連載

自衛隊新戦力図鑑

手堅くまとめた新型車両

陸上自衛隊が2015年度予算から導入した水陸両用車AAV7は、もともとアメリカ海兵隊が1970年代に開発した車両で、すでにアメリカでは90~00年代にかけて後継車両開発が本格化していた。当初、海兵隊では重装甲で高速水上航行可能な高性能の新型車両「EFV(Expeditionary Fighting Vehicle、遠征戦闘車)」計画を進めていたが、開発予算高騰を理由に2011年に、当時の国防長官によって中止に追い込まれてしまう。

陸上自衛隊の「AAV7」。もともとアメリカ海兵隊の上陸作戦用として1970年代に開発された車両だ。自衛隊が採用したものは90年代に近代化改修をされたタイプ(RAM/RS型)となる。U.S. Marine Corps photo by Staff Sgt. Kassie L. McDole
2011年に開発が中止された「EFV(遠征戦闘車両)」。AAV7の水上航行速度13km/hに対して、3倍近い46km/hの高速性能を持つなど、きわめて野心的な車両だった。U.S. Marine Corps photo by Sgt. Marcy Sanchez

海兵隊としては、将来的な発展の余地を残しつつも、現実的な性能におさめた計画にシフトし、伊国イヴェコ社の8輪装輪装甲車「スーパーAV」をベースとして英国防衛大手のBAEシステムズ社より提案された車両を2018年に採用した。

ACVは2024年現在で184両が配備されている。装輪式車両は小さく見えるが、車高は2.9mで、たとえば90式戦車(車高2.3m)より高く、写真で受けるイメージよりかなり大きい。U.S. Marine Corps photo by Sgt. Courtney G. White

装輪式のメリット・デメリット

車体はアルミ合金製だったAAV7に対して防弾鋼板製となり、車体構造自体も地雷やIED(砲弾などを流用したジャンク地雷)の爆発を受け流すV字型構造を採用。単なる「箱」にすぎなかったAAV7より乗員防護性能が向上している。

注目すべきはAAV7のような装軌式ではなく、装輪式を採用したことだろう。一般に、装輪式は路上機動性には優れるが、不整地に弱く、特に水陸両用車の場合は砂浜のような軟弱地でスタックする可能性が高いと言われる。しかし、海兵隊では地形にあわせてタイヤ圧を調整するセントラル・タイヤ・インフレーション・システム(CTIS)など、装輪技術の発展によって充分な不整地機動性を実現できるとしている。

一方で、装輪式はサンゴ礁や岩礁を乗り越えにくいという弱点がある。また、水上航行速度はAAV7より若干遅く、上陸作戦能力の低下を危惧する声もある。だが、現代では「リスクの高い敵前強襲上陸が実施される可能性は低い」という考えもあり、地上での機動性がより重視されたと思われる。

ACVは2024年現在で184両が配備されている。装輪式車両は小さく見えるが、車高は2.9mで、たとえば90式戦車(車高2.3m)より高く、写真で受けるイメージよりかなり大きい。U.S. Marine Corps photo by Sgt. Courtney G. White

AAV7より乗員数が半減!?

最後に乗員数について解説しておきたい。一般にAAV7の乗員数は「クルー3名+25名(または21名)」と言われているのに対して、ACVは「クルー3名+13名」となっている。「ACVは乗員輸送力が減った」と勘違いする声も見かけるが、AAV7の25名という数字は「非武装の人間を詰め込めば乗れる」程度のもので、戦闘装備を身にまとった海兵隊員であれば、1個分隊13名程度が適切だ。筆者は何度も海兵隊の取材をしているが、実際の運用も同様だった。

対してACVは対地雷乗員防護のため、一人一人に衝撃吸収座席が設けられており、「詰め込む」ということができないため、実際の運用に即した座席数が「乗員数」として公表されているだけなのである。

ACV車体後部には水上航行用の大型スクリューが付属している。ウォータージェット推進のAAV7より遅く、11km/hにとどまる。U.S. Marine Corps photo by Sgt. Courtney G. White

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