
続けてお伝えしてきた埼玉県川島町で開催された「CAR FESTIVAL IN KAWAJIMA」での模様。最後となる今回紹介したいのは、色鮮やかなシティカブリオレ。ホンダが1981年に発売した初代シティはトールボーイと呼ばれる背の高いデザインが特徴で、小さなボディながら大人4人が乗っても開放感のある空間を備えていた。当時、軽乗用車を生産してしなかったホンダにとり、シビック以下のエントリー車となったわけで発売と同時に大ヒットを記録した。

初代シティの特徴としてバリエーションモデルの展開抜きには語れない。1982年には当時世界最小だった1.2リッターエンジンにターボチャージャーを装備したシティターボを追加発売。さらに翌年にはインタークーラーを追加装備したシティターボⅡへ発展している。1.2リッターの排気量から110psものハイパワーを実現していたので、当時の若者たちに大人気となった。しかもシティターボⅡは高性能車らしく前後フェンダーがブリスター形状とされ、よりワイドなタイヤ&ホイールを履く姿にも注目が集まった。

初代シティの躍進はこれだけに留まらず、なんとシティターボⅡのボディをベースにしたオープンモデルであるシティカブリオレまで翌年に追加発売している。その当時の国産車にフルオープンモデルは存在しなかったため、これも大人気を博すことになった。シティカブリオレの魅力はフルオープンボディなだけでなく、12色ものカラーバリエーションが用意されたこと。さらに内装にもファブリックとビニールレザーと2種類のシートを用意したことで、オーダーメイド感覚を高めていた。

ちなみにシティのフルオープンボディを開発するにあたり、ホンダはイタリアの有名カロッツェリアであるピニンファリーナへ委託している。ピニンファリーナはスタイリングだけでなく固定ルーフ車のオープンモデルを開発することも多く、豊富なノウハウを備えている。シティでは車体中央にロールバーが残ることになったが、それでも4座席フルオープンボディは開放感に溢れるものとなっている。

埼玉県川島町の役場と周囲の付帯施設を展示会場にした「CAR FESTIVAL IN KAWAJIMA」は、場所によって芝生の上に車両を展示する。当日は小雨が降ったり止んだりと生憎の天気だったものの、芝生の色にグリーンのボディカラーが映えるシティカブリオレを見つけた時には粋な計らいに思えた。それに展示されたシティカブリオレはナンバープレートこそ新しいものの、どこから見てもフルノーマルを保っている。これは話を聞かずスルーするわけにもいかない。

クルマのそばにいたオーナーにお話を伺うことにする。オーナーの清水潔さんは64歳になる方。ナンバーの所在地から推理して「もしかして」と聞けば、やはりホンダにお勤めの人だった。ホンダの社員には古いホンダ車を所有している人が多く、これまで何人ものホンダ旧車オーナーを取材したことがある。清水さんもその一人であり、普段のアシはなんとクラリティPHEVだそうだ。

どうして清水さんがシティカブリオレを選んだかといえば、2002年頃にピンクの同車を所有していたことがあるからだとか。2台目になるシティカブリオレだが、中古車情報誌で見つけた時は色違いであることも決定打になり再び購入することを決められた。オープンにして走る時の気持ち良さとキビキビした走行性能が忘れられず、20数年振りにオーナーへ返り咲いたというわけなのだ。

旧車というよりネオクラシックカーに分類されるシティカブリオレだが、すでに生産されてからすでに41年も経つ。それだけ期間が経てば消耗部品や経年劣化は避けられないところ。だが、清水さんのクルマからはヤレや傷みが見受けられない。新車からの内外装を保っていることから、購入する以前までのメンテナンスや手入れが行き届いていたと思われるが、清水さん自身も購入後にしっかりとメンテナンスを実施されている。

これまでショックアブソーバーのオイルを入れ替えたり、埼玉県にある昭和のホンダ車専門店であるガレージサイコーで定期的な整備を実施されている。特にショックアブソーバーのオイルを入れ替えるNeo Tuneは効果的なようで、純正ショックのままというところも清水さんが気に入っている理由。処置後は以前と比較にならないほど良い走りになったそうだ。

シティカブリオレの隣には4輪ではなく2輪のモトコンポが展示されていた。「CAR FESTIVAL IN KAWAJIMA」では2輪の展示も受け付けていて、同時代のバイクも見学できるところがポイント。しかもシティの隣にシティと同時に開発されトランクに収納可能だったモトコンポが置かれているとは、マニアにとり嬉しい配慮だろう。このイベントは2026年も開催予定だから見逃したマニアは必見だ。
