販売価格〇百万円の旧車って、車両保険や盗難保険に加入できる? 専門店に聞いてみました

写真左)カワサキZ1 写真右)ホンダ ドリームCB400FOUR どちらも需要や希少価値が極めて高い、超お宝モデルとして有名。 ※写真はイメージ
すこぶる値が張る旧車は需要の高さや希少性から「お宝車」や「お宝モデル」とも呼ばれる。新車を超える超高額なビンテージバイクを入手する際に気になるのが、車両保険や盗難保険への加入。一般的に低年式の中古車は、新車に比べて車両保険や盗難保険の金額は安く見積もられがち。各地の旧車専門店にヒアリングしてお宝車でも加入でき、なおかつ“購入価格や市場価値に見合う”車両保険や盗難保険をリサーチしてみた。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
※注:下記の情報はすべて2024年10月1日現在のものです

まだまだ続く旧車ブーム。特にお宝バイク=〇百万円は当たり前…

2024年現在、国内におけるバイクやクルマの中古車市場は、“旧車ブーム”に沸いている。一般的に(筆者的に)旧車とは、数十年前に生産された、希少価値の高いビンテージモデルを指す(※注1)。

旧車とよく似たワードに「絶版車」がある。絶版車とはメーカーが生産や販売を終了したモデルのこと。「絶版」の由来は出版業界から。重版(増刷)されなくなった本の印刷原版が廃棄され、重版できなくなることを絶版と呼び、その言葉がバイクやクルマにも用いられるようになった。

※注1:旧車の定義は明確ではなく、個人により解釈が異なる
写真左)ヨシムラJAPANがチューニングを施したカワサキ Z1(正式名称はZ900スーパー4)。Z1は旧車の中でも超お宝車として君臨。
写真右)PMCがカスタマイズしたカワサキ Z1。フロントをシングルディスク式からWディスク式に変更。

なぜ旧車の価格は、異常なほど爆上がりしたのか?

バイクの旧車ブームに拍車をかけ、販売価格を跳ね上げた要因の1つ。それはカワサキのZ1やZ2、ホンダのCB750FOURやCB400FOURなどに乗る芸能人たち(芸人やタレントが多い)。

ほぼほぼ革ジャン+ジーンズの王道スタイルで現れる彼らは、テレビのバラエティ番組や自身のYouTubeチャンネルなどで、

「子供の頃からの憧れだった……」、「昔、暴走族やってた時代の愛車だったもんで……」、「現行モデルには魅力を感じなくて……」、「馴染みのショップに偶然入ってきたバイクを譲ってもらった…」云々と言う感じで、なんだか「旧車を選んだオレって、いいセンスしてるでしょ」という雰囲気が匂ってしまう(文句を言いつつも、我ながらよく見てる)。

これと合わせて、世の旧車に憧れていた(お金を持っている)おじさん達も、今買わなければもう二度と手に入れられないかもしれないと、旧車市場に参上。

その結果、“そこそこ高価(といいつつも価格は年々緩やかに上昇中)”だったホンダの空冷4ストCB系や水冷2ストNSR系、カワサキの空冷4ストZ系や空冷2ストのマッハやKH、スズキの空冷4ストGS系や油冷4ストGSX-R系、ヤマハの空冷4ストXJ系や水冷2ストRZ系などは、“超お宝モデル”と呼ばれ、人気はうなぎ登り。2024年現在、販売価格は異常なまでに高騰した(※注2)。

50代や60代にとって青春時代をともに過ごし、身近だった懐かしのバイクたちは、庶民の趣味の領域を遥かに超えた、もはや一般人には金銭的にも名声的にも手の届かない、遠い遠い存在となってしまった….(※注3)。

※注2:旧車の価格が異常なまでに高騰したのは芸能人や小金持ちのオジサンたちだけが原因ではありません。要因は他にもあります(文字数の都合上、ここでは省略)
※注3:1969年生まれの筆者がバイクブームだった高校2年生の頃(1986年)、友人Nが「教習車の代表」であり「すでに時代遅れ」だった程度良の愛車・ホンダCBX400F(走行距離は約10,000km)を「お前、中免(中型自動二輪免許/現在の普通自動二輪免許)取ったらしいな。20万円でいいからオレのCBXを買ってくれない? 2ストのRZ250が欲しいんだ」と打診。しかし筆者は「う~ん...やっぱり今さらCBX400Fはないでしょうよ」と丁重にお断り。半年間のアルバイトで稼いだ80万円を元手に(世はバルブ時代で景気が良く、学生バイトでも結構稼げた)、めでたく新車のホンダVFR400R(初期型のNC21)を購入。友人Nの打診は、今となっては何とももったいない限り。超お宝車となったCBX400Fと盗難保険のお話は下記参照!

「購入価格や市場価値に見合う」車両保険や盗難保険はあるか?

