フィンランドで学んだ「現地現物」とスピード感
WRCラリージャパン開催中にTGR-WRTのメディア・ラウンドテーブルが行なわれた。出席者は、GRの高橋プレジデント、行木 宏さん、服部寛大さんの3名。
テーマは、トヨタが進める「ラリーを通じた人材育成」について、である。
行木さんは2012年にトヨタへ入社後、プラットフォーム開発に従事し、21年からRally2の車両規格、GRヤリス系の車両規格を担当。その後、22~24年にTGR-WRTへ3年間フィンランドへ出向していた。フィンランドではRally2 プロジェクト/マネジャーとして事業・車両規格、開発、生産体制の構築、販売後のサポートまで一気通貫で担当したという。現在は、トヨタ本社に戻り、ミッドサイズカンパニーでbZ4Xの製品企画業務を担当中だ。
もうひとり、服部寛大さんは2011年にトヨタ入社。車両試験課で車両総合評価・メカニックやテストドライバーをしていた。22~25年にTGR-WRTへ4年間出向し。Rally1、Rally2車両のメカニックとして、勝田貴元選手のマシンなどを担当してきた。現在は、GRヤリスの開発やRally1、Rally2マシンのデモランや説明などを担当している。

――フィンランドから戻って、bZ4Xなど、いわゆるスポーツカーではないクルマの開発に携わっているとのことですが、ラリーの現場で鍛えられたことが、どう役立っていますか?
行木さん:スポーツカーではないですが、トヨタのものづくりの考え方として、現地現物と、がございまして、そこの考え方をフィンランドで私はテストの開発のところであったりとか、お客様からのフィードバックというところを頻繁にGRヤリスの開発に活かしてきました。その経験で、自分からどんどん現場に入り込んでいくということを日々実践して、スピードアップを取り進めているところです。

服部さん:メカニックは限られた時間の中で、いかに正確に高品質な車両を出すかです。もちろんドライバーの命がかかっています。そういう緊張感だったり、限られた環境で、自分の中で即断即決して作業しないといけない。どちらかというと、日本で働く上では決められたルールであったり、安全第一だったり、もちろんそれは大切なことだと思うんですけども、それがある。そんななかでも、いかに効率よくできるかっていったところが、そのWRCという特別な舞台で身についたのかなと思います。
――ラリーを通じた人材育成ですが、昨年のラリージャパンからの進展はいかがですか?
高橋プレジデント:社内でも育ってる感じがします。今、ふたりはフィンランドから帰ってきて、 トヨタの立場で仕事してくれてますけど、実は彼らの後任も今フィンランドで同じような取り組みをやっております。バトンがちゃんと回っていく。それが今、フィンランドの経験した人間がトヨタのなかでいろいろ仕事をできる。それがトヨタが目指す、そのすぐにはできないのだけれど、時間をかけて人を育成していく、その運営していく、その考え方そのものじゃないかなと思います。送り出した僕の期待値としては、やはりスピード感に一番期待しています。モータースポーツの現場は問題が起こると、その場で、即断即決で対策を考えているんです。やっぱりトヨタ自動車のなかの開発って、問題が起こると対策会議みたいなのが開かれるわけですよ。そこで各セクションが自分の視点でいろいろ検討していく。もうその時間がもったいない。問題が起こったら、その場で関係者がみんなでもうワイワイすればいいじゃないか。要は上司がいなくても、現場が決めてどんどん進める。そこのスピード感がモータースポーツで一番培われると思ってるんですね。そういう人材育成が、このラリー、モータースポーツのフィールドで進んでいるというのが大きいと思います。
「クルマ好き」を送り込む――WRC人材育成の仕組み

——トヨタのなかからラリーの現場に送り出されるときは、自分から手を挙げ続けて、選ばれていくのか、高橋さんが選んで指名するのか、どちらですか?
行木さん:ラリーとても好きな競技ではありましたけれども、自分がそこに行けるとは思っていなかったというのが正直なところです。プラットフォーム開発をしていたときに、ある日 、Rally2の企画をやってほしいということで、そこで、突然GR カンパニーにお声かけいただきました。
服部さん:私も同じですね。実際に全日本ラリーなどを転々とさせていただいていたものの、、そのなかでWRCで、メカニックとしてやってみないかという声をかけていただきました。自分自身も世界でどれだけ通用するのか、もちろん、ラリーワンという世界のトップのメカニックがどんなものなのかといったものだったり、自分自身もどこまで通用するのか、ワクワクしていたのもありますし、実際にやってみようという気持ちで出向したのが経緯です。
高橋プレジデント:誰を派遣するのかについては、いわゆる一本釣りのケースもあれば、社内で公募というかこういう仕事をやりたい人、手を挙げてっていうケースもあります。彼らの場合は、一本釣りではないんですけど、こういう仕事がありますというのに対して、僕らが複数候補を立てて、それを先方の部署のマネジメントと話をしたというのが彼らの状況です。基本、僕らはクルマが好きでモータースポーツをやってみたいっていう人を取ってきて、フィンランドとか現地に送り込んでいます。嫌いなのに行っても伸びないし、周りへの影響もやはり良くない。好きな人同士が集まることが本当にワイワイ楽しそうにクルマできる、クルマづくりができるという環境を作りたいですし、かといってクルマが好きだから行ってこいだけだと苦しい。彼らにもご家族がいて、どうしても海外に行けるタイミング、行けないタイミングというのはあります。そういうものをトータルで見て、誰を送り込もうかという判断しています。

現在、WRT(ワールドラリーチーム)フィンランドにはトータルで10名ほどの日本人が活躍しているという。トヨタが考える「ラリーを通じた人材育成」は着実に実を結び始めている。

