
幼少期に憧れた車種のことは大人になってからも忘れないもの。いつか手に入れようと思えば仕事も頑張ることができる。クルマ好きなら誰しもこんな思い出があるのではないだろうか。今回取材できたミニカとオーナーである道畑雄介さんから聞けたお話しからも、幼少期の憧れが原動力だったことがわかった。近年では若者のクルマ離れが話題になることが多いものだが、道畑さんは現在34歳と若い。実はクルマ離れは都市部だけのことで、実際には相当数の20代30代が旧車に目を向けているのだと実感させられた。

しかも道畑さんは「一番好きな360cc車でした」とサブロク軽自動車であることを強調している。つまり、小型車や普通車にも同じような憧れの存在があることだろう。そして道畑さんが根っからの乗り物好きであることを示すように、ミニカ以外にもスズキSW-1とチョイノリ、ホンダ・スーパーカブにリジッドモンキーのレプリカ車といったバイクを複数台所有されている。所有車を見る限り、とても30代の趣向とは思えないほどなのだ。

初代ミニカは商用車である三菱360をベースに4人乗りの乗用車へ仕立て直され1962年に発売された。空冷2気筒2サイクルエンジンをフロントに搭載し、後輪を駆動するFR車だったことも特徴。その後初代ミニカは1969年に2代目へモデルチェンジするまでの7年間販売された。とはいえ34歳の道畑さんが生まれるより前のことで、現役時代を知る世代ではない。やはり乗り物が好きで各種雑誌やインターネットでの情報に触れたことがきっかけだろう。

以前からバイクを通してメンテナンスや修理には慣れていたことも、自分より24歳も年上のクルマを手に入れるには欠かせない素養であることだろう。道畑さんがこのミニカを見つけたのは旧車専門店ではなく、なんとアメリカ車を扱う中古車店。少々の不安はあったものの、納車までにしっかり整備してほしいと伝えていた。契約したのは2025年2月なのだが、やはり購入したお店は苦労したのだろう。納車されたのは6カ月後の8月になってからだったそうだ。

念願のミニカだったので納車されたその日から夢中になってドライブを楽しんだ、とはいかなかった。走り出すとすぐに止まることを繰り返し、お店任せにしたことを少々後悔された。そこでバイクで磨いた腕を活かしてエンジン関係を中心に自らメンテナンスを急いで施すことにした。

というのも、道畑さんは手に入れたミニカで夏の北海道を旅することが目標だったから。実にメンテナンスを繰り返すこと2週間、無事に北海道へ上陸することができたそうだ。それはそれは楽しい旅だったことだろう。バイク乗りにとって北海道ツーリングは夢のまた夢。おそらくバイクで走った経験があるのだろう。けれど、2サイクルエンジンの小さなサブロクで走るのでは、バイクとは違った楽しみ方になったはずだ。

北海道の旅を満喫して帰路につくが、自宅まで600キロの時点でミニカは止まってしまう。実に無念だったことだろう。ミニカはレッカー車のお世話になって自宅まで戻ることになった。それからもエンジンのメンテナンスに明け暮れ、現在では不安はあるものの走らせることにある程度の自信が生まれたそうだ。

というのも、今回取材したイベントは茨城県水戸市で開催されたもの。道畑さんが住んでいるのは埼玉県さいたま市であり、決して近いわけではない。高速道路の走行が基本になるわけで、整備状況に自身の持てない旧車なら参加しようとは思わない距離感。それでも「なんとか無事に辿り着けました」と臆することなくお話ししてくれた。

そのエンジンを見てみると初代ミニカは空冷というイメージが強いのだが、なんと水冷になった2G10型2サイクル2気筒エンジンが搭載されていた。1968年10月に追加発売されたスーパーデラックスには水冷エンジンが採用されたのだ。2代目になったミニカ70でも空冷と水冷の両エンジンがラインナップされたが、時代はすでに水冷が主流となっていく。新開発した2G10型を最初に採用したのが、このスーパーデラックスだった。筆者も同じエンジンを搭載する車種を所有しているので関心深く見てみるとラジエターにサブタンクを追加したり、コード類を刷新したりと、しっかりメンテナンスされてることが伺えた。

