連載

自衛隊新戦力図鑑

一部隊の年始行事から国際的イベントへ

第1空挺団は陸上自衛隊唯一の空挺部隊(パラシュート降下を実施する部隊であり、精鋭部隊として知られている。空挺団は千葉県・習志野駐屯地に所在し、毎年の訓練始めとして隣接する習志野演習場において「降下訓練始め」を開催し、一般にも公開している。

日本で唯一の空挺部隊である第1空挺団。航空機からのパラシュート降下や、ヘリを使った空中機動など、機動力の高い部隊として知られる。写真はCH-47JA輸送ヘリからファストロープ降下する隊員たち。CH-47は、このほか120mm迫撃砲を機外に吊るしての輸送と展開も披露する予定だったが、強風のため中止された(写真/筆者)

もともとは訓練の安全祈願の行事であったが、2017年から同盟国アメリカが参加するようになり、2023年の英豪の参加以降、2024年は7カ国、2025年には11カ国と参加国が拡大。今年は過去最大となる14カ国(米英豪加仏独伊蘭・ベルギー・フィリピン・ポーランド・シンガポール・タイ・トルコ)を数えた。こうした多国間イベントに発展したことから近年では「NYJIP(New Year Jump in Indo Pacific)」という英字名称でも呼ばれている。

終盤では日本の旗のもとに、参加14カ国が集結するという演出も。今年新たにタイとトルコが加わった(写真/筆者)

ロボット犬が登場

例年、空挺団長や参加各国の空挺部隊指揮官が降下する「指揮官降下」や、島嶼奪還を想定し空挺隊員が次々にパラシュート降下する訓練展示が行なわれるのだが、冒頭でも述べた通り今年は強風のため、すべての降下が中止された。これまでも同様の理由で一部の演目が中止となることはあったが、全面中止は筆者の知る限り初めてのことだ。

空挺隊員を降下させる予定だった日米の輸送機は上空を通過するのみだったが、降下を想定し、低速で演習場上空を飛行した。西から(写真では左から)の強風のため、機体がやや傾いている(写真/筆者)

降下こそなかったが、訓練展示は想定されたシナリオに沿って行なわれた。その内容は例年ほぼ変化はないものの、新しい要素も加えられている。今年、新たに追加されたのが“ロボット犬”だ。アメリカのゴースト・ロボティクス社製「Vision60」と呼ばれる四足歩行型ロボットが降下始めに初参加した。

CH-47輸送ヘリで演習場に登場した犬型ロボットは、アメリカのゴースト・ロボティクス社製「Vision60」(写真/筆者)

銘板に記された名称は「小型UGV(歩行型)」(UGVとは無人地上車両のこと)。同様のロボット犬は航空自衛隊も基地警備に導入しているが、空挺団では偵察などの用途に使用しているようだ(まだ、実験的なものだと思われるが)。防衛省・自衛隊は「無人アセット防衛能力」の強化を掲げ、さまざまな無人機の導入を進めているが、象徴的なお披露目とも言える。

今年初ではないが、近年加わった「負傷者後送」の場面だ。防弾ベストの背面にあるハンドルを掴み、負傷した隊員を後方に下げ、さらに簡易タンカに載せて救助のCH-47まで運んでいく。近年、自衛隊は衛生器材の充実を図っており、危機感の高まりを強く感じさせる(写真/筆者)

平和と安定は一国だけでは実現できない

また、降下訓練始めは防衛大臣が参加することが恒例となっている。今年も小泉新次郎防衛大臣が習志野を訪れている。大臣が迷彩のジャケットを着用するのは例年通りだが、小泉大臣は空挺団員だけに許されている海老茶色のベレー帽を被り、隊員との一体感を演出していた。大臣はまた、諸外国空挺部隊が参加したことについて「平和と安定は一国のみでは実現できない」とし、多国間協調の重要性を説いている。

海老茶色(マルーン色)のベレーを被り、記者会見に臨んだ小泉防衛大臣。左胸には防衛大臣を示す5つの桜のワッペンが取り付けられている。なお、海老茶色のベレーは多くの国で空挺部隊のシンボルともなっているもので、第1空挺団も昨年3月に導入した(写真/筆者)

パラシュート降下は中止となったものの、インド太平洋諸国や欧州との連帯をアピールした今年の降下訓練始めは、日本を巡る安全保障環境がますます厳しくなるなか、大きな意義があったと言えるのではないだろうか。

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