本実証事業では、自律型の海洋無人機(ASV※1)と遠隔操作型の無人潜水機(ROV※2)の海上での実証試験を通じて、洋上風力発電設備の維持・管理における水中点検作業の自律・無人化が検討され、自律型無人探査機(AUV※3)等の海洋ロボティクスの社会実装に向けたロードマップ作成が行われる。
再生可能エネルギーの主力電源化の一環として、政府は2030年までに10GW、2040年までに30~45GW規模の洋上風力発電案件を形成するという目標※4が掲げられており、その開発が今後急速に進むと予想されている。しかし、その維持管理には海上や水中での作業が含まれることから、作業安全性やダイバーの不足、点検保守のコスト増といった課題が懸念されている。そこで、水中を自律航行することで海中データの収集、設備の点検などを行うことができるAUV等の活用が注目されている。
水中を自律探査するAUVの社会実装に向けた最初のステップとして、今回はASVとROVを用いて、将来のAUV化を想定した実証試験が海上で実施される。本実証試験では、浮体式洋上風力発電設備に見立てた観測対象※5の水中データを無人で取得する技術の有効性が確認される。
その実証試験の結果をもとに、AUV等の活用に向けた技術的課題の抽出・整理が実施され、データ駆動(DX)型の洋上風力維持管理モデルや収益モデルの検討が行われる。最終的には、AUV等の社会実装のためのロードマップが作成される。
本実証事業では、AUV等の社会実装に向けたインフラ技術に知見を持つOKI、多岐にわたる領域でのプロジェクト遂行により培ったプロジェクトマネジメント力によって事業全体の取り纏めを主導するTOYO、洋上風力発電設備の設計・製作・施工の実績を有するNSE、そして海洋無人機(ASV・ROV)を用いた点検技術を有するFullDepthが共同実施体制を構築し、各社の得意分野を活かして実証試験とAUV社会実装ロードマップの作成に取り組んでいく。

【注釈】
- ASV(Autonomous Surface Vehicle):
自律制御により水上を航行する無人機。今回の実証試験ではFullDepthのパートナー企業である株式会社エイトノットが保有する「Eight Knot Ⅰ」を使用予定。 - ROV(Remotely Operated Vehicle):
遠隔操作により水中を潜行する無人潜水機。今回の実証試験では、FullDepth製の「DiveUnit300」を使用予定。 - AUV(Autonomous Underwater Vehicle):
機器自身が水中の位置や周囲の状況を認識し、自律して動く無人潜水機。 - 資源エネルギー庁「第7次エネルギー基本計画」(2025)
- 今回の実証試験では、OKIが所有する計測バージ「SEATEC NEO」の係留ラインが観測対象とされる。