2019年のビッグマイナーチェンジ以降、販売台数は増加基調

マイナーチェンジを受けた三菱デリカD:5

2019年2月にビッグマイナーチェンジを受けたデリカD:5は、そのフロントグリルを中心とした顔つきだけでなく、シルバーのボディカラーから電気シェーバーとも揶揄されたが、インパクトは大だった。

ビッグマイナーチェンジを受けた2019年以降、20年と21年はわずかに少し落としたものの、22年以降の販売台数は右肩上がりで、2024年は約2万2000台になり、2025年も前年を大きく超える見通しだという。

片側10mm(両側で20mm)拡幅となるホイールアーチモールを追加

これに関しては、軽スーパーハイトワゴンの「デリカミニ」の相乗効果もあるかもしれないそうだ。「デリカ」ブランドは、以前は熱心なファンが支えてきたが、デリカミニがより幅広い層にデリカ・シリーズを知らしめた可能性は確かにありそうだ。

デリカD:5に話を戻すと、トヨタ「アルファード/ヴェルファイア」をはじめとする、押し出しの効いた大迫力フェイスは、いまや軽自動車まで波及しているが、電気シェーバーはさておき、それまでの天地に低い(小さな)縦型グリルから一気にコワモテになり、注目度を高めたのは事実だろう。

前後フェンダーは樹脂製からスチール製に替わっている

ディーゼルエンジンと8ATの組み合わせになり、電動パーキングブレーキ、衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全装備も用意した。油圧式からデュアルピニオン式の電動パワーステアリングに変わったことで、操舵フィールが軽く、現代的になった。

新型デリカD:5の主な改良点は

その後、数回の一部改良を経た今回のマイナーチェンジでは、人気の特別仕様車であった「シャモニー」の好評点をカタログモデルにも落とし込んだという。内外装デザインの刷新をはじめ、8インチメーターディスプレイの採用、「S-AWC」とドライブモードの採用により、走りも磨きあげたという。車外騒音の対策などで静粛性も向上させたそうだ。

特別仕様車「シャモニー」の好評な要素をマイナーチェンジで盛り込んだという

ホイールアーチモールが追加されたことで、全幅が20mmワイドになったものの、全長と全高は変わっていない。また、前後フェンダーの大きなデザイン変更はないものの、樹脂製からスチール製に変更されている。

リヤゲートパネルの造形が一部変わり、2トーン(上側がボディカラー、下側がブラック)のラインを上に上げて、「DELICA」のロゴをガーニッシュ内に収めている。さらに、メッキパーツを極力減らすことで、ギラギラ感を抑えたという。ギヤ感が増すとともに、洗練された雰囲気を醸し出している。後ろ姿の変わり映え感も見どころだ。

リヤまわりの変わり映え感も見どころ

先進安全装備では、カメラ機能がアナログからデジタル化されたことで、「マルチアラウンドモニター」のカメラ画質が3倍になり、多様な表示にも対応している。

2024年の販売データでは、「P」をベースとした特別仕様車の「シャモニー」が台数を押し上げ、先述したように、今回のマイナーチェンジではカタログモデルにその世界感が落とし込まれたことになる。2026年のさらなる躍進も容易に予想できるが、登場から19年が経つデリカD:5がこれだけ売れているのは驚きだ。

基本設計が古くても売れ続けるデリカD:5の謎

その理由を探ってみると、高い悪路走破性を備える唯一無二のミニバンであることは、デビュー時から基本的には変わっていない。ギラギラ感を押し出している流行のミニバンは少し苦手……というユーザーニーズも拾っている可能性もあるだろう。

メーターとセンタークラスターを中心に変更

また、サイズ感は、アルファード/ヴェルファイアよりも小さく、トヨタ「ノア」/「ヴォクシー」や日産「セレナ」よりも長い全長と全幅を備えている(ホンダ「ステップワゴン・エアー」とデリカD:5の全長は同値)。

デリカD:5は、スクエアなボディフォルムもあって、ノア/ヴォクシー、セレナ、ステップワゴンのミドルサイズミニバンと比べると、サードシートの足元空間や頭上まわりなどに余裕があり、居住性は明らかにデリカD:5の方が上だ。さすがにアルヴェルほどの3列目の広さやシートの豪華さには及ばないものの、大人でも十分に実用になる3列目を備えているのもデリカD:5の美点だろう。

「S-AWC」ダイヤル、走行モード、「ヒルディセントコントロール」も追加された

一方で、ライバルのミドルサイズミニバンは、ノアヴォクのようにオットマン付セカンドシートを用意したり、ステップとフロアのノンステップ化(ステップとフロアの間に段差なし)を実現できたりはしていない。

むしろ、185mmという高めの最低地上高により少しよじ登るような乗降時の姿勢になる(「P」系に電動サイドステップを標準装備し、レスオプションも設定)。

大人でも十分に実用になるサードシートも美点

なお、ノアヴォクの2WDは140mm、4WDにいたっては125mmと低い。こうした利便性の高さよりも機能性を重視した結果も受け入れられているといえるだろう。ほかにも3列目の左右跳ね上げ機構は、ノアヴォクのように片手で容易にできる方ではなく、それなりに力が要るが、デリカD:5の本質(魅力)の前には些末な点かもしれない。