連載

内燃機関超基礎講座

独特のサウンドで世界を虜にさせた稀代の和製V10エンジン

2009年に発表され、2010年12月から生産されたレクサス・ブランドのスーパースポーツカー“LFA”専用の心臓として開発されたエンジン。日本の市販乗用車用エンジンとしては初の、そして唯一のV型10気筒ガソリンエンジンである。

F1マシンなどレーシングマシンのスペックに基づいているため、アルミ合金のみならずマグネシウム合金やチタニウム合金さえもが用いられており、多くのV型8気筒エンジンよりもコンパクトに仕上がっている。

等間隔爆発とするためと車両搭載性、Vバンク内への各気筒独立スロットルの設定、排気マニフォールドの等長化、エンジン・サウンドといった各面からの検討の結果、Vバンク角は72度に設定された。

当然のように、潤滑方式は高い旋回Gを受けても安定したオイル供給が可能であり、オイルパンを薄くしてエンジンの取り付け位置(重心)を下げるメリットもあるドライサンプを採用。

吸・排気バルブとスイング式ロッカーアームはチタン合金製で、それぞれ摺動面の磨耗対策としてDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)コーティング処理が施されている。まさに量産車のためのレーシングエンジンである。

潤滑方式はドライサンプ式。右バンク側にメインのスカベンジポンプとオイルポンプ、左バンク側にシリンダーヘッドとチェーンケースのオイルを吸うスカベンジポンプを取り付けた。オイルタンクはバルクヘッド右側に設置。低重心化とオイル攪拌抵抗の低減が主な狙いである。

アクセルペダルを踏み込んだ際のレスポンスを高める手段が各気筒独立スロットル(写真はスロットルを閉じた状態)。サージタンクの前にスロットルを置く場合と比較すると、サージタンク容量分の応答遅れを解消できる。量産車に適用する際の手法が確立されていなかったので開発に苦労を重ねた。

“トヨタの式年遷宮”を見越してニュルに挑んだLFAと1LR-GUE

2014年ニュルブルクリンク24時間耐久レースにSP-PROクラスからエントリーしたレクサスLFA “コードX”。
コードXのエンジンは同じ1LR-GUEが搭載されるが、排気量は4.8Lから5.3Lへとボアアップされた特別仕様である。

2010年の市販モデル発表よりも前から、1LR-GUEを搭載したLFAは開発の一環としてニュルブルクリンク24時間耐久レースへの参戦を開始していた。

2008年と2009年は発表前のため車名はハイフンつきの「LF-A」としてエントリーし、08年は総合121位、09年は2台のうち1台がリタイヤ、残る1台は総合87位でフィニッシュした。

2010年シーズンになると車両は市販モデルベースとなり、車名も「LFA」に改められてニュル24時間に参戦し続け、そして2014年には改良型が投入された。前年から改良されたSP8クラス仕様のLFAとは別に、大型化されたボディ、フルカーボンフレーム、そして1LR-GUEの排気量を5.3Lまでボアアップしたスペシャル仕様である「LFA コードX」を新たにSP-PROクラスに投入した。

前述のとおり、LFA コードXはエンジンをはじめ市販仕様のLFAにない技術を多数投入したモデル。当時、トヨタはこれを「将来のための先行開発モデル」という位置付けで送り出していた。

また、2014年当時のリリースにはこう記されている。

「トヨタ/レクサスのスポーツモデルは、約20年サイクルで登場しているが、豊田章男社長(※編集部注:当時の役職)は「トヨタのスポーツカー開発は“式年遷宮”かのごとく20年に一度、技術の伝承を含めてスポーツカーを開発してきました」

「しかし、20年に一度開発すればいいということでなく、コードXの投入が20年先を見ながら毎年毎年より技術を深めていくためのスタートになります」。

式年遷宮という言葉は、ちょうど25年12月にワールドプレミアされたトヨタGR GTの発表会で豊田章男氏が自ら述べた言葉でもある。GR GTはまさにLFAの後継ともいえるトヨタ/レクサスのフラッグシップスポーツカーだが、このコードXもまさに「クルマづくりの秘伝のタレを次代に継承する」ことを意識したマシンの一部であったことが窺える。

そんな2014年にはチームとして3台体制を敷く中で2台のLFAがニュルに送り出され、ついにクラス優勝を成し遂げる。2008年から開始した参戦7年目にして掴んだ快挙であった。

2015年はLFAと1LR-GUEにとって、ニュル24時間レースのラストイヤーとなったが、LFAはコードXの1台を送り出した。決勝ではマシントラブルに見舞われながらも無事SP-PROクラス優勝の座を防衛。多くの人を魅了したLFA、そして1LRエンジンは有終の美を飾った。

トヨタ/レクサス 1LR-GUE 主要スペック

エンジン型式:V型10気筒
排気量:4805cc
ボア×ストローク:88.0×79.0mm
バンク角:72度
圧縮比:12.0
最高出力:412kW/8700rpm
最大トルク:480Nm/7000rpm
吸気方式:NA
カム配置:DOHC
ブロック材:アルミ合金
吸気弁/排気弁数:2/2
バルブ駆動方式:ロッカーアーム
燃料噴射方式:ポート内燃料噴射
VVT:In-Ex/◯-×
VVL:In-Ex/×
(LFA)

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