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CB125R初となるブルーが登場、価格12%アップでメーターがフルカラーTFT液晶に
ホンダ・CB125R……52万8000円(2024年4月25日発売)
特にアナウンスはないが、2024年モデルではフロントフォークの側面にリフレクターが追加されているのが分かる。なお、キャンディークロモスフィアレッドとパールスモーキーグレーはディスコンとなり、継続のマットガンパウダーブラックメタリックについては、フォークのアウターチューブと前後ホイール、シュラウドをブラックに変更している。
2024年モデルは5インチフルカラーTFT液晶メーターを新採用。表示レイアウトはバー/サークル/シンプルの3種類から選択でき、写真は「バー」の状態だ。背景色はホワイト/ブラック/自動が用意されている。なお、生産国のタイではCB150Rが販売されており、こちらはコストの問題なのかまだ旧型メーターを継続している。
小排気量シングルを高回転域まで引っ張る楽しさ
51~125ccの原付二種クラスは、ホンダのCT125・ハンターカブとPCXが圧倒的に売れている。付け加えると、出荷台数ランキングの上位10台はAT限定免許で乗れる機種で占められており、例えばレジャーバイクのダックス125とモンキー125とでは、前者が自動遠心クラッチを採用しているからか、出荷台数では2倍以上もの開きがあるのだ。
そんな中でヤマハは、AT限定免許では乗れない原付二種フルサイズMTスポーツ車を3機種も投入した。このカテゴリーは長らくホンダのCB125RとスズキのGSX-R125/GSX-S125しかなかったので、にわかに活気付いた印象だ。付け加えると、フルサイズスポーツという括りでは、カワサキが今年1月にニンジャe-1とZ e-1という原付二種枠の電動バイクを発売している。おそらく、これらが束になっても出荷台数でハンターカブに追い付くことはないだろうが、とはいえ選べる車種が増えたことは、ユーザーにとってメリット以外の何ものでもない。
ホンダのCB125Rは、2018年3月に初代が発売された。2021年にモデルチェンジした際、水冷単気筒エンジンはSOHC2バルブからDOHC4バルブへ。令和2年排ガス規制に適合しつつ、最高出力は13psから15psへと引き上げられている。今回試乗した2024年モデルは、基本的にメーターと左スイッチの変更のみであり、主要諸元については前年モデルと共通だ。
新たに採用された5インチフルカラーTFT液晶メーターは、表示項目や機能にこそ差異はあるものの、新型のCBR650RやCB650R、CBR400R、NX400らと同じタイプであり、原付二種のCB125Rにも導入したのは画期的だ。メーターを操作するための4ウェイセレクトスイッチも含め、同クラスのライバルに対して大きなアドバンテージとなるだろう。メインスイッチをオンにすると、ウイングマークを中央に配したオープニング画面が出現する。この演出はオーナーなら思わずニヤリとするはずだ。
さて、まずはエンジンについて触れたい。最高出力15psを10,000rpmで発生するこの水冷シングル、本領を発揮するのは7,000rpm以上で、具体的には1速なら25km/hよりも上の領域だ。2,000~3,000rpm付近でクラッチミートして発進すると、25km/hを超えるまでは加速がややモッサリとした印象で、7,000rpm付近からググッと力強くなる。発進と停止を繰り返す街中では、同じ原付二種のスクーターに先行されることが多い。付け加えると、低~中回転域にしっかりと実用トルクのあるグロムやモンキー125の方が、はるかに扱いやすいと感じるだろう。
CB125Rが輝きを増すのは、やはり高回転域まで回したときだ。7,000rpmを超えたあとはレッドゾーンの始まる11,000rpmまで勢いよく伸び上がり、15psが伊達ではないことを実感する。このパワーバンドを維持していれば、上り勾配のきつい峠道でも力強く駆け上がり、この領域のリニアなレスポンスと合わせてスポーティなエンジンであることを実感する。
ひんぱんにギヤチェンジをしてパワーバンドを維持する。小排気量MTスポーツ車の醍醐味の一つだが、これを気忙しいと感じる人はグロムやモンキー125などの横型エンジン車が向いているだろう。ホンダはそうしたモデルもラインナップしているからこそ、このCB125Rのようなスポーティ路線に振り切ったバイクを作れたわけで、刺激度ならこちらの方が圧倒的に上だ。
エンジンパワーに対してシャシーにはまだ余裕あり
シャシーについては、エンジンと同様に2024年モデルで変更はなく、メーターなどの一部装備が見直されたものの、車重は従来と同じ130kgのままだ。
スイングアームを外側からではなく中央で支持する「インナーピボット」フレームを採用しているため、膝からくるぶしまでの車体幅が非常に狭く、ヤマハのMT-125やXSR125よりもかなりスリムに感じられる。その一方で、ハンドルバーは操作しやすいように幅が広めであり、スリムな下半身とのギャップがCB125Rの個性の一つと言えるかもしれない。
走り出してすぐに感じるのは、圧倒的な自由自在感だ。タイミングもバンク角の決定も、全てのコントロールがライダーに委ねられており、操縦に対して過不足なく反応してくれる。旋回中のライン変更も容易であり、だからこそ初見の峠道でも思い切り楽しめてしまうのだ。きっかけさえ与えれば、あとはバイク任せで向きを変えるというタイプではないので、そういう意味ではイージーではないのかもしれない。だが、全てが自分の制御下にあるという感覚は実に愉快だ。
前後のサスペンションについては、試乗車が下ろし立てだったため、以前テストしたときほどの作動性の良さは感じられなかった。とはいえ、距離を延ばすほどにどんどん動きはスムーズになるはずだ。シャシーについては上位モデルのCB250Rをはじめ、海外のCB150RやCB300Rらと共有しているため、最も排気量の小さいこのCB125Rの場合、特に剛性面でオーバースペックに感じることも。とはいえ、これが走りに余裕を生んでいるのも事実であり、特にベテランライダーなら倒立フォークを含むフロントエリアの剛性感に満足するだろう。
最後にブレーキについて。こちらもまだ慣らしが済んでいなかったものの、フロントのニッシン製ラジアルマウント対向式4ピストンキャリパーは強力で、レバーを握り込むほどに高い制動力を発揮する。一方、リヤはコントロール性に重きを置いている印象だ。IMU付きのABSは、路面のギャップによって荷重が抜けた際に何度か介入したが、それでも不安になるような挙動は皆無だった。
車両価格は5万5000円アップして52万8000円に。およそ12%の値上げは小さくはなく、ヤマハの3機種(YZF-R125、MT-125、XSR125)やスズキの2機種(GSX-R125、GSX-S125)を含め、このカテゴリーでは最も高額に。個人的には、新型メーターにスマホ連携機能の「ホンダロードシンク」が搭載されていれば、この値上げ幅に納得する人も増えただろうとは思う。とはいえ、クラスを超えた質感の高さはこの価格に見合うものだ。