ホンダCB400RフォアEクラッチ……1,199,000円

兄弟車のスーパーフォアより20万円ほど高いものの、CBR400RフォアEクラッチの価格は、市場でライバルになりそうなカワサキZX-4R・RRとほぼ同じ。ボディカラーはシルバーとブラックの2種を準備。

レーサーレプリカ世代の手厳しい意見

ニューモデルの試乗記で冒頭からこんなことを言うのは何だけれど、ホンダが2026年9月から発売を開始したEクラッチを装備する兄弟車、CBR400Rフォアと新世代のCB400スーパーフォアに関して、少し前に友人Aと話をしていたら、なかなか手厳しい意見が出てきた。

2023年からカワサキが販売しているZX-4R・RR。価格は117万7000円・121万円。

「先代の資質を継承するっていう意味で、スーパーフォアはすごくいいと思う。でもフルカウル車のほうは、カワサキのZX-4R・RRっていうライバルが存在するんだから、もっとレーシーなルックスで、最高出力は80ps以上で、車名はCBR400RRにするべきじゃない?」

レーサーレプリカではないものの、1988年から発売が始まったCBR400RRは抜群の運動性を備えていた。フレームはアルミツインスパーで、並列4気筒エンジンはカムギアトレインを採用。

ちなみに、Aはレーサーレプリカ全盛期の1980年代にバイクに目覚めたライダーで、かつてはF3キットを投入した1989年型CBR400RRを愛用していた。

そしてそういうライダーの視点だと、CBR400Rフォアのスポーツツアラー然としたルックスと58ps/11500rpmの最高出力(ラム圧過給時のZX-4R・RRは80ps/14500rpm)に、不満を感じるのはわからないでもない。

とはいえ、9月に開催された試乗会でCBR400Rフォアを体験した僕は、ぜひともAに最寄りの販売店に出かけて、このバイクを見て、乗って欲しいと思った。外観がレーシーではなくても、最高出力が控えめな設定でも、CBR400Rフォアは相当に魅力的なバイクなのだから。

クールで都会的な雰囲気

まずはルックスの話をすると、このバイクがレーシーではない外装を採用した理由は、同時開発したCBR500Rフォアの主要市場となる、中国の若者の趣向の多様化を意識してのことらしい。

とはいえ、ホンダがメインターゲットに設定していない日本のオッサンである僕の視点で見ても、このデザインは大いにアリだと感じた。

前述したように試乗前の僕はCBR400Rフォアに対して、スポーツツアラーというイメージを抱いていたのだけれど、実際のCBR400Rフォアはクールにして都会的で、スポーツツアラーという言葉から連想しがちな重厚さは微塵もない。

誤解を恐れずに言うなら、他のCBRシリーズ以上の高級感を備えているようにも思う。

CBR400Rフォアと新世代のスーパーフォアのEクラッチは、この機構を採用する既存のモデルより制御が緻密な印象で、どんな場面でもスムーズで気持ちのいいギアチェンジが行えた。Uターンでの気遣いも少なくなったように思う。

ただし前述したように、CBR400Rフォアは新世代のスーパーフォアの兄弟車で、外装以外の2台の相違点はエアクリーナーボックスやマフラー、インジェクションマップ、ハンドル、シート、シートレールくらい(驚くことに、足まわりはセッティングも含めてまったく同じ)。

となれば、乗り味も似たようなものだろうと思いきや、意外なことにCBR400Rフォアは、スーパーフォアとは似て非なるキャラクターを構築していたのだ。

ロングランが快適にこなせそう

もっとも、走り始めて5分で勝手知ったる愛車のように扱える驚異的なフレンドリーさや、あらゆる領域で従順な反応を示してくれるパワーユニット、並列4気筒ならではの高回転域のシャープで軽快な吹け上がりが気軽に堪能できることなどは、少し前に当サイトに試乗記をアップした新世代のスーパーフォアと同様である。

