A:「Re30 スカイラインシルエット」/日産愛知自動車大学校 自動車整備・カーボディーマスター科 3年生製作
Aは、日産愛知自動車大学校の学生が制作したスカイライン。1980年代に活躍したレースカー「シルエットフォーミュラ」をイメージしてカスタムしたものだが、ベースとなっているのは4ドアのHR30型。これを、いかに2ドアクーペのシルエットフォーミュラ・スタイルを再現するかがポイントとなった。

ボディワークにおける白眉は、FRP(繊維強化プラスチック)を駆使したワイドボディと、開閉可能なリアドアの両立だ。左右で約9cmずつ拡大されたリヤフェンダーが目を惹くが、リヤドアも開閉可能となっているのがキモ。干渉なくスムーズにドアを開閉させるため、切り分けとチリ合わせには綿密な調整が施された。ワイド化に合わせてテールライトを最外縁まで移設しているのも見逃せないが、これは車体の内側部分を鉄板で延長して実現したもの。また、25層ものFRPを積層して高い強度を持たせたリヤウイングもド迫力だ。さらに細部へのこだわりは枚挙にいとまがなく、フロントフェンダー部のリベットは、下地を整えた上からさらにFRPを被せて穴を開けるという手間をかけ、本物に近い質感を追求している。


派手な外装の一方で、内装はあえて純正の状態を維持する方針が採られた。当時の「昭和レトロ」な雰囲気を大切にするため、長年蓄積した汚れを徹底的に洗浄して輝きを取り戻したシート、その色調に合わせて栄和産業の協力によって新調されたカーペットが、懐かしい時代の空気を蘇らせている。

製作期間は10月に開始してからわずか2.5ヶ月というハードなスケジュールだった。巨大なウレタンフォームから原型を削り出すフロントバンパーの造形や、粉塵にまみれながらのFRPの面出し作業など大きな負荷がかかる工程があったものの、学生同士のサポートや教員の協力により、完成に漕ぎ着けることができたそうだ。
B:「MARCH Eloura」/日産京都自動車大学校 自動車整備・カスタマイズ科 4年生製作
Bは日産京都自動車大学校の学生が製作した「MARCH Eloura」。こちらのベース車両は2期生が製作したカスタムカーの「イタルマーチ(K13型マーチ)」。保管スペースの都合で廃車の対象となった先輩の作品を「自分たちの手で活かせないか」と考え、学校裏で眠っていたダットサン ブルーバード(312型)の意匠を重ねることで、新たな価値を宿らせた。

掲げられたキャッチコピーは「時代を超えて輝く一台」。デザイン性と走行性能の両立を目指して、ブルーバードが持つクラシックな佇まいと、「イタルマーチ」から受け継いだマーチNISMO用HR15DEエンジン、5速MTによる軽快な走りを同時に成立させる狙いだ。
フロントまわりは312型ブルーバードから型取りを行い、フェンダーやボンネットをFRPで新造。それらをマーチ側のパネルと溶接し、継ぎ目を丹念に処理することで、元来一体であったかのようなラインを成立させている。サイドではフロントからリアまで水平に通るプレスラインを新設し、ドア後端を延長加工して全体の流れを整えた。

リアセクションも大規模な改変が施されている。ブルーバードのリアパネルをマーチのボディに溶接し、リアガラスも純正品を流用。トランクやフェンダー周辺はFRPで形状を作り直した。構造が大きく変わりながらも、トランクの開閉機構は維持されているあたりがお見事だ。


カスタマイズ科では初となるメッキ塗装への挑戦もトピックだ。専門企業の協力を得て講習を受け、学生自身が工程を学んだ。その成果は、フロントグリルやフェンダーミラー、ドアハンドル、テールレンズフレーム、リアバンパーといったパーツに見て取れる。
ボディカラーには、学生が考案したオリジナル色「スカイミラージュ」を採用した。青空を背景に雲が流れる情景をイメージし、ボディ下部をブルー、ルーフからピラーをパールホワイトとするツートーンで構成している。
内装は20代から30代の女性を想定し、白を基調としたレトロな世界観でまとめた。ダッシュボードは一度取り外して塗り分けを行い、シートカバーは学生のデザイン案を基にサンショウが製作を担当した。

C:「Sunny Skyline」/日産京都自動車大学校 自動車整備・カスタマイズ科 4年生製作
Cは日産京都自動車大学校が手掛けたもう一台のカスタムカー「Sunny Skyline」で、ベースとなったのは京都校に長年保管されてきたB10型サニー。同校の1期生がSR20エンジン換装やロールケージ装着まで手がけた車両で、9期生がそのバトンを引き継ぎ、今回のプロジェクトが動き出した。

外観でまず目を奪われるのは、通称ハコスカとして知られる3代目スカイラインを移植した大胆なフロントフェイスだ。かつて4期生が手掛けたハコスカに端を発しており、B10サニーの車幅に合わせたアレンジが加えられている。
また、足まわりにはシルビア系のコンポーネントがすでに組み込まれていたが、今回、大幅なボディ拡幅のために学生たちは発泡ウレタンで原型を削り出し、FRPで片側約200〜250mmにおよぶワイドオーバーフェンダーを自作した。製作工程の中でも、最も手間と時間を要したのがこの部分だという。

ボディは既存色ではなく、考案した学生の名にちなんで「トーマレッド」と名付けられたオリジナルカラーでオールペイントされた。狙ったのは落ち着きのある赤で、微量のパールを加えた配合とし、鉄板への試し塗りを繰り返しながら調整を重ねている。自然光の下での見え方を何度も確認し、時間帯や光源によって表情が変わる深みのある色調に仕上げられた。

内装は、着手時点で何もない状態からのスタートだった。そのため、ダッシュボード周辺を含め、学生たちがイチから構築している。レトロな雰囲気を強めるため、木目調ではなく実際の木材を加工したウッドトリムを採用した点が象徴的だ。一方でタッチパネルを組み込み、現代的な要素も加えている。メーター類にはパルサー用を流用した。

製作が始まったのは2025年度の初夏で、完成までに要した期間は約半年。次なる舞台として、大阪オートメッセへの出展が予定されている。会場では現状からさらに手が加えられた姿が披露される予定というから楽しみだ。
