この記事は、RE雨宮のフルエアロをまとったコンバーチブルのFD3S型 RX-7で大黒PAへ向かった、スターダストファクトリー(以下SDF)の押田さんが、ナンバープレートが垂直に装着されていないからと、神奈川県警察本部高速道路交通警察隊大黒分駐所の隊員に停められ「厳重注意」を宣告された記事の続きだ。

宣告されたSDF押田さんはこれを現場警察官の誤認による取り締まりとし、またこの誤認が続くことの問題を重くみて、各所に文書を提出することにした。

なお、前回も記しているが、この記事を書いている時点で、取り締まりの現場から謝罪があった状況であると言うことは先にお伝えする。SDF押田さんは文書での回答をお願いしており、回答があるとするとそのレスポンスに数ヶ月かかるものもあるので、それら回答の有無を含め最終的な報告したい。

くわえて、この一連の記事は、違法車両へ改造を助長するものではなく、法規制の範囲でチューニング&カスタマイズを楽しんでいこうという気持ちで書かれている。

「合法改造車が“違法”とされた日」大黒PA“無料車検”の現場で何があったのか?【ナンバー角度問題その1】

今回の記事は2回目、その後の神奈川県警察本部、神奈川県公安委員会への文書の提出、そして取り締まりの現場から謝罪などの様子を取り上げたい。

さてその前に、ここで「実際のところ自分のクルマのナンバーは対象になるの?」と心配になった読者もいるかと思うので、この法規の改正について少し書いておきたい。

実際のナンバープレートについての法規改正、新基準とは?

自動車:~ナンバープレートを見やすく表示しましょう~ – 国土交通省

https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk6_000020.html
国土交通省 ~ナンバープレートを見やすく表示しましょう~ 

上記2つの画像は、国土交通省のWEBサイトからの直接リンクで貼った画像で、令和3年4月1日(平成33年4月1日との記述があるがココでは令和3年になおしている)以降に適用される新基準をまとめたもの。注意が必要なのは、1枚目は平成28年4月1日以降、全車について禁止されるもので、2枚目の新基準については、令和3年4月1日以降に初めて登録・検査・使用の届け出がある自動車について適用されるコト(その後、令和3年10月1日以降に初めて登録等を受ける自動車に適用と、猶予期間を延長されている)。

報道発表資料:車のナンバープレートの表示に係る新基準適用までの猶予期間を延長します – 国土交通省

https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha06_hh_000119.html

そのうち改正施行以前のクルマについてのレギュレーションを確認してみよう

この改正の施行以前のクルマのほうがはるかに多いので、そのユーザーのために先に書いておくと、令和3年3月31日まで(実際には猶予期間が設定されたので、令和3年10月1日からの可能性がある)に登録・検査・使用の届出がある車両については、この法規改正のナンバー角度の数値基準の対象ではない。

難しい文章になるが、「令和3年9月31日までに登録・検査・使用の届出がある自動車については、自動車の運行中番号が判読できるような見やすい角度によること、番号を被覆せず、脱落するおそれがなく、自動車の運行中番号が判読できるフレーム又はボルトカバーを取り付けることができる」と、国土交通省のWEBサイトにもあるので、コレ以前の車両については、今回の話は対象外と思いながら読んでもらえばイイ。

ただし、車のナンバーは見やすく表示! という画像にある、ナンバーを折ったり、回転させたりといった装着方法は平成28年4月1日以降、以前の車両でも禁止されているので、思い当たる状態であれば自車を確認して是正して欲しい。

対象外といっても、それらの車両についても、以前から「自動車の運行中番号が判読できるように、見やすい位置に取り付け」という規定が存在しているので、まったく関係がないとは言い切れない。

今回、新基準適合の現行車が「見やすい位置に取り付け」について具体的な数値をともなう新基準ができて、それ以前の規制が数値的にあいまいなものであったのならば、現行の新基準に準拠したものが「見やすい位置」の数値目標となっていく可能性もあると予想できるからだ。

