実用性を犠牲にしないスイフトスポーツと割り切りのロードスター




スイフトスポーツは、スズキのエントリーコンパクトカーであるスイフトをベースに高出力ターボエンジンを搭載し、シャシーに専用チューニングを加えたスポーツモデルだ。「ZC33Sファイナルエディション」は基本性能はそのままに内外装へ専用加飾が加えらたモデルとなる。
対するロードスターはオープン2シーターであり、実用性では5人乗りのスイフトスポーツに対して明らかに劣る。荷室容量はスイフトスポーツが265Lで、後席背もたれを倒せば拡張できるのに対し、ロードスターは車体後方に約130Lのトランクが備わるのみだ。ロードスターの車内は手荷物などを置く場所の確保すら難しい。
その代わり、幌を開け放ってオープンエアを感じながら走れるのはロードスターの特権だ。両車の全長と全幅は同じくらいだが、ロードスターの方が全高が明らかに低く、着座位置も低く後方に座るため、見える景色や体感速度はもちろん、運転感覚もスイフトスポーツとは大きく異なる。
スズキ スイフトスポーツ ZC33Sファイナルエディション
ボディサイズ=全長3890mm×全幅1735mm×全高1500mm
ホイールベース=2450mm
車両重量=970kg
タイヤサイズ=195/45R17(前後)
マツダ ロードスター S
ボディサイズ=全長3915mm×全幅1735mm×全高1235mm
ホイールベース=2310mm
車両重量=1010kg
タイヤサイズ=195/50R16(前後)
FFホットハッチ vs. FRオープンスポーツ


スイフトスポーツはターボエンジンを搭載した前輪駆動で、ロードスターは自然吸気エンジンを搭載した後輪駆動だ。
ターボ特有の大トルクにより中間加速性能で優れるのはスイフトとなる。レブリミットが7500rpmのロードスターは、回すほどにパワーが出る昨今では珍しい高回転型エンジンであり、両車の出力特性は正反対となる。それ以上に違うのは駆動方式によるハンドリングとシフトフィーリングだ。
ロードスターは、FRならではの自然な操舵感と変速機を直接操作する手応えがしっかりと感じられる。そのうえ、リアタイヤに近い位置に低く座るためクルマと一体となるような操作感が味わえるだろう。
スイフトスポーツは高めのシートポジションやワイヤーを介して操作する節度感の薄いシフトフィーリングなど、スポーツ性やではロードスターに劣ると言わざるを得ない。
しかし、スイフトスポーツはサスペンションアームなども専用設計となっており、FFスポーツのなかでも屈指のハンドリング性能を誇る。こうしたチューンドカーのようなアンバランス感もスイフトスポーツのホットハッチらしい点だ。
スズキ スイフトスポーツ ZC33Sファイナルエディション
エンジン形式=直列4気筒ガソリンターボエンジン
排気量=1371cc
最高出力=140ps/5500rpm
最大トルク=230Nm/2500-3500rpm
トランスミッション=6速MT
駆動方式=2WD(FF)
マツダ ロードスター S
エンジン形式=直列4気筒ガソリンエンジン
排気量=1496cc
最高出力=136ps/7000rpm
最大トルク=152Nm/4500rpm
トランスミッション=6速MT
駆動方式=2WD(FR)
安価で実用的なスイスポはホットハッチのあるべき姿


スイフトスポーツ「ZC33S ファイナルエディション」は価格が232万9800円、ロードスターの最廉価グレードとなる「S」は289万8500円であり、その価格差は約57万円だ。
FRオープンスポーツカーとしては破格の値段で販売されているロードスターだが、各部を専用設計として細部まで調律されているため価格はどうしても高くなる。スイフトスポーツにこれほどの完成度を求めると、200万円程度の額ではとても販売できないだろう。しかしスイフトスポーツも完成度は十分に高く、決して雰囲気のみをスポーツカーのようにまとめただけのクルマではない。
安価でありながら実用性を一切犠牲にせずスポーツ走行を楽しめるように仕上げられたクルマがスイフトスポーツだ。対するロードスターは、オープンエアとFRならではのスポーツドライビングの両方を安価に味わえるお得なクルマといえる。
FRスポーツカーはもちろん、もっとも身近であったはずのFFホットハッチですら高価で希少な存在になりつつある現在、この2台の特色と価格は優劣つけがたいほどに魅力的だ。
車両本体価格
スズキ スイフトスポーツ ZC33Sファイナルエディション:232万9800円
マツダ ロードスター S:289万8500円
