プリウス顔になっただけでなくアクアは安全性能が大幅向上

アクアは今回の改良でフロントフェイスが変更され、それに伴い全長が30mm延長された。外装にはピアノブラックのバックドアガーニッシュが追加されたほか、ドアミラー全開時の車幅が30mm縮小され取り回し性が向上している。内装においても、メーターが7インチの液晶ディスプレイに変更された。

全長が延びたものの居住空間に大きな変化はなく、後席居住性は相変わらずフィットの方が優れる。両車の後席を比較すると頭上空間は同程度だが、後席の膝周り空間はフィットの方が拳ひとつぶん広い。荷室空間はほぼ同じくらいだが、フィットには後席座面を跳ね上げて背高な荷物を立てて載せられるチップアップ機構が備わる強みがある。

今回のアクアの改良でもっとも大きな変更点は、安全機能を中心とする電子制御システムと言えるだろう。衝突被害軽減ブレーキの検知対象にバイクが追加されたほか、センサーで得られた情報を基にクルマが事故防止を支援してくれる機能「プロアクティブドライビングアシスト」が追加された。

また、停止直後の車両の揺れを抑える「スムーズストップ」も追加されたうえ、ドライブモードの設定保持機能が備わり、運転のたびに設定し直す手間がなくなった。そしてアクアにも電動パーキングブレーキが搭載され、従来の擬似的な停止保持機能ではなくブレーキホールド機能が標準装備となっている。

フィットは以前から電動パーキングブレーキを標準装備していたため、アクアに追いつかれた形になる。各種追加機能も加味すれば、安全機能ではアクアが逆転したと言えるだろう。

トヨタ アクア Z
ボディサイズ=全長4080mm×全幅1695mm×全高1485mm
ホイールベース=2600mm
車両重量=1140kg
タイヤサイズ=185/65R15(前後)

ホンダ フィット e:HEV LUXE
ボディサイズ=全長3995mm×全幅1695mm×全高1540mm
ホイールベース=2530mm
車両重量=1200kg
タイヤサイズ=185/55R16(前後)

依然として燃費性能で優れるアクア!フィットは走りの上質感で勝る

アクアの改良アナウンスではパワートレインやシャシーの変更については触れられていないが、実際はハイブリッドシステムのソフトウェアや電動パワーステアリング、およびダンパーには手が加えられている。

電力の入出力特性に優れたバイポーラ型ニッケル水素バッテリーを搭載するアクアは、同社のヤリスハイブリッドなどよりもモーター走行領域が広く設定されていた。今回の改良では最高出力80ps/最大トルク141Nmのモータースペックはそのままながら、わずかではあるが作動領域がさらに拡大されている。

しかし、カタログに記載される燃費数値は一切変わっておらず、両車のWLTCモード平均燃費はアクアの33.6km/L(Zグレード)、フィットが27.6km/L(e:HEV LUXE)とそのままだ。

燃費性能はアクアが優れるが、走りの上質感では依然としてフィットの方が優位と言えるだろう。「e:HEV」のフィットは、最高出力123ps/最大トルク253Nmのスペックのモーターを搭載するシリーズハイブリッドシステムをベースとして、高速域でのみエンジンの動力を直接用いて走行する。

エンジンとモーターを併用するアクアに対して、フィットは一般道ならモーターのみで走行できるうえ、発電に用いるエンジンもアクアより1気筒多い4気筒であり、回転数や速度を上げても騒音や振動が少ない。プラットフォームこそアクアよりさらに一世代古いフィットだが、乗り味の上質感ではアクアよりも高いレベルにある。

トヨタ アクア Z
エンジン形式=直列3気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1490cc
最高出力=91ps/5500rpm
最大トルク=120Nm/3800-4800rpm
トランスミッション=電気式CVT
駆動方式=2WD(FF)

ホンダ フィット e:HEV LUXE
エンジン形式=直列4気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1496cc
最高出力=106ps/6000-6400rpm
最大トルク=127Nm/4500-5000rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)

アクアの大幅な価格上昇でフィットに注目が集まる!?

アクアの最上級グレード「Z」の新車価格は282万4800円であり、大幅な改良が加えたことで各グレード約30万もの値上げとなっている。対するフィットの最上級グレード「e:HEV LUXE」は271万9200円であり、フィットの価格をアクアが上回った。

アクアの価格上昇は、多くの改良と装備の標準化の結果としてやむを得ないものであろう。また、トヨタ内での車種ヒエラルキーを明確にする必要があったのかもしれない。その代わりライバルであるフィットに対して、燃費性能と価格以外の優位性も手に入れた。

安全性能の大幅な向上に加え、走行性能にも調整が加えられたアクアは、総合性能でフィットを上回ったと言える。アクアの改良で、フィットはさらに厳しい立場に追いやられることになりそうだ。しかし、フィットに不利な点ばかりでもない。

アクアの押し出し感の強いフロントフェイスは好みが分かれやすい側面も持つ。また、これまで上質感は高いが価格も高いと言われていたフィットは、アクアの値上がりによって相対的に価格競争力を得ることになった。

アクアの今回のマイナーチェンジは、むしろフィットに注目が集まるきっかけとなるかもしれない。

車両本体価格

トヨタ アクア Z:282万4800円

ホンダ フィット e:HEV LUXE:271万9200円