クロスカブ110にライバル出現? タイ・ヤマハPG-1とはどんなバイクなのか。触って、走って、気づいたこと。

タイで生まれたアンダーボーンフレームのバイクがヤマハのPG-1だ。ご覧のようにホンダのクロスカブ110やCT125ハンターカブに似ている。最近、一部の業者によって国内でも販売されるようになった。原付二種の人気も高くなってきている今、気になっている人も多いのではないということで、じっくりと試乗してみることにした。

REPORT●後藤 武
PHOTO●山田俊輔
※PG-1(タイ仕様)の購入に関するお問合せはシルバーバック(https://silverback-mc.co.jp/html/company.html)までお願いいたします。

どんな使い方にも対応できる万能マシン

同じくらいの排気量帯で同じジャンルのバイクだから、どうしてもクロスカブやハンターカブと比べたくなるが、PG-1を実際に見てみれば特にカブ系に似せているわけではないということがわかる。

ヤマハ・PG-1(タイ仕様)……423,500 円(消費税込み)

アンダーボーンフレームに横型エンジンを組み合わせているから必然的に同じような雰囲気になっているだけである。

細部の作りを細かく見ていくと、特に質感が高いという感じはしない。これはたぶんタイのマーケットで求められているのがコスパと実用性だからだろう。

 

アジアンテイストを感じるスタイリングなどは人によって評価が分かれるかもしれないが、遊びゴゴロが漂うのもPG-1の個性である。

 

タイヤは前後16インチ。太めのブロックダイヤがワイルドな感じを醸し出している。
東南アジアでこのバイクが狙っているのは若いライダーたち。そのために価格も抑えめにしつつ、若いライダーたちのライフスタイルに溶け込むことを狙っている。タンデムシートが標準装備されているのもそのためだ。

必要にして十分なパワー

114ccのエンジンはカブ系にくらべるとショートストロークの設定。となると「高回転まで気持ちよく回るのかも?」と思うかもしれないが、実はまったり型。低回転からのトルクは十分にあるが、力強く加速していくという感じではなく、高回転でも特に元気になるわけではない。

こう書いてしまうと面白くないエンジンのように思われてしまうかもしれないのだがさにあらず。このバイクの性格にとても良くマッチしていてノンビリ走っているときのフィーリングが実に良いのである。

高めのギアのまま登り坂なにさしかかっても粘り強くトコトコと走り続けるし低回転でもギクシャクしない。このまったり感はカブ系に比べて低めに設定された圧縮比も影響しているかもしれない。

ニュートラルから1速に踏み込んだときや、シフトアップ、シフトダウンのショックはカブ系に比べて少ない。クラッチがやさしくつながってショックをいなす。シフトダウンでペダルの後ろ側を踏みながらスロットルを軽くあおって回転をあわせてやればほとんどショックを感じずにシフトダウンができる。

ハンドリングも不満なし

ハンドリングはぶっちゃけて言ってしまえば「こんなもんでいいんじゃないかな」という感じである。前後16インチのタイヤは安定性も十分。街を走る程度であれば素直で乗りやすく、安定性にも不満はない。エンジン同様ハンドリングもまたまったり型である。
タイトなコーナーであればそこそこのペースで走ることができる。しかし、高速コーナーを攻める気分にはならない。サスペンションのダンピングが効いていなくて、バンクさせると車体が微妙にボヨンボヨンと動いてしまう。
ただ、そもそもこのバイクにそんな走りを求める人はいないだろう。

トレッキングのようにノンビリと景色を眺めながら走るのであれば不満はまったく出ない。
前後ブレーキにABSはなし。ABS付きのバイクしか乗ったことがないという人にとっては不安材料になるかもしれないが、何度かフルブレーキングをしてみたところ制動力、コントロール性に不満は感じなかった。

オフロードを走る機会はなかったが、足つき性の良さと粘り強いエンジン特性を生かせば、意外な走破性の高さを発揮しそうである。更にスタンディングしたときは、両足の内側でシートをホールドできる。

PG-1は特に高級感があるわけでもなく、走りが素晴らしいというわけではないのだけれど、それがネガティブな印象にならないのがこのバイクの面白いところかもしれない。街を走ったり田舎道をノンビリツーリングするのであれば全てが足りている。だから「これでいいじゃん」とか「これもありだな」と感じるのである。

最近のバイクは色々な装備によって付加価値の高いものが多い。そこが魅力ではあるのだが逆に必要もない人もいる。PG-1はそういった付加価値的要素を潔く削ぎ落としているところが最大の特徴。もしかしたらPG-1のように必要最低限の装備で、十分に楽しめるというバイクがこれから見直されるようになってくるのかもしれないと試乗していて思ったことである。

ポジション&足つき(身長178cm 体重74kg)

ポジションに窮屈さはなく日常の速度域でバイクをコントロールしやすい。膝の曲がりも少ないので長距離でも疲れは少ないだろう。

前後のタイヤが16インチということもあり足つき性は良好だ。

 

良好な足つき性はオフロードなどを走行した場合に心強い武器になってくれるはずだ。

ディテール

フロントブレーキはディスク。制動力は十分。ABSの装備はなし。
ホイールはワイヤースポークでリムはスチールのメッキ。タイヤは90/100-16。太めのタイヤなので迫力がある。
エンジンは空冷SOHCで114cc。ボア・ストロークは50.0×57.9mm。圧縮比は9.3:1。
快活な排気音を奏でるマフラー。後端が跳ね上がったスタイルが遊び心を感じさせる。
リアブレーキはドラムだが制動力、コントロール性共に不満は感じない。
シフトペダルはシーソー式。リンケージはピロポールなどを使わずにダイレクトに接続されている。
フロントシートは座面が前後に広くて自由度が高い。タンデムシートが標準装備なのも嬉しいところ。
シートを開けるとガソリンタンクが顔を出す。ロックなどはなし。ガソリン容量は5.1リットル。
角パイプを使ったスイングアームにツインショックの組み合わせ。

ヘッドライトはLEDではなく電球を使用するが明るさは十分。
左のスイッチボックスはライトのハイ・ロー切り替え、ウインカー、ホーンボタンを配置。
右のスイッチボックスには上からキルスイッチ、ハザード、セルボタンを配置している。
ハンドルは一般的なパイプハンドル。ハンドルは軽いアップだが取り付け位置が高いので前傾にはならない。
メーターはアナログ。ギアポジションインジケーターを装備。トリップメーターはなし。
車種名 PG-1 タイ仕様
車体サイズ(mm) 805×1980×1050
ホイールベース (mm) 1280
シート高(mm) 795
重量(kg) 107(オイルと満タン燃料を含む)
エンジン形式 空冷4ストロークSOHC単気筒
総排気量 (cc) 114
圧縮比 9.3:1
最大出力 未発表
最大トルク 未発表
変速機形式 4段ループ式
ボア×ストローク(mm) 50.0×57.9
点火方式 TCI方式
始動方式 セルフ式(キック式併設)
燃料タンク容量(L) 5.1
フレーム形式 バックボーン
ブレーキ形式 Front ディスクブレーキ
Rear ドラムブレーキ
タイヤサイズ Front 90/100-16
Rear 90/100-16
乗車定員(人) 2
カラーバリエーション ・スカイブルー
・イエロー
・ブラウン
・ブラック

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後藤武 近影

後藤武