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今なお人気の初代インプレッサ
GC/GF型という形式で呼称される初代インプレッサは、登場から30年以上が経過した現在でも人気が衰えることのない名車として知られる。
中古車市場でも状態の良いモデルは新車価格を超えるものも数多いことも人気の高さを裏付けている。初期モデルから最終型まで、2.0L水平対向4気筒DOHCインタークーラー付きターボエンジンにフルタイムAWDを組み合わせた高い戦闘力をもつWRXシリーズが人気の中心だが、インプレッサは、歴代を通しスポーツモデルという側面の他に、実用車としての一面もあり、経済性に優れた低排気量の自然吸気モデルもラインアップされていた。
特に95年から追加された水平対向4気筒1.5L自然吸気エンジンを搭載するスポーツワゴンC’zは新車価格が130万円台~(97年の改良時には120万円台に!)と、当時の軽自動車並みの価格設定により爆発的な人気モデルとなった。
スポーツモデルの最高峰であるWRXシリーズから、リーズナブルなプライスで若年層にも新車を手に入れる喜びを与えた実用重視のスポーツワゴンまで幅広くモデル展開をしていた初代インプレッサだが、WRCでも活躍した2ドアクーペモデルの存在も忘れてはならない。
インプレッサWRXはWRCと共にあり
WRCデビュー時は改造範囲が市販車に近いグループAカテゴリーにWRXセダンで参戦していたが、マニュファクチャラーチャンピオンとドライバーズチャンピオンのWタイトルを獲得した1995年に続き、1997年からはより改造範囲の広いWRカークラスでの参戦となったインプレッサは、戦闘力の高い2ドアクーペボディにスイッチした。
グラマラスなフェンダーなどは、のちにデビューする限定車インプレッサ22B STiバージョンでも忠実に再現された。また、22Bがデビューする前年に発売を開始したインプレッサWRX タイプR STiバージョンも不動の人気モデルとして現在の中古車市場でも高値で取引されている。
しかし、この2台のロードゴーイングモデルとWRカーというGC型インプレッサを象徴するクーペの陰に「リトナ」と呼ばれるモデルが存在したことをご存じだろうか?
ハイパワーターボ+4WDという高い戦闘力をもつWRXとは対極の1.5L SOHC自然吸気エンジン(FF)と1.6L SOHC自然吸気エンジン(AWD)の実に地味な実用エンジンが搭載されていたモデルだ。元々輸出仕様として2ドアクーペは存在しており、リトナは国内仕様としてアレンジしたもの。ちなみに輸出仕様は1.8L、2.2L、2.5Lが設定されており、いずれも自然吸気のSOHC仕様が搭載されていた。
1990年代に各社がラインナップした「セクレタリーカー」とは?
海外ではセクレタリーカー(秘書のクルマ)というジャンルが、働く女性が通勤に使用するクルマとして人気が高まり、スポーツモデルではないおしゃれなクーペが一時ブームとなった。国内でも同様のコンセプトであるトヨタ・サイノスや日産NXクーペなどが続々とリリースされていた。
この2台はベース車こそあるものの純然たるオリジナルのクーペとしてデザインされているが、一方で往年の2ドアセダンとも言える、セダンを2ドア化したモデルもセクレタリーカー市場に投入されている。リトナはそんなモデルの1台だった。
軽く安くシンプルがリトナの魅力
■メカニズム
リトナは1.5LのMTモデルでは車重がわずか1020kg!1.6Lの4ATでも1120kgという軽さが特徴だ。
1.5LエンジンのEJ15は97ps、1.6LのEJ16でも100psというお世辞にも十分とは言えないアンダーパワーのエンジンでも、軽さを武器にMTであれば意外と軽快に走ることが可能だ。
また、1.6Lモデルは全車AWDとなるが、MT車ではインプレッサシリーズ唯一のパートタイム式という点も面白い(AT車はフルタイムAWD)。そして、1.5LのMT車では車両本体価格がインプレッサシリーズで最もリーズナブルな110万円台という点も見逃せない。
■エクステリア
