連載

自衛隊新戦力図鑑

武器輸出を禁止する法律は過去も現在も存在しない

まず、日本の武器(防衛装備)の輸出について、経緯を振り返っておきたい。そもそも、日本が海外に武器を売ってはいけないという法律は存在したことはない。1967年に日本政府は「武器輸出三原則」を示したが、これは法律ではなく、「政府としてこの方針でやっていきます」というものだ。また、その内容も「(敵である)共産主義国や、紛争当事国には売りません」でしかなかったのだが、日本製銃器が海外のテロ組織に使用された事件などを受けて、「臭いものにフタ」的に全面禁輸の雰囲気になっていく。

アメリカ製の自動小銃AR-18/180。日本の豊和工業のもとでも生産されたが、輸出されたものが海外の過激派やテロ組織に渡り、使用されてしまった(写真/パブリック・ドメイン)

大きく方針が転換されたのが2014年の「防衛装備移転三原則」だ。ここで示された新たな三原則は以下のようなもの。

①紛争当事国には輸出しない。
②輸出は「平和貢献・国際協力の推進」や「日本の安全保障に資する」場合に限る。
③ちゃんと管理できる国に限る(勝手に他国に転売するような国には輸出しない)。

改めてルールを明確化し、“お気持ち禁輸”状態を改めようとしたわけだ。

だが、ここで「5類型」という新たな壁が作られる。当時、与党だった公明党が武器輸出に難色を示したことから、「防衛装備移転三原則」の「運用指針」として完成品の輸出は「救難・輸送・警戒・監視・掃海」に制限するとされ、実質的な禁輸状態が継続することになってしまったのだ。

「国際共同開発」は例外として認められている。特に戦闘機はハイテクの塊であり、莫大な開発費を一国で賄うことが難しい。日本はイギリス・イタリアと次期戦闘機計画GCAPを進めている(写真/筆者)

一方で兵器のハイテク化による開発費の高騰などを理由に、運用指針では「国際共同開発はOK」というルールも設けられたが、これが輸出の「抜け穴」として利用されるようにもなる。2025年8月、オーストラリアは次期フリゲートとして日本提案の艦艇の導入を決定した。合計11隻の建造が予定されており、戦後初の大規模武器輸出として話題になったが、これは「輸出」ではなく「共同開発」というタテマエになっている。また、中国の海洋進出に苦しむフィリピンの求めに応じて、旧式護衛艦「あぶくま」型の輸出が検討されているが、これも「共同開発」というタテマエだ。

現在、政府・自民党が「5類型」の撤廃に向けた動きを進めている。これは現在の「抜け穴」的運用を改め、いまいちど「防衛装備移転三原則」の趣旨に沿った運用に立ち返ろうとするものといえるだろう。

護衛艦「あぶくま」型は1989年に1番艦が就役した古い護衛艦で、退役が決定していた。しかし、中国の海洋進出に直面しているフィリピンへ「共同開発」という体裁での輸出されることなった(写真/海上自衛隊)

日本が平和に責任を果たす時代になった

では、どうして武器の輸出・移転をする必要があるのか? いくつか理由はあるが、日本をとりまく世界の環境が大きく変化していることは大きいだろう。ロシアによるウクライナ侵攻や、米トランプ政権の覇権主義的な言動など、平和を支えてきた国際的なルールが機能不全に陥り、平和な世界が揺らいでいる。カナダのカーニー首相は今年1月に「世界秩序の断絶、美しい物語の終焉、そして残酷な現実の始まり」と、不可逆的な時代の変化について演説した。

武器輸出をすると「平和国家としての信頼を損なう」という意見がある。だが、平和のイメージで見られがちな北欧諸国やスイスも武器輸出が盛んだ。陸上自衛隊が最近導入したAMV装甲車はフィンランド製だが、フィンランドを「戦争国家だ!」と罵る人はあまり見たことがない(写真/筆者)

こうしたなかで、日本はこれまで以上に同盟国や友好国との防衛協力を強める必要があり、武器の輸出・移転はそのための重要なツールとなる。それを正しく行なうためのルールが「防衛装備移転三原則」の規定だといえるだろう。

ロシアによる侵略が続くウクライナは、たびたび日本に防空ミサイルの提供を求めている。ロシアの都市爆撃で多くの市民が犠牲になっているからだ。武器輸出で「日本の武器が他国の子供を殺す」との主張があるが、いま殺されている子供を助けることができるのも武器なのではないだろうか。

改もがみ型護衛艦、オーストラリア輸出が決定! 背景にある武器輸出の“カラクリ”とは | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム

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