおかげで、高度運転支援技術トヨタ・チームメイトの「アドバンストドライブ(渋滞時支援)」(セットオプション設定)の機能を試すことができた。自動車専用道路での運転において、渋滞時(0km/h〜約40km/h)にレーダークルーズコントロールおよびレーントレーシングアシスト作動中にドライバーが前を向いているなど一定の条件を満たすとシステムが作動し、ステアリング操作と車間距離を制御する。

つまり、ハンズオフが可能。渋滞で停止した際は、ステアリングのスイッチに触れたり、アクセルペダルを踏んだりせずに再発進する。不安感はまったくなく、信頼してクルマに制御を任せることができる。気を使う渋滞時に緊張感を少し軽減できるのはありがたい。こうした、先進かつ信頼に足る機能を備えたうえで、走りの楽しさを付加したモデルが、GR SPORTというわけだ。

RAV4 GR SPORT
グレードRAV4 GR SPORT(プラグインハイブリッド)
全長4645mm
全幅1880mm
全高1685mm
室内長1880mm
室内幅1525mm
室内高1220mm
乗員人数(名)5
ホイールベース2690mm
最小回転半径5.7m
最低地上高195mm
車両重量1990kg
パワーユニット2.5L直列4気筒+プラグインハイブリッドシステム
システム最高出力242kW(329PS)
エンジン最高出力137kW(186PS)/6000rpm
エンジン最大トルク229Nm(23.4kgm)/4400-4800rpm
燃料(タンク容量)レギュラーガソリン(55L)
モーター型式・種類フロント:2VM/リヤ:4NM(交流同期電動機)
モーター最高出力フロント:151kW(206PS)/リヤ:41kW(55PS)
モーター最大トルクフロント:272Nm(27.7kgm)/リヤ:123Nm(12.5kgm)
バッテリー種類リチウムイオン電池
バッテリー容量58.0Ah
燃費(WLTCモード)21.5km/L
EV走行距離(WLTCモード)145km
サスペンション前:マクファーソンストラット式 後:ダブルウィッシュボーン式
ブレーキ前:ベンチレーテッドディスク 後:ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ235/50R20
価格630万円