エクステリアはセダンやスポーツワゴンのNAグレードと同一のオーソドックスなバンパーに控えめな形状のリヤスポイラー(ディーラー装着オプション)という出で立ちで、WRX系と比べるとシンプルな佇まいだ。
■インテリア
インテリアはWRX系とインパネやダッシュボード形状こそ同一ながら、マニュアル式のエアコンや白色指針のメーターパネルなど、廉価モデルっぽさも随所に見受けられる。
価格帯を考えると致し方ないとは思うが、女性向けというコンセプトでありながら、サンバイザーのバニティミラーがなかったり、センターコンソールボックスが省略されていたりするなど惜しい点も散見される。
前述のスポーツワゴンC’zが120万円台であったことを考えると、若い世代にもっと売れていてもよかったのでは?と思わせる価格設定だ。それでも当時はステーションワゴンをはじめとしたRVブームであったこともあり、積載性や利便性を兼ね備えるスポーツワゴンを+10万円で買えるならそちらを選んでしまう心理もうなずける。
ショーモデルで消えた幻のオープンカー
そして、こうしたセクレタリークーペは、リトナに限らず他社のモデルでも、あまりに凡庸なパワートレーンであったことが災いし、クーペ=スポーツモデルという定番の形態から外れたパッケージングは国内では大ヒットとはならず、リトナも登場からわずか1年で姿を消してしまった。
ただ、唯一惜しむらくは、1995年の第31回東京モーターショーでリトナをベースとしたオペレッタという2ドアオープンモデルが参考出品され、電動ソフトトップや真っ赤なボディにアイボリー内装というセンスの良さなど、その完成度の高さに発売を期待したものの、ベースモデルの販売不振もあってか市販化には至らなかった。
それでも、インプレッサシリーズにクーペボディを設定したことで、WRカーやWRXタイプR、22Bといった名車たちを生み出すきっかけとなった功績は大きい。
車名・グレード | インプレッサ・リトナ (1.5) | インプレッサ・リトナ (1.6) | インプレッサWRXセダン (参考) |
型式 | GC1 | GC4 | GC8 |
全長 | 4350mm | 4350mm | 4340mm |
全幅 | 1690mm | 1690mm | 1690mm |
全高 | 1405mm | 1415mm | 1405mm |
ホイールベース | 2520mm | 2520mm | 2520mm |
車両重量 | MT:1020kg AT:1060kg | MT:1080kg AT:1120kg | 1220kg |
エンジン | EJ15型 水平対向4気筒SOHC16バルブ | EJ16型 水平対向4気筒SOHC16バルブ | EJ20型 水平対向4気筒DOHC16バルブ インタークーラーターボ |
排気量 | 1493cc | 1597cc | 1994cc |
最大出力 | 97ps/6000rpm | 100ps/6000rpm | 240ps/6000rpm |
最大トルク | 13.2kgm/4500rpm | 14.1kgm/4500rpm | 31.0kgm/5000rpm |
タンク容量(燃料) | 50L(レギュラー) | 50L(レギュラー) | 60L(ハイオク) |
トランスミッション | 5速MT/4速AT | 5速MT/4速AT | 5速MT |
駆動方式 | FF | MT :パートタイム4WD AT:フルタイム4WD | フルタイム4WD |
サスペンション | 前:マクファーソンストラット 後:デュアルリンクストラット | 前:マクファーソンストラット 後:デュアルリンクストラット | 前:マクファーソンストラット 後:デュアルリンクストラット |
ブレーキ | 前:ベンチレーテッドディスク 後:ドラム | 前:ベンチレーテッドディスク 後:ドラム | 前後:ベンチレーテッドディスク |
タイヤサイズ | 165SR13 | 165SR13 | 205/55R15 |
最小回転半径 | 5.1m | 5.1m | 5.2m |
価格 | MT:119万8000円 AT:129万1000円 | MT:136万円 AT:148万3000円 | 229万8000円 |