では何が違うのかと言うと、僕が最初にオッと思ったのはライディングポジション。

シート高は新世代のスーパーフォアと同じ780mmなのに、セパレートタイプのハンドルや前後長が短いガソリンタンク、軽量なシートレールなどの効果で前輪荷重が上がっているからか、CBR400Rフォアは程よい塩梅で着座位置が高く、シートとステップの距離が広がっているように感じるのだ。

CBR400Rフォアと新世代のスーパーフォアが搭載する並列4気筒は、ボア×ストロークが55×42mm。中国仕様の500ccモデル(60×44.4mm)とは異なる数字だが、比率はほぼ同じ、500:0.740、400:0.763。なおカバー以外をシルバーとしたスーパーフォアとは異なり、CBR400Rフォアのエンジン外観はブラックで統一。

そして市街地を走り始めると、CBR400Rフォアのハンドリングとエンジンフィーリングは意外にしっとりしていて、その特性を認識すると、スーパーフォアはちょっとヤンチャだったような気がしてくる。

そういったキャラクターとフェアリングの防風性能を併せて考えると、生粋のスポーツツアラーではなくても、このモデルは兄弟車よりロングランを快適にこなせるだろう。

兄弟車を凌駕する資質

ただし、市街地を離れてさまざまな場面を走った僕は、CBR400Rフォアが真価を発揮するのはワインディングロードだと思った。

と言うのも、このモデルはスーパーフォアと比較すると、エンジンの高回転域の伸びが明らかに鋭く、コーナー進入時にフロントまわりから伝わってくる接地感が格段に濃厚なので、スポーツライディングがムチャクチャ楽しいのだ。

2種類の吸排気系は、上段がCBR400Rフォアで、下段はスーパーフォア。高回転域のパワーやシャープな吹け上がりを重視するCBR400Rフォアはツインラムエアシステム、低中回転域における抑揚に富んだ特性を意識したスーパーフォアは不等長インテークダクトを採用。

その感触の理由は、吸排気系とインジェクションマップ、そして前輪荷重だと僕は思ったのだけれど、ちょっと解せない気がしないでもない。

何と言っても、CBR400Rフォアの最高出力と最大トルクはスーパーフォアと同じだし、フロントまわりの接地感に関しては、前輪荷重だけでそこまで変わるのか?というレベルなのだから。

フレームのメイン部の構成は同じでも、シートレールの構成は各車各様で、後部の重量はCBR400Rフォアのほうが軽い。

そこで、試乗後に開発陣に話を聞いてみると、カタログデータの最高出力と最大トルクはパワーユニット単体での計測値で、吸気系の抵抗が少なくて高回転域でラム圧がかかるCBR400Rフォアのエンジンは、車載状態ではスーパーフォアよりパワーが出ているとのこと。

そして濃厚な接地感には、走行風を整流するフェアリングの空力性能もかなりの影響を及ぼしているそうだ。

なお峠道を走っている最中、脳内でカワサキZX-4R・RRとの比較を行った僕は、公道ならこっちのほうが速いかも……と思った。

と言うのも、速く走るためには頑張って高回転域をキープしなくてはならないZX-4R・RRとは異なり、CBR400Rフォアは特に意識をしなくても、エンジンのオイシイ部分を普通に使えるのである。

もちろん、国際規格のサーキットで競争するとなったら、ZX-4R・RRのほうが確実に有利だろう。でも一寸先は闇の公道では、最高出力の差を感じる場面はあまり多くなく、その一方でCBR400Rフォアの驚異的な扱いやすさをありがたく感じる場面が少なくないように思う。

チョイ乗りでは美点がわかりづらい?

そんなわけでCBR400Rフォアにかなりの好感を抱いた僕だが、レーサーレプリカ全盛期にバイクに目覚めた友人Aが、販売店周辺だけの試乗で僕と同様の気持ちになるのかと言うと、それは微妙かもしれない。

逆に言うならこのバイクの美点は、ある程度の時間をかけて、さまざまな場面を走らないとわかりづらいような?