前置きが長くなったが、ここからが本題。前述の通り、高額な旧車は需要増+希少価値の高さによって「お宝車」、「お宝モデル」とも呼ばれる。遥か昔の中古車ながら、同クラスの新車価格を大幅に上回る、高価なお宝車を購入する時に気になるのが、車両保険や盗難保険の加入だろう。

一般的に低年式の中古車は、新車に比べて車両保険や盗難保険の金額が安く見積もられる傾向にある。ここでは各地の旧車専門店に取材し、旧車やお宝車でも加入でき、加えて「購入価格や市場価値に見合う」車両保険や盗難保険の有無をリサーチしてみた。

旧車やお宝車でも加入できる「車両保険」

ZuttoRide(ずっとライド)の「ずっとバイク車両保険」

各地の旧車専門店に取材した結果、頻繁に名が挙がった車両保険が、バイク保険や自転車保険に特化した「ZuttoRide(ずっとライド)」の『ずっとバイク車両保険』。

この車両保険は、新車・中古車・年式・車種・排気量を問わず加入OK。契約者の年齢制限もないのが特徴だ。加入条件と加入対象は、購入から90日以内の車両やパーツであること。また購入金額が5万円(税込)以上のバイク、パーツ、アクセサリーであること(いずれも個人売買を除く)。

ずっとバイク車両保険の加入時は、領収書など購入先の販売店が発行した金額明細書類が必要。旧車や中古車の場合、ZuttoRide(ずっとライド)が車種・購入金額・中古車相場・車両の状態などを吟味し、加入申込者の意見や要望もすり合わせて車両保険金額を設定。加入者が支払う保険料は、加入者のノンフリート等級(過去の事故歴)や車両保険金額などによって決定される。

ZuttoRide(ずっとライド)の「ずっとバイク車両保険」 https://zuttoride-ssi.co.jp/bike-sharyou.html

Chubb(チャブ)損害保険の「クラシックカー保険」 

旧車専門店への取材では、Chubb(チャブ)損害保険株式会社が展開する「クラシックカー保険」を推すショップも多かった。このクラシックカー保険は、通常ならば車両保険に加入することが難しい、製造年から25年以上経過したクルマやバイクに対し、市場価格、コンディション、保管状況等を考慮した金額での車両保険を提供している。

クラシックカー保険対象車の条件は、
・製造年から25年以上経過した国産車および輸入車(二輪自動車を含む)
・年間走行距離が5,000km以内
・通常走行が可能な状態にある登録車両(ナンバープレートの付いた車両)
・原則、車両保険が付保されること
※注:レプリカや改造車、また車両の状態等によっては加入不可

保険料は加入者のノンフリート等級(過去の事故歴)や車両保険金額などによって決定。「1975年以前に製造」、「年間走行距離2,000km以内」の両方の条件を満たせば、20%の保険料割引も適用される。

Chubb(チャブ)損害保険の「クラシックカー保険」 https://www.chubb.com/jp-jp/individuals-families/classic-car.html

旧車やお宝車でも加入OKの「盗難保険」

ZuttoRide(ずっとライド)の「盗難保険」

車両保険も人気だった「ZuttoRide(ずっとライド)」の盗難保険は、最大300万円まで補償。領収書など購入金額を証明する書類がある車両ならば、新車・中古車ともに対応する。

この盗難保険は車両購入費の補償に加え、パーツ盗難保険(最大20万円)、鍵穴のいたずら補償(最大5万円)も付帯。保険料(年会費)の目安は下記の通り。

1年プラン年会費(税込)車両盗難保険
金額(上限)
車両盗難時の
自己負担額
パーツ盗難保険
金額(上限)
カギ穴いたずら
補償金額(上限)
基本特典
盗難54,400円5万円5%2万円2万円
盗難105,400円10万円5%2万円2万円
盗難157,000円15万円5%2万円2万円
盗難208,600円20万円5%2万円2万円
盗難3012,700円30万円5%5万円3万円
盗難4015,900円40万円5%5万円3万円
盗難5019,000円50万円5%5万円3万円
盗難6022,200円60万円5%10万円3万円
盗難7025,400円70万円5%10万円3万円
盗難8028,400円80万円5%10万円3万円
盗難9031,600円90万円5%10万円3万円
盗難10034,700円100万円5%20万円5万円
盗難11037,300円110万円5%20万円5万円
盗難12040,000円120万円5%20万円5万円
盗難13042,800円130万円5%20万円5万円
盗難14045,600円140万円5%20万円5万円
盗難15048,400円150万円5%20万円5万円
盗難16051,500円160万円5%20万円5万円
盗難17054,600円170万円5%20万円5万円
盗難18057,800円180万円5%20万円5万円
盗難19060,400円190万円5%20万円5万円
盗難20063,000円200万円5%20万円5万円
盗難22069,300円220万円5%20万円5万円
盗難24075,600円240万円5%20万円5万円
盗難26081,900円260万円5%20万円5万円
盗難28088,200円280万円5%20万円5万円
盗難30094,400円300万円5%20万円5万円
※注:2024年10月1日現在の料金

→ ZuttoRide(ずっとライド)の「盗難保険」 https://zuttoride.jp/insurance/

レッドバロンの「盗難保険」

全国展開するバイクの新車&中古車販売店「レッドバロン」では、レッドバロン会員を対象とした独自の盗難保険を展開。レッドバロンで新車や中古車を新規で購入し、レッドバロン会員となった場合、店頭販売価格の100%。それ以外の場合は、査定価格の100%(1年契約の場合)が保険金額となる。

