ブーツや長靴での運転に潜む危険性

防寒靴での運転は形状による悪影響でなく、靴に付着した雪や水によってペダルが滑る懸念もある。

防寒靴が運転に適さない要因は、そのソールの形状にある。ブーツや長靴は、同じサイズのスニーカーなどに比べてソールの面積が広いうえ厚く、靴自体も重い特徴を持つ。

ソール面積が広い靴は、どうしてもペダルの踏み変え時に引っかかりやすい。とくにペダル間隔が狭い車種では、アクセルを踏み込もうとしてブレーキペダルまで踏んでしまう危険が増すことになる。

またソールが厚いと、アクセルペダルからブレーキペダルへと踏み変える際にブレーキペダルに引っかかる危険も起こりやすい。加えて、適切なペダル操作をするためには足を持ち上げる量も数cmほど増やす必要があり、運転疲労の助長にもつながる。

なにより、ソールが厚い靴や重い靴はペダルから伝わる反力が掴みづらい。そのためアクセルやブレーキの微妙な調整が困難になり、雪道や凍結路といった滑りやすい路面での繊細なペダル操作がしにくくなってしまう。

厚いソールはハンドル操作にも影響を与える。ペダル操作を優先させるためにはシートポジションを後ろへ調整しなくてはならず、その結果としてハンドル位置が遠くなり操作の遅れを引き起こしがちだ。

靴自体の重さもペダルの微妙な操作性の悪化や疲労感の蓄積といった悪影響をもたらす。降雪時の運転は、面倒でも慣れた靴に履き替えるのが望ましいと言えよう。

運転しにくい靴はそもそも交通違反

ペダル操作に適さない履物での運転は交通違反の対象だ。安全運転義務違反の罰則は、反則点数2点に加え反則金は普通車9000円となる。公安委員会遵守事項違反は、違反点数なしで反則金6000円だ。

防寒靴での運転は安全性の問題だけでなく、道路交通法に抵触する可能性もはらんでいる。

「安全運転の義務」を記した道路交通法第70条では「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通および当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と定められている。

また、各都道府県の公安委員会ではドライバーが守るべき事項として、運転操作に支障を及ぼすおそれのある履物での運転をすることを禁止する「公安委員会遵守事項」を定めている。

つまり、極端に底の厚いブーツやハイヒール、サンダルなどペダル操作に適さない履物での運転は「ブレーキその他の装置を確実に操作」できていないとみなされ、安全運転義務違反や公安委員会遵守事項違反に問われる可能性があるということだ。

一般的な形状のブーツや長靴であれば、公安委員会遵守事項違反に問われる可能性は低いが、過度な厚底ブーツや本格的な登山靴などは、運転に適さない履物として検挙対象となりうる。

万が一、靴が交通事故の原因と判断されれば安全運転義務違反の対象となり、過失割合の面でも不利になりかねない。スリップによる事故が起きやすい冬場こそ、運転に適した靴を選びたい。

冬場の運転はドライビングシューズへの履き替えがベスト

ドライビングシューズのデザインはデッキシューズのようなタイプから、スニーカーのようなタイプまで多岐にわたる。機能性重視ならスポーツ用品メーカーが販売するドライビングシューズがおすすめだ。

冬場は履きなれた靴で運転するようにしたい。その都度履き替えるのは面倒だが、履き替えることで靴に付着した雪や水によってペダルが滑るのを防止するメリットもある。運転用の靴として推奨したいのはドライビングシューズだ。

ドライビングシューズとは、その名のとおり運転用に作られた靴であり、ペダル操作の妨げになりづらい細身のフォルムに加え、薄く硬いソールと丸く整えられた踵形状が特徴だ。

薄いソールは足裏を通じてペダルの踏み込み具合をより正確に感じ取ることができ、凍結路のような繊細なペダル操作が求められる状況での操作感を大きく引き上げてくれる。

また、かかと部分が丸みを帯びていることで、ペダル操作の際に足全体を動かすのではなく、踵を支点としたペダルワークが容易になるため運転疲労の軽減にも働く。

ソールが薄いことは、良好なペダルの操作性を確保したままシートポジションを前にできるため、ハンドルの位置も近くなり無理な姿勢を取らずに済む点も隠れたメリットだ。

ドライビングシューズは運転用の靴として理想的な形をしている。ただし、ドライビングシューズには歩行やファッション向けの靴と、運転操作に特化した靴に分かれており、もちろん安全のためには運転に特化した靴を選ぶことが望ましい。

運転に特化したドライビングシューズはレーシングシューズと違い、日常の歩行も考慮した設計となっているが、冬場は履き替えを前提として使用するのがよいだろう。

タイヤグリップに頼れず、ペダルやハンドルの正確な操作が求められる雪道の運転は靴選びが重要だ。冬の運転が苦手な人は、まず運転時の靴を見直してみるとよいかもしれない。