だからAのようなライダーを惹きつけるモデルとして、中国市場で販売しているCBR500Rフォア(最高出力は71.8ps/1100rpm)も日本に導入するべきではないかと僕は思ったものの……。

そうすると日本人のために400cc仕様を作ってくれた開発陣の心意気を否定するみたいだし、前述したエンジンのオイシイ部分を普通に使える感は400ccならではという気がするし、そもそも日本市場で500ccに注目するライダーは多数派とは言い難いので、なかなか難しいところである。

CBR400Rフォアと新世代のスーパーフォアの外装部品は完全な別物。スーパーフォアを基準にするなら、CBR400Rフォアのテールはかなり跳ね上がっている。

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)

ハンドルはセパレートタイプで、シートはスーパースポーツ的なデザインだが、CBR400Rフォアの乗車姿勢にスパルタンな気配は無い。スーパーフォアと比較するなら、ハンドルがちょっと低くて狭く、着座位置がわずかに高くて前方……という印象である。なおステップ位置はスーパーフォアとまったく同じだが、違和感は抱かなかった。

ディティール解説

フロントマスクは、既存のCBRシリーズとは異なるデザイン。ツインラムエアシステムの吸気口は、ヘッドライト下部の目立たない位置に設置。
セパレートハンドルのクランプ位置はトップブリッジ下だが、バーの位置は高め。グラマラスな雰囲気のガソリンタンク+カバーは、スーパーフォアとは完全な別物。
5インチTFTディスプレイと左右スイッチボックスは、近年のホンダの定番品にしてスーパーフォアと共通。
前後分割式のシートは、スーパースポーツ然とした構成。タンデムシートはキー操作で取り外せるが、メインシートは2本のボルトで固定。
タンデムシート下部にはETC車載器を意識したスペースが存在するものの、荷物の積載は考慮していない。
ホンダにとって久しぶりの新設計となる400cc並列4気筒エンジンは、サイドカムチェーンやクランク/ミッションメイン/ミッションカウンターシャフトの三角形配置など、現代の定番的な技術を採用。かつてのスーパーフォアと比較するなら、エンジン単体で約5.4kgの軽量化を達成。
どんな場面でもコントローラルなブレーキは、フロント:φ296mmディスク+ラジアルマウント式対向4ピストンキャリパー、リア:φ240mmディスク+片押し式1ピストンキャリパー。φ41mm倒立フォークとリンク式モノショックの設定は、CB400スーパーフォアとまったく同じ。
近年のアンダー400ccクラスはタイヤにコストダウンの気配を感じることが少なくないものの、CBR400Rフォアと新世代のスーパーフォアは、2021年に登場し、現在の視点でも十分なスポーツ性を備えるピレリ・ディアブロロッソⅣを選択。

主要諸元

型式:8BL-NC70 
全長×全幅×全高:2055mm×760mm×1125mm 
軸間距離:1405mm 
最低地上高:135mm 
シート高:780mm 
装備重量:187kg 
キャスター/トレール:25°/98.4mm 
エンジン形式:水冷4ストローク並列4気筒 
弁形式:DOHC4バルブ 
総排気量:399cc 
ボア×ストローク:55×42mm 
圧縮比:12.3
最高出力:43kW〈58PS〉/11500rpm 
最大トルク:38N・m〈3.9 kg-f・m〉/9750rpm 
燃料供給装置: フューエルインジェクション 
始動方式:セルフスターター 
点火方式:フルトランジスタ 
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング 
ギアレシオ 
 1速:3.286 
 2速:2.105 
 3速:1.600 
 4速:1.300 
 5速:1.150 
 6速:1.043 
1・2次減速比:2.273・3.067 
フレーム形式:ダイヤモンド 
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ41mm 
懸架方式後:リンク式モノショック 
タイヤサイズ前:120/70ZR17 
タイヤサイズ後:160/60ZR17 
ブレーキ形式前:油圧式ダブルディスク 
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク 
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン 
燃料タンク容量:15ℓ 
乗車定員:2名 
燃料消費率WMTCモード値:23.1km/L(1名乗車時)