連載

自衛隊新戦力図鑑

平時の警戒監視活動に特化した艦

11月13日、ジャパンマリンユナイテッド磯子工場(神奈川県)にて、海上自衛隊哨戒艦一番艦・二番艦の進水・命名式が挙行され、それぞれ「さくら」、「たちばな」と命名された。艦艇に樹木の名前を採用するのは、第二次大戦期の松型駆逐艦、戦後すぐの「くす」型警備艦(哨戒フリゲート)に次ぐもの。

「哨戒艦」は、海上自衛隊に初めて導入される艦種であり、本型は基準排水量1900トン、全長95mと小型。固定武装も艦首の30mm機関砲のみで、正面切って敵と“戦う”能力はない。このような艦が新造された背景には、近隣諸国の艦艇・船舶の活動活発化がある。たとえば中国は、2010年頃には稀だった大型軍艦の太平洋進出を、いまや常態化させている。

こちらは二番艦「たちばな」。小型の艦なので、ひとつの建造ドックを分割して2隻同時に建造されたようだ(写真/筆者)

海上自衛隊は、既存の護衛艦でこれら艦艇への警戒監視を実施しているが、護衛艦のような大型戦闘艦を使うには無駄の多い仕事だし、本来の役割(訓練など)を圧迫するおそれも生じていた。そこで、平時の海洋監視活動に特化した艦として「哨戒艦」が生まれたのだ。

「さくら」と「たちばな」の命名書。両艦の名前は、京都御所紫宸殿の庭を飾る「左近の桜、右近の橘」にちなんだもの。三番艦以降も樹木に由来する名前が与えられる(写真/筆者)

多様な無人機を運用する

「さくら」型哨戒艦は12隻の大量建造が計画されており、限られた隊員数のなかで乗員を確保すべく、徹底した省人化・無人化によって一隻あたりの乗員数は約30名まで抑制されている。逆に考えると、隻数を増やすため武装を割り切って、乗員数を減らしたとも言える。

艦橋は塗装工事のため、目張りされていた。レーダー・ステルス性を考慮した凹凸の少ないデザインが特徴。艦橋正面の台上に唯一の固定武装である30mm機関砲が設置される(写真/筆者)

では、低能力な艦なのかと言えば、そんなことはない。米国シールドAI社製の垂直離着陸無人機「V-BAT」の搭載が予定されており、幅広い警戒監視能力が期待できる。また、今年の夏に明らかとなった無人機による「多層的沿岸防衛体制」構想のイメージイラストでは、哨戒艦から攻撃型無人機が発艦する様子が描かれており、戦闘にも従事する可能性がある。さらに、艦の後部には小型艇の揚収装置やハッチが設けられており、ここから水上無人機や水中無人機を運用することが可能だろう。つまり、「さくら」型は「無人機母艦」のような能力を持つ可能性がある。

大きな多目的格納庫や、広い飛行甲板が設けられ、無人航空機などを運用することが想定されている。また、艦尾にはハッチが設けられており、ここから水上・水中無人機を運用することも可能だろう(写真/筆者)
本艦への搭載が予定されている無人機「V-BAT」。最大10時間の滞空性能を持ち、広い範囲を警戒監視することができる(写真/アメリカ海軍)

今回進水した「さくら」「たちばな」は、それぞれ2027年1月・2月の就役を予定しており、新編される「哨戒防備群」に配属される。またJMU磯子工場では、「さくら」「たちなば」の隣で三・四番艦の建造も進められており、こちらも今年度中に進水が予定されている。

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