リトナとWRX……1.5Lでも2.0Lターボでも骨格は基本的に同じ?

1990年代に一世を風靡したセクレタリーカーというカテゴリーに参入するため、スバルが投入したインプレッサ リトナ。シンプルで軽量というパッケージにより生み出される軽快な走りは、現代のモデルでは味わえない初代インプレッサならではのフィーリングだった。
初代インプレッサといえば、WRCの活躍の影響もあり、真っ先に連想するのはWRXシリーズだ。毎年改良を重ね、ライバルであるランサーエボリューションと鎬を削った戦いも注目を集めた。
3代目インプレッサまでは、こうした実用グレードとスポーツモデルであるWRXシリーズというラインナップだったこともあり、1.5Lエンジンを搭載するエントリーグレードでもシャシー性能はWRCで通用するものであったことが特徴だ。

ボディ剛性をはじめとした基本性能は同一ながら、エンジンのスペックや駆動系の違い、装備の差異で多彩なグレード展開を広げていたインプレッサ。改めて車種やグレードの整理が行われる現代において、トップグレードであるWRXとベーシックなエントリーモデルに近いリトナの違いを改めて見ていこう。

リトナとWRX……エクステリアを比べてみる




まずはエクステリアだが、セダンとクーペという違いはあれど、ホイールベースなど基本的なディメンションは同一。設定されているボディカラーも、ライトシルバーメタリックのみ同一カラーだが、リトナのアクティブレッドに対し、WRXにはヴィヴィアンレッドと微妙に異なる赤色だ。

またリトナにはブラックマイカの設定が存在しない代わりに、スプラッシュグリーンメタリックという専用色が与えられる。
デザインで大きく異なる部分でいえば、フロントバンパーとグリル、ボンネット。バンパーに関しては、WRXがスポーティな印象のデザインで標準装備となる丸型の大型フォグランプが入り、ラリーカーとしてのイメージも強い印象。一方のリトナはほかのNAモデルと同一のオーソドックスなデザイン。
フォグランプも異形の標準的なサイズで、ディーラーオプションとして当時の価格で、2万1000円で設定されているもの。フロントバンパーもWRX用のものが7万3500円でディーラーオプションとして装着が可能だったが、全長が変わるために車検証の記載変更が必要となるアイテムだった。
リヤ周りではコンビランプのデザインはセダン、クーペ共に同一。リヤスポイラーは、一見同一形状に見えるが、WRXに標準装備されるものが大型タイプ、リトナに装着されるものがディーラーオプションの中型タイプと微妙に形状が異なるのがポイント。ちなみに大型タイプは6万円、中型タイプは5万9000円で設定されていた。
足元では登場初期のA型と呼ばれるWRXが15×6JJのアルミホイールが標準装備(C型と呼ばれる2度目の改良モデルからは16インチ)。リトナは13インチのスチールホイールにフルホイールカバーが標準装備となっていたが、撮影車にはディーラーオプションのディッシュタイプ14×5.5JJのホイールが装着されていた。
リトナとWRX……インテリアを比べてみる


インテリアでは撮影車のリトナには限定車のVリミテッド用が装着されているが、標準シートはサポートも控えめなオーソドックスなシートが装着されている。ステアリングはWRXもリトナも3本スポークではあるが、ウレタンと本革という素材の違いはもちろん、WRXにはシフトノブと併せてナルディ製がおごられる。


ダッシュボード形状などは同一ながら、WRXにはオートエアコンを装備。リトナにはマニュアルエアコンが標準となる。メーターパネルも基本デザインが同一ながら、指針がWRXでは赤、リトナは白とキャラクターに合わせた細かな違いがみられる。

装備面ではWRXは4スピーカー、リトナはフロントドア左右のみの2スピーカーの設定。また、リトナはAWDモデルでもリヤワイパーが装備されない。のちに発売されたWRX STiバージョン タイプRには装備されており、廉価グレードのため省略されていたようだ。

比ぶべくもないが軽快さはまさしくインプレッサ

実際の走りの性能においては、400cc+ターボの差は大きく、WRXとリトナでは140psの差があるが、前回の試乗記でも記した通り、1080kgという車重のおかげか、たった100psで軽快に走るリトナは、まさに思わぬ伏兵感が強い(笑)

もちろん、WRXはリトナよりも120kgほど車両重量があるものの、その名に恥じぬ圧倒的なパワーと道を選ばない気持ちの良いコーナリングや、安定感はリトナにはないアドバンテージといえる。

現代でも240psといえばかなりのハイパワーなモデルであり、そこへ1200kgという軽量ボディの組み合わせで、最近のクルマでは味わえない強烈なパワー感と軽快な走りが魅力である。


現代の衝突安全基準や環境性能を踏まえると、初代インプレッサWRXのようなモデルの登場は難しいといえる。それだけに困難な環境の中、スバルファンが歓喜するようなモデルの登場に期待したい。

| 車名・グレード | インプレッサ・リトナ(1.5) | インプレッサ・リトナ(1.6) | インプレッサWRXセダン |
| 型式 | GC1 | GC4 | GC8 |
| 全長 | 4350mm | 4350mm | 4340mm |
| 全幅 | 1690mm | 1690mm | 1690mm |
| 全高 | 1405mm | 1415mm | 1405mm |
| ホイールベース | 2520mm | 2520mm | 2520mm |
| 車両重量 | MT:1020kg | MT:1080kg | 1220kg |
| AT:1060kg | AT:1120kg | ||
| エンジン | EJ15型 | EJ16型 | EJ20型 |
| 水平対向4気筒SOHC16バルブ | 水平対向4気筒SOHC16バルブ | 水平対向4気筒DOHC16バルブインタークーラーターボ | |
| 排気量 | 1493cc | 1597cc | 1994cc |
| 最大出力 | 97ps/6000rpm | 100ps/6000rpm | 240ps/6000rpm |
| 最大トルク | 13.2kgm/4500rpm | 14.1kgm/4500rpm | 31.0kgm/5000rpm |
| タンク容量(燃料) | 50L(レギュラー) | 50L(レギュラー) | 60L(ハイオク) |
| トランスミッション | 5速MT/4速AT | 5速MT/4速AT | 5速MT |
| 駆動方式 | FF | MT :パートタイム4WD | フルタイム4WD |
| AT:フルタイム4WD | |||
| サスペンション | 前:マクファーソンストラット | 前:マクファーソンストラット | 前:マクファーソンストラット |
| 後:デュアルリンクストラット | 後:デュアルリンクストラット | 後:デュアルリンクストラット | |
| ブレーキ | 前:ベンチレーテッドディスク | 前:ベンチレーテッドディスク | 前後:ベンチレーテッドディスク |
| 後:ドラム | 後:ドラム | ||
| タイヤサイズ | 165SR13 | 165SR13 | 205/55R15 |
| 最小回転半径 | 5.1m | 5.1m | 5.2m |
| 新車価格(当時) | MT:119万8000円 | MT:136万円 | 229万8000円 |
| AT:129万1000円 | AT:148万3000円 |
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