連載

内燃機関超基礎講座

【モーターファン・イラストレーテッド Vol.136より転載】 

予め空気と燃料を混ぜ合わせた混合気体を圧縮し、そこに点火プラグによる火花点火という手法を用いて燃焼を開始するガソリンエンジンでは、いかに素早く燃焼させるかという、急速燃焼が古くから目標とされてきた。燃焼が速くなれば点火タイミングを遅らせることができ、より上死点に近いところで燃焼を開始することが可能となる。それは燃焼に伴って発生する熱エネルギーが、より無駄のないかたちで、運動エネルギーへと変換されることを意味する。理想は上死点での点火〜瞬間的な燃焼終了だが、今なおそれは程遠い状態だ。

トヨタのA25A-FXS型エンジン(カムリに搭載)で採用された急速燃焼のための手法。タンブル流(縦渦)を積極的に誘導することで、急速燃焼へとつなげている。レーザークラッドバルブシートの採用や、独特なピストン冠面形状など、すべてがタンブル流のために設定されている。

そして、急速燃焼における近年のトレンドがタンブル流の利用。トヨタではタンブル流の積極的な誘導を目的に、エンジンをその構成要素から見直している。もちろん、これにより燃焼の急速化を実現、理論通り点火のタイミングも遅角され、より上死点へと近付くかたちとすることで、効率を大きく向上させることに成功している。

ホンダActiva125(二輪車)に採用されたタンブル流強化装置の効果。筒内で強力な渦が発生していると空気と燃料がぐちゃぐちゃにかき乱されてよく混ざり、そうすると火を点けたときにパッと燃える——というのがタンブル流促進による急速燃焼の概念だ。点火直前に燃料を噴く直噴式だとなおそのありがたみが大きいのは想像できるだろう。

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