とはいえ、厳密に数値にあっていなければならないとされるのは、新基準適合の現行車だけだから、数値を測られてそれが新基準に適合していないから「アウト」を宣言されるのは、おかしな話になるコトもあるだろう。あくまでも「見やすい位置」かどうかが争点で、新規に設定された数値に合うか合わないかは、現状では関係がない。

今回のコトが、数値化されるきっかけになるかもしれないが、その場合、関係各省庁での調整もあるだろうし、周知期間を経ずにいきなり改正される可能性は少ないと思われる。

新基準適合のクルマについてはチェックする必要がある項目が増えている

新基準適合のクルマについてはどうか。

令和3年4月1日の法規改正について、問題となっているのは道路交通法第十九条の「自動車登録番号標の表示の義務」の規定だ。

第十九条 自動車は、・・自動車登録番号標を国土交通省令で定める位置に、かつ、被覆しないことその他当該自動車登録番号標に記載された自動車登録番号の識別に支障が生じないものとして国土交通省令で定める方法により表示しなければ、運行の用に供してはならない。……とある。

数値としては「令和3年4月1日の法規改正の新基準適用となるのは、令和3年4月1日以降に初めて登録等を受ける自動車で、前面のナンバーは上向き10°〜下向き10°、左向き10°〜左右向き0°の中で設置する」という記述がある。

これを超えてしまう場合は法令違反というコトになるのだ。

ちなみに、文中に「左右向き0°」という、ちょっと難しい言葉遣いがある。コレは0なので右でも左でもないから左右向き0°という表現となっている。要するに左には10°角度を付けてもイイけれど、右には傾けてはいけないというコトだ。

なんで左には傾けてイイのに、右には傾けてはイケナイのか?

それはおそらく、左側通行で歩行者や並走車から認識しにくい取り付け方法をしないようにという配慮からだ。
たとえば、追越車線を走る車両のナンバーがボディの右側についていて、さらに右に10°傾けられていると、他のレーンを走行する車両からそのナンバーは認識しづらい。
歩道から車線数の多い道路の中央レーンを走行する車両のナンバーを見る場合も同様だ。
そういった経緯もあり、右には傾けてはならないという改正となったと思われる。

なお、繰り返しになるが、令和3年4月1日からという記述が多いが、先述した通り、実際には令和3年3月9日に新基準適用までの猶予期間が設定され、同新基準は令和3年10月1日から適用となっている。

SDF押田さんのFDにくだされた厳重注意は適切なものだったのか?

さて、ひるがえってSDF押田さんのFDはどのように取り締まられたのか。

・ナンバープレートの取り付け角度には新基準で規定された数値がある
・そのナンバープレートの取り付け角度の数値は垂直方向では、0°(垂直)でなければならない

という根拠によって、取り締まりの対象となり、厳重注意を宣告されたのだ。

しかし、ひとつ目については、SDF押田さんのFDは新基準の適用外である平成7年6月の新規登録車両であるコト。
そして、ふたつ目のナンバープレート0°(垂直)という規定は、新基準の取り付け部分の数値規定にナイというコト。

こういったコトから、SDF押田さんは、この取り締まりに合理性がないと判断、現場でも抗議をしたが、厳重注意を宣告されたというワケだ(繰り返しになるが、記事公開時には、小隊長から謝罪されている)。

厳重注意を受けたFD3Sに乗り、神奈川県警察本部にむかうSDF押田さん

当該車両に乗って、神奈川県警察本部と神奈川県公安委員会に意見をしたためた文書を提出に! 回答は4ヶ月後以降!?

