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自衛隊新戦力図鑑

ステルス戦闘機F-35Aも高速道路から離陸

この訓練には、8機のスイス軍F/A-18戦闘機が参加したようだ。スイス西端ヴォー州、F/A-18部隊の基地であるペイエルン空軍基地に隣接する高速道路A1号で実施された。スイスが高速道路を使った離着陸訓練をするのは異例のことだが、欧州全体で見れば珍しいとも言えない。5月には北欧スウェーデンがJAS39グリペン戦闘機を用いた高速道路からの離着陸訓練を実施しており、同じく北欧のフィンランドは年次訓練「バーナ」として行なっている。昨年の「バーナ23」では、ノルウェー軍から参加したステルス戦闘機F-35Aが初めて高速道路での離着陸を行ない、注目された。

5月21日にはスウェーデン軍が高速道路での離着陸訓練を実施している。参加したは同国製のJSA39 グリペン。グリペンは高速道路などの臨時滑走路からの運用を念頭に設計された機体で短距離離着陸能力に優れている。写真/NATO

もともと、欧州各国は冷戦時代に国土が戦場となる可能性に備え、空軍基地が破壊された場合の代替滑走路として高速道路を活用するアイデアを持っている。ソ連崩壊とともにその脅威も薄れたが、ロシアによるウクライナ侵攻以後、再び現実的な脅威として認識されるようなった。スイス軍は今回の訓練実施の理由として「欧州の安全保障環境悪化」を挙げている。

フィンランドは毎年、高速道路での離着陸訓練を行なっており、昨年はノルウェーのF-35Aやイギリスのタイフーンも参加した。F-35Aが高速道路で離着陸を行なうのは、このときが初めての試みだった。写真/フィンランド軍公式Xより

高速道路なら、どこでも滑走路にできる?

さて、読者の皆さんは「ある程度の幅がある直線道路なら、どこでも滑走路として使うことができるのだろうか?」と疑問に思われたかもしれない。答えは「No」だ。いくつか理由があるが、もっとも大きな問題は路面の強度だ。アスファルトやコンクリートに充分な厚みが無いと、着陸の衝撃と重量によって戦闘機の降着装置がめり込んでしまうのだ。

冷戦時代の最前線であったドイツとポーランド、北欧スウェーデンやフィンランドでは、一部の高速道路が代替滑走路としての利用を前提として作られている。スイスも、訓練は長く行なっていなかったが、滑走路利用可能な高速道路を国内にいくつも建設している。

スイス軍「アルファ・ウノ」訓練より。訓練にあたって中央分離帯のガードレールが撤去された。また、FOD(エンジンへの異物混入による損傷)を防ぐため、路面が清掃された。兵士たちが横一列となって異物がないかチェックをしている。写真/VBS/DDPS

敵の攻撃下で部隊と能力を維持する「分散化」

高速道路や地方の小規模飛行場などを代替滑走路に使うアイデアは、欧州だけでなくアメリカ軍も注目している。ロシアや中国など、軍事的に拮抗する能力を持った相手との戦いでは固定された基地や集結した部隊は長距離攻撃の標的となるからだ。

スイス空軍は、訓練の目的として「分散化」能力の向上を挙げている。同空軍は国内3カ所の空軍基地に戦闘機部隊を置いているが、仮にこの3カ所が破壊されただけで、戦闘機が全滅・能力喪失しては大問題だ。戦闘機はとても強力な武器だが、地上にあるうちは“的”にすぎない。部隊や運用機能を分散させ、敵の攻撃を回避して反撃に転じる――こうした考えのもと、各国とも代替滑走路での航空機運用に再注目している。

フィンランドの「バーナ23」訓練より。着陸したノルウェー軍のF-35が給油を受けている。エンジンを稼働させたまま給油する「ホットピット給油」が行われた。これは離陸までの時間を短縮し、戦闘機にとってもっとも危険な地上にいる時間を短くするためだ。写真/フィンランド軍公式Xより

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