180→270台! 全国から新旧メグロが集結の「メグロ・キャノンボール那須烏山」|映画『ゴジラ-1.0』の劇中車の展示も

戦時中に目黒製作所の工場があった栃木県の那須郡烏山市で、今年も新旧メグロが集うオーナーズミーティング「メグロ・キャノンボール那須烏山」が開催された。集まったメグロの台数は昨年比35%増の138台に。およそ800名が参加したイベントの模様をお届けしよう。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)、大屋雄一(OYA Yuichi)

メグロK3の発売をきっかけに有志の手によってスタート

皆さんは「メグロ」というブランドをご存じだろうか。今からちょうど100年前の1924年(大正13年)に創立した日本の二輪メーカーで、東京都品川区大崎本町に本社社屋と工場が隣接してあった。目黒駅や目黒不動尊、目黒競馬場などが近かったことから、社名を「目黒製作所」とした。庶民の足としてのコミューターが求められていた時代に、大排気量車の可能性を追求していた数少ない国内メーカーで、ワークスマシンを製作してレースにも積極的に参戦。外国車を相手にたびたび勝利するほど技術力が高く、情景の念を抱くライダーが非常に多かった。

1937年(昭和12年)製のZ97型。メグロ初の完成市販車で、公務員の初任給が75円の時代に950円で販売された高級車だ。写真は映画『ゴジラ-1.0』で実際に使用された劇中車で、イベントではオーナーがエンジンを始動するというデモンストレーションも。

1960年に当時の川崎航空機工業と業務提携を結び、その後は吸収合併により目黒製作所は消失するのだが、何人もの優れた技術者がカワサキへ籍を移し、後にZ1などの名車を次々と生み出している。

イベント会場はJR烏山駅から徒歩6分のところにある山あげ会館。駐車エリアに入れるのはバイクのみで、メグロとそれ以外とで駐車スペースが明確に分けられている。

3年前の2021年2月、カワサキがW800をベースとした「メグロK3」を発売し、メグロブランドの復活を宣言。このプロモーションビデオが、かつて目黒製作所の工場があった那須烏山市で撮影されたことから、市でも何かできないかと商工会や観光協会の有志が立ち上がり、2021年11月に初めて開催されたのが「メグロ・キャノンボール那須烏山」だ。会場は市内にある山あげ会館で、今年は11月3日(日)に開催された。

メグロのオーナーも、それを見に来るライダーもまたマニアック

メグロ以外のバイクが案内される駐車エリア。マニアックな車種が多く、ここを見て回るだけでも時間が溶けていく。

参加資格はメーカー・車種ともに制限はなく、徒歩でも入場可能とあって、参加者は年々増えている。主催者の発表によると、二輪車の入場台数は第2回の2022年が237台(うちメグロは89台)、2023年は270台(同102台)、そして今回は383台(同138台、うちメグロK3は54台)とのこと。これに伴い来場者数も100名ずつ増えており、今年はおよそ800名が集まったのだ。

今年来場したメグロK3は54台。11月20日には軽二輪のメグロS1が発売されたので、来年はさらに参加者が増えることが予想される。

当日の主なイベントは、11:00からの歓迎セレモニー、12:30からの市内パレード、そして13:30からのメグロ百周年記念セレモニーの三つだ。昨今の二輪イベントにありがちな、レーシングライダーや有名インフルエンサーが登壇してのトークショーやじゃんけん大会といった華々しいものは一つもない。しかし集まった人たちは、たくさんの新旧メグロやマニアックなバイクを眺めたり、そのオーナーたちとの交流を主な目的としているので、何ら不満がない様子だ。そして、会場を上品なムードにしているのがジャズの生演奏で、だからこそ市民に歓迎されているのだろう。

那須烏山市がイベントを後援していることから川俣純子市長が挨拶。獣医だった祖父がバイク好きで、所有していた2台のメグロを譲り受けたという。
会場に流れている音楽は二輪イベントでありがちなロックやポップではなくジャズ。しかも生演奏だ。
こうした世代を超えた交流が見られるのもこのイベントならでは。

このイベントに協力しているカワサキモータースは、発売前のメグロS1やW230を展示するなど大盤振る舞い。その隣には、町をあげてレストアしている1949年製のメグロZ号や、映画『ゴジラ-1.0』の劇中車も並んでいた。ちなみに、このイベントの二日前に金曜ロードショーで同作品が本編ノーカットで放映されており、実にタイムリーでもあった。

発売直前のメグロS1(72万500円)とW230(64万3500円)の展示も。背景の大きな看板は2022年にカワサキモータースが贈呈したものだ。
飲食出展エリア。このイベントに入場料1500円を払って参加すると、来場記念バンダナと烏山和紙で作られた栞、そしてこのエリアで使える600円分のクーポンがもらえる。ちなみにバンダナは単品で買うと1300円だ。
この日だけの特別パッケージも。町をあげて歓迎しているムードが伝わってくる。
昨年から3か年計画でスタートした「Z型」レストアプロジェクトの進捗を報告する二人。左がカスタムショップCROWSの澤村さん、右がカワサキモータースの奥村さん。当時の塗装を科学的に分析し、ゴールドのラインに松ヤニが使われていたことが判明するなど、レストアの域を超えたレベルの話に驚かされる。那須烏山市には、目黒製作所の工場がなくなったあとに起業して成功した元社員も少なくないとのことで、市内の多くの会社がこのプロジェクトに参画している。
目黒製作所の烏山工場で働いていた元社員の方々による挨拶。ダイキャストなどを担当していたとのこと。

パレードランには約270台が参加、町全体がお祭りムードに

歓迎セレモニーと集合写真の撮影が終わると、このイベントのメインとも言えるパレードランがスタートした。那須烏山市内のルートおよそ13kmを走るもので、メーカーや車種に制限はないことから、参加台数は昨年の約180台から今年は約270台に増えたとのこと。

第4回メグロ・キャノンボール那須烏山の集合写真。
12:30にスタートしたパレードラン。沿道には旗や手を振る市民の姿があちこちに見られ、このイベントが歓迎されているムードが伝わってくる。
ネームタグやひのき木札、和紙フラッグを作るといった、子ども向けコンテンツも充実。各協賛企業の協力によるもので、これらは無料で利用できるというのもうれしい。
初出展の栃木トヨタ自動車はレストアした初代クラウンを展示。このほか、栃木県警やカワサキプラザ宇都宮インターパーク/宇都宮北も初出展。

このメグロ・キャノンボール那須烏山は来年も開催予定とのことだが、メグロS1が発売されたことでさらなる来場者の増加が見込まれることから、山あげ会館よりもキャパシティのある会場も検討中とのこと。これについては決まり次第、モーターファンバイクスでお知らせしたい。

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…