スクーターなのに“スクーターらしくない”!【1990年 ホンダ・ズーク】

スケートボードをイメージした低いフロアに、自転車のような独立シートを組み合わせたズーク。1990年当時のスクーターとは明らかに違う姿だった

HONDA ZOOK|1990年発売

ズークの原型は、1989年の第28回東京モーターショーに参考出品された「MS50」。高付加価値化が進んでいたスクーターとは違う方向から、二輪車の原点に立ち返って「乗って楽しく」「見て楽しく」を追求したモデルとして、翌1990年(平成2年)に市販された。

最大の特徴は、やはりそのスタイル。低いフロアはスケートボードをイメージしたもので、そこから細いハンドルポストとシートポストが立ち上がる。シートも一般的なスクーターのベンチタイプではなく、自転車を思わせる独立式。大きなレッグシールドやシート下収納を備えることが当たり前になりつつあった時代に、ズークは必要なものだけを残したような姿で登場した。

エンジンは、49cc空冷2ストローク単気筒で、最高出力3.3ps/6000rpm、最大トルク0.45kgm/4500rpm。車両重量はわずか43kgだった。パワーを競うスポーツスクーターとは対極にあり、細い路地や街中を気軽に走る“原付タウンビークル”という狙いがはっきりしている。

広告キャラクターには所ジョージさんを起用。ズークの自由で肩の力が抜けたキャラクターと、所さんの存在感は相性抜群だった。

シートもタイヤも普通じゃない! 細部までズーク流

独特なのは外観だけではない。シート高は800mmと770mmの2段階に調整でき、体格に合わせて選択可能。降車時にはシート部分へヘルメットを載せ、ヘルメットホルダーとして使える構造も採用されていた。

足元中央にはキー付きの小物入れも用意。幅70mm、深さ100mm、奥行155mmと容量は控えめだが、写真で見ると車体中央へきれいに収められているのが分かる。燃料タンク容量も2.0Lと割り切った設定で、近距離移動を想定したキャラクターが伝わってくる。

前後タイヤは70/100-8。“足跡”を思わせる独特のパターンを持つIRC MB52が装着され、タイヤまでズーク専用の雰囲気を作り出していた。この70/100-8サイズのMB52は現在もIRCのラインアップに残っている。

車体色はメイリーフグリーン、スパークリングレッド、コルチナホワイト、ジーンブルー、ファーグレー、ファンキーブラウンの全6色。鮮やかな色から落ち着いた色まで揃い、選ぶ楽しさも用意されていた。

メーカー希望小売価格は8万9000円(税別)。便利装備を増やすのではなく、デザインと軽さ、扱いやすさで新しい原付の形を提案したズーク。今見ると、電動コミューターや小型モビリティにも通じる発想がすでに詰まっていたのが分かる。

総排気量:49cc
エンジン:空冷2ストローク単気筒
最高出力:3.3ps/6000rpm
最大トルク:0.45kgm/4500rpm
全長×全幅×全高:1400×545×1015mm
重量:43kg
シート高:800mm/770mm
燃料タンク容量:2.0L
タイヤ:70/100-8/70/100-8
発売当時価格:9万1670円(税込)

丸型スピードメーターを中心にしたシンプルなハンドル周り。表示も操作系も必要最小限にまとめられている。

足元中央にはキー付きの小物入れを装備。収納力を追うのではなく、車体デザインを崩さない範囲で実用性を持たせている。


シート高は800mm/770mmの2段階調整式。シート部分は降車時にヘルメットを載せ、ホルダーとして使える構造になっていた。

※この記事は月刊モトチャンプ2025年12月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】