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内燃機関超基礎講座

 かつての主力エンジンだったEJ型は、そのモデルライフの途中で鋳鉄製カムシャフトを組み立て式に変更した。バルブリフト量の増加とバルブイベント可変化により、より高い強度が求められるようになったためだ。もちろん鋳鉄カムシャフトは充分に高い強度なのだが、必要な部分にだけ強度があればいい。強度不要な部分は思い切って軽くしたい。そのため、薄肉の中空パイプをシャフトとし、焼結合製のカムロブを圧入する構造を採用した。フロント側の先端には冷間鍛造のエンドピースを摩擦圧接し、シャフトも含めて必要な部分に機械加工が施される。シャフトの肉厚は、ジャーナル部分で約2mmであり、これは鋳鉄から削り出す方法では不可能なレベルである。

 FB型エンジンのバルブリフト量は11mmでありEJ型の10mmより大きい。しかもVVTはカム山がバルブを乗り越えるときのトルク変動で作動するタイプであり、カムシャフトをねじるような力が作用する。そのため、カムロブは鋳鉄に対して約2倍の耐ピッチング性能を持った素材で成形され、チルカムより硬度を10%程度上げている。また、ロッカーアーム式のバルブ駆動は1弁当たりの慣性質量が大きいため、高回転まで回すとなると慣性質量×回転数の計算で直打式のほうが有利になる。この対策として、カム山の先端部に向かう稜線のカーブが工夫されている。カムロブは精密成型されていてフィルムラッピングは行なっていない。さらにロッカーアームに取り付けているローラーにニードルベアリングを内蔵し、フリクションを低減している。ベアリングなしの場合に比べるとフリクションはまったく違うという。

 それと、バルブ周りの設計で重要なのがバルブスプリング選びである。どの回転域を「いちばんオイシくしたいか」によってバネ反力の設定が変わってくる。ここもカムプロファイルとの関連があり、FB型エンジンでは高回転域にスイートスポットを置いている。

FB型水平対向エンジンの組み立てカムシャフト

カム山の頂上に向かう稜線は、一度微小な凹面を描いてから凸状態になるよう成形されている。これが加速度調節のためのカーブである。シャフトとカムロブの接合面も均等できれいだ。エンジン1基当たり4 本のカムシャフトは全数検査され、4 本セットでエンジン組み立てラインに送られる。
カムシャフトのジャーナル部分を削る工作機はワークを固定しシャフトのたわみによる削り反力が出ないように管理されている。加工を終えたシャフトは、まさにツルツルの手触りになっていた。スバルのエンジンは機械加工が多く手間がかかっている。
カムシャフト側を回転させ、その発熱量が素材の変態点を超えたところでエンドピースとシャフトの双方の組織境界が完全に混ざり合うという接合方法である。摩擦攪拌溶接に似ている。この写真ように作業中の素材は真っ赤になる。

高精度シリンダーヘッド

水平対向4気筒エンジンのカムシャフトは短くて済むが、DOHCでは合計4本を必要とする。シリンダーヘッドへの動弁系組み付けはバルブとその周辺から行なう。両バンクの特性を合わせるための公差が製造上のポイントになる。
バルブクリアランスはシムを使って調節する。キャリアにカムシャフトを載せ、クリアランスを調整し、再びバラしてシムを組み込むという作業が行なわれる。シムの種類は60 種類あるが、現在の公差は0.1mm以下に収まっている。
シムを組み込んで最終的にカムキャリアで固定された状態。ローラーロッカーアームのレバー比があるから、シムは×1.5程度で考えることになる。おそらく2μの差で60 枚が用意されているのではないだろうか。そこは秘密だと言う。

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