連載

内燃機関超基礎講座

V型6気筒 セオリーはバンク角120度V6

自動車用エンジンとして主流のひとつであるV6。クランクシャフトは120度ずつの3スロー(クランクピンが3 つ)であり、直列6 気筒(6スロー)に対してクランク長、ひいてはエンジン長を短縮できるのが長所だ。6気筒を等間隔点火のV 型として仕立てるなら、バンク角は120 度の計算。理論上はこれで正しいのだが、実際に自動車に積むことを考えると巨大な体積を占めてしまうことから、とくに市販車では搭載性に大きく難がある。

アウディR18のエンジン

アウディR18のエンジン | ル・マンのために仕立てられたディーゼル。ターボチャージャーをバンク角内に収める構造で、広いバンク角はメカニカルレイアウトの自由度が高いことが見て取れる。半面、全幅を含めエンジンが大きくなってしまう。

現実的ではないバンク角をどう解決するか? バンク角90度V6

90度V6という選択は、90度が理論値のV8エンジンから2気筒を除いて仕立てたユニットであることが多く、V8に対して歴史が浅いV6という手段の難しさを物語る。実際に市販車へ搭載された例も少なくない。仮に3スロー構造の120 度アングルクランクで組み上げた場合、点火の間隔は1番から順に90 度~150度~90度~150度~90度と不等間隔点火となり、トルク変動やそれにともなう振動、排気干渉などの対策が必要となる。

クランクピンオフセットと90度V6

バンク角90度のV型6気筒

クランクピンオフセット | 120 度バンク以外のV6で等間隔点火とするための手段が、クランクピンオフセット。たとえば90度バンクの場合なら、向かい合う気筒のクランクピンを同相(共用)とせず、30度の位相を持たせて、6スロー構造とする。これにより、90 度+30 度=120 度を実現させるというわけである。これにより、さまざまなバンク角のVが実現することとなった。現代のV型エンジン設計において、もっとも重要といえる技術である。

PRVエンジン


PRVエンジン | プジョー・ルノー・ボルボの3ブランドで共通のユニットで、90度のバンク角を持って登場。当初は3スローのクランクを持ち不等間隔点火運転だったが、のちに30度位相のクランクピンを持つ6スロークランクに改められている。

ホンダ・C型エンジン

ホンダ・C型エンジン | レジェンドのために仕立てられ、のちにNSXに搭載されたV6エンジンも90 度のバンク角だった。クランクは30 度位相の6 スロー構成。FF(横置き)を念頭に開発され、60 度に比べて全高を抑えられるのがメリットのひとつ。

バンク角60度V6とクランクピンオフセット

90度V6はパッケージングという視点から解決にはなるが、クランクピンオフセットでサイクルを等間隔点火にしても6つのクランクピンが連続的に均等に並んでいないため、どうしても振動が生じてしまう。ならば構造的にも60度ずつに均等に並べてしまおうと試みれば、さすがに60度もの位相違えではクランクピン周りの強度が保てない。そこで、間にウェブと称する板をかませて60度のクランクピンオフセットを実現したのが、60度バンク角のV6エンジンである。

クランクウェブ | 引出線で示したところがクランクウェブ。60 度オフセットを実現するために間に挟んだ部材で、カウンターウェイトの機能も担う。クランク構造で見れば直列6 気筒と似通い、全長が長くなりがちなので、いかにサイズを抑えつつ性能を確保するかが課題のひとつ。

日産VR30DDTT型 バンク角60度V6


日産VR30DDTT型 | ウェブを介してクランクピンを配するため、左右バンクのオフセットが大きくなるのが60度Vの特徴。バンク内のスペースも狭いことから、吸排気デバイスを収めるのに制限が大きくなる。縦横搭載を問わず、現代のV6の主流である。日産のVR30DDTTのツインターボは左右バンクの外側に配置されている。

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