水没からクルマを守るタジマコーポレーションの新提案
この10~15年くらいだろうか、地震に台風、大雨など、日本各地で異常気象による災害が続いている。
筆者が小学生の頃だって家の庭や道路が冠水に近いことが起きることはあったが、いまほど頻発していなかった。
三重・四日市市の地下駐車場で274台の車両が水没した災害は記憶に新しい。
筆者もよく新宿の地下駐車場を利用し、雨の日に置くこともあるが、あのような事態を想定したことはなかった。
これは地下駐車場のケースで、ちょっと前例が思い浮かばない災害事故だが(見ようでは人災でもある)、地上では住宅が流される例もあり、最近じゃあ家屋周辺に頑丈な支柱を埋め、その支柱と家屋をチェーンでつないで洪水でも流されないようにする研究も行われている。
その駐車場版とでもいうべき技術を、タジマコーポレーションが東京オートサロン2026会場でブース展示していた。
「フローティングフロア」。
名のとおり「浮く床」だ。
あたり前だが、クルマのメカ内部や室内にまで水が入り込むと、そのクルマは2度と使えなくなる・・・それがクルマの水没だ。
だったらそうなる前にクルマごと浮かせちまえというのがこのフローティングフロアだ。

仕組みは簡単。
駐車スペース分の面積を持つ発泡スチロール製のフロアを、駐車場地面に埋め込むのである。
そのフロアサイズは長さ×幅×高さ=6.1×2.58×0.28m。
発泡スチロールを埋めるだけなら自分でもできそうだが、屋外で使う、それも重量物であるクルマがその上で動くのだからそのままというわけにはいかない。
発泡スチロールには特殊なコーティングが施されている。
これはポリウレア樹脂を用い、軽量、高強度、高耐水性、衝撃吸収性を持つ新構造「モナルテ」を持つコーティングだ。

もっとも、浮いたところでその後どこかへ流れてしまうのではクルマを守ることにはならない。
フロアは地面に打たれた、流出防止杭と呼ばれる2本の支柱を通して埋められており、フロアが浮いても漂流してしまうことがないようになっている。
したがって、支柱の高さ-フロア厚み28cm分の水量までなら浮いてもその場にとどまることができ、支柱をさらに長くすれば、より大量の水がやってきても耐えられることになるのだろう。



フロアの重量は、造りにもよるようで100~200kgという。
しかし、それよりも読者のみなさんが気にするのは、浮かせることができるのはどれくらいの重量のクルマまでなのかということと耐久性だろう。
発泡スチロールもやるもんだ。
驚くなかれ、何と3000kg=すなわち3トンまでの重量なら浮かせることができるというから頼もしい。
トヨタのクルマをざっと眺めまわしたところ、ハイエースコミューターGLのディーゼルが2240kgだし、全長5m超のグランドキャビンの4駆が2150kg、ランクル300のいちばん重いモデルでさえ2550kgで、3トンを超えるのは(フローティングフロア寸法を超えるが)バスのコースターくらいのものだったから、まあ一般的な乗用車ならまずクリアできる道理だ。
ということは、フロア重量も含めて3100~3200kgもの重量物を浮かせるわけだから、水の持つ浮力はあたらめて考えるとすごい。
耐久性は、一概にはいえないがざっと10年だという。
ただし、タイヤ交換時にクルマを持ち上げるジャッキによる力の1点集中には弱いし、車庫で行なうひとはいないだろうが、タイヤスリップなどの擦れにも弱いから、そのあたりは意識する必要がありそうだ。

このフローティングフロアはクルマを冠水から守る一心で造り上げたものだが、タジマコーポレーションは、このモナルテ技術をボート、桟橋、水上レストランなどに提供していこうと考えているという。
このフローティングフロアが一般家庭や街の駐車場に普及することで、愛車を水没で失う悲しみが少しでも減らせればいいと思う。
いままでは相手は自然災害だからとあきらめるしかなかったのがまた悲しかったのだから。
