トヨタ・ハイエース バンをベースにした災害支援車をJAFで初導入

読者諸兄はJAFに加入しているだろうか。年会費を支払うことで、何度でもロードサービスを受けることができるのは周知のとおりである。トラブルの状況や車両の移動距離などによっては有料になる場合もあるが、会員ならば大抵のケースで無料というありがたいものだ。

よく、「自動車保険にロードサービスが付いているから」という人がいるのだが、実は自動車保険に付帯したロードサービスは1〜2回しか対応してくれないことが多い。例えば、バッテリー上がりなどの軽微なトラブル1回、事故などによるレッカー1回という具合だ。

もちろん、そんなに頻繁にトラブルはないかもしれないが、筆者の場合はクルマとバイクを複数台所有しているため、JAFの存在は非常にありがたい。実際、昨年はクルマとバイク、さらに愛犬によるキーの閉じ込みが重なって、年3回もお世話になった。

年会費は4000円と少々お高い気もしていたが、窮地を何度も無料で救ってもらえる上に、各店舗・施設で使える割引クーポンの恩恵があることを考えれば、結果的には申し訳ない額だ。

と、ここまではJAF礼賛になってしまったが、今回の記事のテーマは違う。先頃開催された「ジャパンモビリティショー2025」において、JAFは恒例のブースを出展。その中で、興味深い展示を行った。それが災害支援車と即応支援チーム「JAF-FAST」の紹介だ。

開発中のJAF-FAST専用車両「JAF災害支援車」。

JAF-FASTとは災害被災地に赴き、そこで不動となった車両の移動などを実施する即応支援チームだ。JAFがこのようなチームを創設したきっかけは、2024年1月に発生した能登半島地震だという。

この大災害は、復興支援にふたつの課題を残した。災害支援の要と言えば、やはり陸上自衛隊を思い浮かべることだろう。災害で荒廃した被災地には、様々な傷跡が残る。道路の寸断や家の倒壊、土砂崩れなどが主なものだが、こうした状況を少しでも早く打開するのは、救援組織が現場に到着するための道路インフラの復旧が肝要となる。

道路インフラが使えない状況というのは、何も陥没や土砂崩れなどだけではない。東日本大震災でもそうであったが、沿岸地域の場合は津波に巻き込まれたクルマが不動状態となって放置されるというケースもあるのだ。また熊本豪雨のように、浸水で動けなくなるクルマもある。

不動車なら自衛隊の重機でガンガン動かせばいいのではないか、と思うだろう。ところが最近のクルマはサイドブレーキなどの構造も複雑化しており、簡単に移動できない状態になってしまうらしい。こうなると、クルマの知見や経験が豊かな人材と特別な装備がないと動かせないというのである。

JAF-FASTの標章。FASTは”First Action Support Team”を意味する。

そこでJAFのロードサービス隊が出動し、被災地支援に当たっているのだが、ここでふたつ目の課題が出てきた。能登地方は半島のため、輪島などに行く道路が少なく、主要道路が被災すると救助や復旧作業が困難になるという状況が見られた。

出動したJAFチームは金沢から来ていたが、現地で留まる準備がなかったために、毎日数時間かけて基地と被災地を往復することになってしまったのである。これは作業時間の大幅なロスを意味するだけでなく、隊員の体力面への負担も懸念されることになる。

そこで設立されたのがJAF-FASTというわけだ。このチームは災害支援のための特別なスキルと装備を持ち、現場で宿営しながら救助作業を実施する。チームはハイエースをベースにした災害支援車に特殊な装備を積み込み、精鋭スタッフとともに被災地へと向かうのである。

ベースはトヨタ・ハイエース バン。発電機、ポータブル電源、簡易トイレ、備蓄食品・水、簡易ベッド、災害毛布セット、電動工具、熱中症対策品、寒冷対策品、テントなど積載する。

日本全国にJAFのロードサービス隊員は約2000名いるが、JAF-FASTとして認定される隊員はその中の1%だという。今後、こうした隊員を全国8地方本部に配置していく予定になっている。

JAFというとバッテリー上がりやメカトラブルの時に助けてくれる組織という認識が一般的だが、実は災害時の復興支援も行っているありがたい存在なのだ。自分が被災するイメージを持つのはなかなか難しいが、災害時にも活躍してくれることも知っておきたいものだ。

JAF-FAST専用のベスト。