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自衛隊新戦力図鑑一部隊の年始行事から国際的イベントへ
第1空挺団は陸上自衛隊唯一の空挺部隊(パラシュート降下を実施する部隊であり、精鋭部隊として知られている。空挺団は千葉県・習志野駐屯地に所在し、毎年の訓練始めとして隣接する習志野演習場において「降下訓練始め」を開催し、一般にも公開している。

もともとは訓練の安全祈願の行事であったが、2017年から同盟国アメリカが参加するようになり、2023年の英豪の参加以降、2024年は7カ国、2025年には11カ国と参加国が拡大。今年は過去最大となる14カ国(米英豪加仏独伊蘭・ベルギー・フィリピン・ポーランド・シンガポール・タイ・トルコ)を数えた。こうした多国間イベントに発展したことから近年では「NYJIP(New Year Jump in Indo Pacific)」という英字名称でも呼ばれている。

ロボット犬が登場
例年、空挺団長や参加各国の空挺部隊指揮官が降下する「指揮官降下」や、島嶼奪還を想定し空挺隊員が次々にパラシュート降下する訓練展示が行なわれるのだが、冒頭でも述べた通り今年は強風のため、すべての降下が中止された。これまでも同様の理由で一部の演目が中止となることはあったが、全面中止は筆者の知る限り初めてのことだ。

降下こそなかったが、訓練展示は想定されたシナリオに沿って行なわれた。その内容は例年ほぼ変化はないものの、新しい要素も加えられている。今年、新たに追加されたのが“ロボット犬”だ。アメリカのゴースト・ロボティクス社製「Vision60」と呼ばれる四足歩行型ロボットが降下始めに初参加した。

銘板に記された名称は「小型UGV(歩行型)」(UGVとは無人地上車両のこと)。同様のロボット犬は航空自衛隊も基地警備に導入しているが、空挺団では偵察などの用途に使用しているようだ(まだ、実験的なものだと思われるが)。防衛省・自衛隊は「無人アセット防衛能力」の強化を掲げ、さまざまな無人機の導入を進めているが、象徴的なお披露目とも言える。

平和と安定は一国だけでは実現できない
また、降下訓練始めは防衛大臣が参加することが恒例となっている。今年も小泉新次郎防衛大臣が習志野を訪れている。大臣が迷彩のジャケットを着用するのは例年通りだが、小泉大臣は空挺団員だけに許されている海老茶色のベレー帽を被り、隊員との一体感を演出していた。大臣はまた、諸外国空挺部隊が参加したことについて「平和と安定は一国のみでは実現できない」とし、多国間協調の重要性を説いている。

パラシュート降下は中止となったものの、インド太平洋諸国や欧州との連帯をアピールした今年の降下訓練始めは、日本を巡る安全保障環境がますます厳しくなるなか、大きな意義があったと言えるのではないだろうか。