そこで、今回厳重注意の対象となった事象について、取り締まりの方法は適切だったのか、また認識の齟齬についての是正が必要と考えたSDF押田さんは、神奈川県警察などに確認を取ってみるコトにした。

SDF押田さんが提出した文書がこちらだ。

SDF押田さんが関係各所に提出した書類

これを持って、神奈川県警察本部と、神奈川県公安委員会へ提出。

この2箇所は神奈川県横浜市中区海岸通の同じ建物に入っているため、そこを訪れた。

1階フロアの受付窓口で、申し込む。

窓口では、公安委員会は直接書類を受け取るコトはない等の押し問答があったものの、横の待機場所で待ち、個別に担当部署の方に説明しつつ手渡しをする形となった。
ちなみに公安委員会は委員会ではなく、委員会室という部署の方が受け取り、公安委員会に渡すというプロセスとなった。

神奈川県公安委員会については、まず文書を受理するかについてが決定するまでに、おおよそ4ヶ月以上かかるという。
また神奈川県警察については、警察本部高速道路交通警察隊への調査などを行い、回答するの話だった。

いずれも回答は後日となるので建物を離れ、取り締まり当日の様子をSDF押田さんに説明してもらうために大黒PAに向かった。

文書を提出したその日に、取り締まりを行った大黒PAの分隊の小隊長から謝罪が!

ほどなく、大黒PAに到着。

なにしろ、首都高湾岸線に乗ればほんの15分ほどの距離だ。

しばらくすると、SDF押田さんのスマホが鳴る。
なんとそれは、大黒PAの警察本部高速道路交通警察隊大黒分駐所からの電話であった。

大黒PAに到着してほどなく、SDF押田さんのスマホが鳴った

というコトで、同じ大黒PA内の北西にある建物へ向かう。

そこで迎えてくれたのは、SDF押田さんへ厳重注意を宣告した警察官の上司となる小隊長だった。

SDF押田さんが、改めて経緯を話し、このまま取り締まり対象を誤認したままでは問題があるコトを告げると、小隊長は深くお辞儀をし、取り締まりの内容が間違いであったコトを謝罪した。
そして、フロントナンバーの取り付けは上下方向について垂直である必要はないというコトが確認できた。

SDF押田さんは、ひとしきりこの誤認が長く続いた場合に、問題が波及した可能性などを改めて小隊長に伝え、今後も不正改造の防止についての活動を行っていくコトを話していた。

呼び出しにより、大黒PAの警察本部高速道路交通警察隊大黒分駐所に向かうSDF押田さん

小隊長からの謝罪により、少なくとも大黒PAで同様の取り締まりはなくなったと思われる。

これは憶測で真相は不明だが、現場の警察官の垂直0°という思い込みは「左右方向の位置について、右向きにならず0°」という記述の左右を上下と間違えて記憶してしまったという可能性もあるのではないかとも考えられる。人間誰しも誤認識はあるものなので、今回のやりとりによって誤認のタネがひとつ消えたコトは、双方にとって大切なコトだったのではないだろうか。

「無料車検」は、直接取り締まりしにくい長時間駐車の解消法ともいえるのか?

また、余談ではあるが、本質的なところでいえば、大黒PAをはじめとしたPA/SAへの長時間駐車問題がある。現状は「無料車検」と呼ばれる違法改造車等の検問が、そのひとつの間接的なゆるい解消方法のひとつとされているようにもみえる。

前部ナンバーに角度の指定が付いたという今回の話ではないが、長時間駐車も明確な時間を切られて対象車両のドライバーに事情を聞き、それによって取り締まりの有無を判断するというスタイルが一般的になるという可能性もないとは言い切れない。

こういった法規の問題もルールになるか、マナーで収まるかは、ドライバー各々の行動いかんにかかっているのに間違いはない。そんな側面もあらためて見直していく機会になればとも思う。

ともあれ、今回の発端である、SDF押田さんのナンバー角度問題については現状は口頭での謝罪。
SDF押田さんは文書による意見の提出をし、文書による回答をリクエストしているので、今後、その返事の有無、そして回答があった場合はその内容についても追って報告していきたい。

提出当日は20時15分に大黒PAは閉鎖となった。翌日は大規模な取り締まりが行われたようだ

REPORT:古川教夫 PHOTO:稲葉浩一・古川教夫