セルモーターは回っているのにエンジンが始動できない原因は、燃料系統、もしくは点火系に異常があることが多い。ただし、これはセルモーターによってエンジンがクランキング(クランクが回転してピストンが上下している状態)している場合。いくらセルモーターが動いていても、空回りしてクランキングできなければ当然ながら始動しない。

セルモーターがビューンと元気いっぱいに空回り!

セルモーターはモーターによりエンジンのクランクを回転させて始動する装置。始動後はセルモーターが抵抗にならないように、クランクの回転から切り離される。一部を除く4輪車のエンジンの場合、セルモーターにはマグネットクラッチという装置がついており、セルモーターの回転時のみクラッチが動作してピニオンギアが飛び出し、エンジンのクランクを回す。セルモーターがOFFになればピニオンギアがクランクから切り離され、モーターが抵抗になることがない。しかし、バイクは取り付けスペースの都合上、セルモーターにはマグネットクラッチが取り付けられていない。小型のスクーターではスプリングにより飛び出す機構のピニオンギアを備えている場合もあるが、多くのバイクにはクランク付近にワンウェイクラッチが装備されている。今回サンプルとして用意したのは8万km以上走行しているヤマハ・マジェスティS。セルモーターはビューンと元気に動いているものの、クランクが回転している様子はない。おそらくここまでの症状になる前に、セルモーターに引っかかる感触があったり、ワンウェイクラッチが滑って何度か始動に失敗しているはずだ。

駆動系のケースを開け、ドライブプーリーを取り外す。
ドライブプーリー下のケースを開けるとワンウェイクラッチが見える。
取り外したワンウェイクラッチは左右方向どちらにも軽く回ってしまうが、、、
正常なワンウェイクラッチは左方向は空回りするが右方向はギアにしっかり食いつく。

ワンウェイクラッチが取り付けられている場所は、セルモーター付近のクランクと同軸上にあることが多い。今回作業したマジェスティSは、ドライブプーリーを取り外したそのさらに内側に装着されている。クランク付近なのでまずエンジンオイルを抜いてからカバーを取り外すと、すぐに故障の原因となったワンウェイクラッチが見えた。セルモーターとかみ合うギア(スターターホイール)ごと取り外して回転させてみると、右方向にも左方向にもどちらにも抵抗なく回ってしまう。交換用に用意した正常なワンウェイクラッチを組み合わせて同じように動かしてみると、左方向には抵抗なく回るものの、右方向では下のギアをしっかり掴んでギアごと動いている。このワンウェイクラッチのおかげでセルモーターの動力をクランクに伝えているということだ。正常なワンウェイクラッチとギアを取り付け、カバーと駆動系全てを取り付けたら、エンジンオイルを満たして作業完了。スタートボタンを押したら短いクランキングで元気にエンジンが始動した。走行距離の多いバイクでセルモーターに引っかかりや滑りを感じたら、始動不能になる前に早めに修理を。ちなみに純正パーツは1万5000円くらいでした。

軽いクランキングで始動! オイル交換を含めても30分ぐらいで作業完了した。