保険料は保険金額の1%以下(店頭販売価格、または査定価格が100万円ならば、保険金額は年額1万円以下)に設定するなど、リーズナブルな保険料を実現。レッドバロン盗難保険のポイントは、

加入新車・中古車・メーカーを問わず、レッドバロンで販売する車両が対象。価格は5万円(税込)以上
継続次年度以降も継続可能(盗難防止装置の効能期限までに新品と交換(購入)された場合
保険金額
(契約金額)
新規購入の場合は店頭販売価格の100%、それ以外の場合は査定価格の100%(1年契約の場合)を保険金額とする。免責金額なし
保険料
(一時払)
「保険金額の1%以下(※)」で加入できる お求めやすい盗難保険
※3年長期契約時:0.95% 1年契約時:1%
ココが安心・愛車の評価を高めてくれるカスタムパーツも査定評価
・外国車や逆輸入車などの高額車両もカバーOK
・盗難車両が見つかった場合は、保険金を修理代金としてお支払い
※注:2024年10月1日現在

もしも保険の対象となるバイクが盗まれた際、次の1と2のいずれの条件も満たす場合に補償される。

1:ハンドルロック等の施錠をし、キーを抜いた状態であったこと
2:レッドバロン指定の盗難防止装置「BL-10」を完全な状態で装着していたこと

詳細は下記の公式WEBサイトをから

→ レッドバロンの「盗難保険」 https://www.redbaron.co.jp/buy/flow/theft_insurance/

盗難保険には上記のほか、専門店が車両購入者向けに独自展開している場合もある。旧車購入時は、必ずネットの評判や口コミなどで信頼できるショップであるかをリサーチ(エンジンをオーバーホールせず、外観のみキレイにして売却する悪質なショップもあり)。次に車両保険や盗難保険は加入できるか?、また車両の保証やアフターフォローはきちんとしているか(旧車は購入後すぐに車両の不具合が発生する等々、店舗とユーザーとの間でトラブルが非常に多いのも現実)を確認することが大切。

一部の超お宝車は加入不可な場合も…旧車の購入時は要注意

写真左)ホンダ ドリームCB400FOUR  写真右)ホンダ ドリームCB750FOUR  両車とも旧車の中では超お宝モデルとしてリスペクト。

高額な新車のビッグバイクの車両保険や盗難保険は、安価な原付よりも当然ながら保険料は高額。これは旧車にも当てはまり、お宝度が高くなる=販売価格が高額になるほど、保険料も販売価格に比例して割高になる。

一部の旧車は、お宝度・希少価値・車両の程度により、車両保険や盗難保険の加入を断られる場合もある。ちなみにホンダCBX400Fは一時期、新聞やテレビのニュースでも取り挙げられるほど盗難が多発した(現在のスカイラインGT-R R32/R33/R34盗難事件に似ている)。

大阪の近畿自動車道では男性がCBX400Fで走行中、乗用車に強引な幅寄せにあい停車。助手席に乗っていた男にCBX400Fを強奪されるという事件も発生。

これらが原因で保険会社は、CBX400Fの盗難保険加入を不可としていた時期もあった(2024年10月現在も、諸条件によっては加入不可。必ず旧車を購入前に要確認)。

1981年(昭和56年)に発売された1型のホンダCBX400F(ホワイト×レッド)。登場時はクラス最高だった48馬力エンジン、バイクでは世界初となるインボードディスクブレーキなど、最新装備を導入して人気を獲得。絶版後は時を置いて人気が上昇し、徐々に中古車価格が高騰。2024年現在、400万円を超える車両も珍しくないほどの超お宝モデルとなった。

超お宝車は、さながら年期の入ったベテラン大物女優

旧車は純正パーツの入手がほぼ不可能(修理は代替品となる社外のリプレイスパーツ。もしくはワンオフパーツを使用するのが定番)なので、転倒などの自損事故は絶対に避けたい。

また超お宝車はコンビニでたった数分間、駐車している間に盗まれたという事案も珍しくない。しかも旧車は錆びやすいスチール製パーツが多く、屋外保管なんて論外。盗難抑止力が極めて高い、しっかりと施錠された屋内での保管がベストだ。

故障を防ぐため、日頃から細やかなメンテナンスが必要な旧車は、現行車に比べて手間もかかり、しかも消耗パーツ代や保険料などの維持費も高額になりがち。

旧車は現行車にはない外観・懐かしさ・アナログな乗り味を持っているのが大きな魅力。ただし現行車に比べ、旧車はあらゆる面でワガママで(よく故障する)、かなり面倒くさくて(管理や保管が大変)、しかもお金がかかる(維持費や保険が高額)、まるで年季の入ったベテラン大物女優のような存在。

旧車(特にお宝車)のオーナーになるには、相応の“財力・覚悟・忍耐力”が必要であることをお忘れなく。これらに自信のない人は、現行車の購入を、ぜひともオススメしたい。

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