ハイアップR全盛期に現れ、一気にレースの常連へ【1991年 ジョグZ】

7.0psのクランクケースリードバルブエンジンに、ブレンボ製キャリパーやスポーティなフロントフォークを組み合わせたジョグZ。ミニバイクレースでも存在感を高めた

YAMAHA ジョグZ|1991年発売

1991年(平成3年)に登場したジョグZは、四代目ジョグをベースにスポーツ性を高めたモデル。49cc空冷2ストローク単気筒エンジンはクランクケースリードバルブ吸気を採用し、最高出力はジョグとしては初となる7.0ps/7000rpmを実現した。

装備も当時の50ccスクーターとしてはかなり刺激的だ。フロントディスクにはブレンボ製対向2ポットキャリパーを組み合わせ、ライバル車とは比較にならないブレーキ力を確保。そして装備面では36個のLEDを使ったハイマウントストップランプ付きスポイラーを装備。実用スクーターとはひと味違う、“走るJOG”らしい仕立てだった。

そしてジョグZを語るなら、ミニバイクレースでの活躍も外せない。当時を振り返ると、ハイアップR勢が強かった時期に突如として現れ、トップ争いへ食い込む活躍を見せたことで一躍注目の存在に。その後はジョグZをサーキットで見かける機会が一気に増え、レースの常連マシンになっていった。

その速さを支えたポイントのひとつが、クランクケースリードバルブ吸気のエンジンだ。ピストンの位置だけで吸気タイミングが決まる方式とは異なり、リードバルブの開閉によって混合気をクランクケースへ取り込む仕組みで、吸気タイミングの自由度を取りやすいのが特徴。

ここからは当時の実体験になるが、このエンジンはとにかくパワフルだった。ノーマルでも元気だったが、チャンバーを交換して駆動系を合わせ込んだときの伸びはさらに強烈。同じ7psクラスでも、チューニング後の速さはジョグに分があったように思う。

最高出力の数字だけでは分からない“素性の良さ”があり、それがレースシーンでも支持された理由のひとつだったのだろう。

総排気量:49cc
エンジン:空冷2ストローク単気筒
吸気方式:クランクケースリードバルブ
最高出力:7.0ps/7000rpm
最大トルク:0.73kgm/6500rpm
全長×全幅×全高:1615×640×1005mm
重量:68kg
タイヤ:80/90-10/80/90-10
発売当時価格:15万6560円(税込)
※主要諸元・価格は編集部調べ

7.0psを継承しながら、見た目も細部もスポーティに【1993年 スーパージョグZ】

最高出力は7.0psを継承しながら、前後90/90-10タイヤやメッキマフラーカバーを採用。サイドモールにもダクトを思わせる造形が加わり、ジョグZ以上にスポーツモデルらしいデザインへ進化した

YAMAHA スーパージョグZ|1993年発売

ジョグZ登場からわずか2年。1993年(平成5年)にはスーパージョグZが登場する。最高出力は7.0psのままで、エンジンの基本構成もジョグZから受け継いだが、車体の見せ方や細部にはしっかり手が入っていた。

写真を見比べても、その違いは分かりやすい。ジョグZは比較的シンプルな面構成だったのに対し、スーパージョグZでは外装の造形がより立体的になり、サイドモールにはダクトを思わせるデザインを採用。ボディ全体に動きが生まれ、ひと目でスポーツモデルらしさを感じさせるスタイルになった。

フロント周りも、当時スポーツバイクで流行していた倒立フォークを思わせるデザインがポイント。マフラーにはメッキ仕上げのカバーを装着し、ジョグZ以上に“見せるスポーツスクーター”としての雰囲気が強まっている。

さらにタイヤは、ジョグZの前後80/90-10から前後90/90-10へワイド化。最高出力の数字は変わらなくても、足元の存在感は確実に増していた。

そして、見えないところにも細かな違いがある。筆者が整備していた記憶では、駆動系プーリーのスライドピースが白い樹脂タイプから黒いタイプへ変わっていた。ショップやユーザーの間では「黒いタイプの方が滑りが良い」なんて話もよく聞いたものだ。ただし、この摩擦特性についてメーカー資料での裏付けまでは確認できていないため、あくまで当時の現場で語られていた話として捉えてほしい。

たった2年でも、タイヤ、外装、細かな駆動系まで手を入れてブラッシュアップしていく。この進化の速さも、90年代スポーツスクーターらしいところだ。

そして、この流れの先には1994年末に登場するスーパージョグZRが待っている。ジョグZでレースシーンに存在感を示し、スーパージョグZでデザインや細部を熟成、そしてZRへ――。90年代ヤマハのスポーツJOGは、短いサイクルでどんどん進化していった。

総排気量:49cc
エンジン:空冷2ストローク単気筒
吸気方式:クランクケースリードバルブ
最高出力:7.0ps/7000rpm
最大トルク:0.73kgm/6500rpm
全長×全幅×全高:1625×670×1020mm
重量:70kg
タイヤ:90/90-10/90/90-10
発売当時価格:16万3770円(税込)
※主要諸元・価格は編集部調べ

※この記事は月刊モトチャンプ2025年12月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】