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ベネリTNT125……368,500円〜
「アグレッシブなスタイルだな~!」ベネリTNT125を目の当たりにしたときの第一印象です。前後12インチタイヤを装着したコンパクトモデルなのですが、いうなれば4MINI版ストリートファイター的なボディデザインをしているのです。にらみの効いたフェイスデザイン、いかにも強靭なトレリスフレーム、そしてスラッシュカットされた2本出しアップマフラーなどで、ほかにはない個性的なスタイリングを構築しています。
12インチタイヤ装着のミニサイズバイクが登場したのはレーサーレプリカブームの80年代です。スズキGAG、ヤマハYSR(後にTZM)、ホンダNSRなど、スタイリングはみなコンパクトサイズのレーサーレプリカで、実際にレースも行われ人気を博しました。一方でヤマハTDR、カワサキKSRといったスーパーバイカーズ風のモデルも登場し、それらもまた人気となりました。以来12インチタイヤ装着のミニバイク(現在は4MINIと呼ぶ)はすっかり定着していますし、各地でレースも盛んに行われています。
現在に目を移してみると、ベネリTNT125のライバルとなるモデルは、ホンダGROM、カワサキZ125PRO、BRIXTON Crossfire125SXあたりになるんじゃないでしょうか。いずれにしても4MINIは手軽に乗れるのが最大のポイントなので、TNT125をセカンドバイクとして所有するのもありだと思います。
コンパクトなのに窮屈さがないポジション
ボディサイズが小柄な4MINIは、車重が軽くてホイールベースも短いのでとにかく取り回しがラクです。さらに足つき性もいいので体格が小さな女性にも不安なく扱えるのが特色です。反面、高身長のライダーにはポジションが多少窮屈なところもあります。ボクは身長が178cmあるので快適なポジションは期待していませんでした。ところが実際に乗車してみると、上体も下半身もまったく違和感がなかったのです。余裕があるわけではもちろんありませんが、ポジションきついな!なんて感じませんでした。
実は、TNT125のボディサイズはGROMやZ125PROと比較してわずかに大きいのです。加えて車重も20㎏ほど重たくて、4ミニとしてはマイナス要素が強いモデルだといえるのです。でもそれは、あくまでも比較しての話で、TNT125単体で考えれば乗りやすくできているといえます。シート高も780㎜となっているので、足つき性がいいのはもちろん、低すぎてヒザが窮屈なんてこともありません。このポジションならちょっと足を延ばしたツーリングにも十分に対応してくれるはずです。
足つき性(ライダー身長178cm)
軽快なレスポンスで元気な走りを後押しする油冷シングルエンジン
心臓部のエンジンは124㏄油冷SOHC4バルブ単気筒で、最高出力8.2kw/9500rpm、最大トルク10.0Nm/7000rpmというスペックです。この数値はGROM、Z125PRO、Crossfire125XSなどのライバルモデルより少しだけ上回っていて、高回転型でもあります。それを踏まえたうえで走り出してみました。
124ccと小排気量なので強いパワーを感じるわけじゃありませんが、低回転から軽やかにレスポンスしてくれ、2本出しマフラーから放たれる元気なサウンドの刺激も手伝って、快活な走りを満喫することができます。実際のスピードはともかく、吹け上がりが良くて伸びのあるエンジン特性なので、胸の空く加速感が味わえます。このいかにも元気なエンジンはアグレッシブなスタイルにもよくマッチしていて、市街地でも十分にスポーツライクな走りが楽しめます。今回は山道を走ることはありませんでしたが、郊外のちょっとタイトなカーブを駆け抜けたときの立ち上がり加速の良さから、ワインディングでもかなり楽しめるエンジンじゃないかと思いました。
ただし気になったポイントがひとつあります。それは、サイドスタンドを出した状態だと、ギアがニュートラルに入っていてもエンジンは始動しません。つまり暖機している間に身支度を整えるということができないのです。まあ冬場でもすぐに走り出して、ゆっくりと走りながら暖機する方法もあるので対処は可能ですが、やはりエンジンをかけっぱなしにして止めておけないのは不便です。
4MINIならではの機動力の高さでどこでもスポーティに走れる
12インチの小径ホイールだと路面の影響を受けやすく、安定感にも欠けるという現実があります。たしかに17インチ、18インチといったホイールサイズのバイクと比べればそうなのでしょうが、ミニバイクレースでのアグレッシブな走りを見てもわかるように、一般道を走るうえで不安を感じることはありません。むしろショートホイールベースもあって軽快な走行を実現してくれます。
直進安定性に関してもまったく問題なく、軽快なハンドリングと合わせてスポーティな走りを身近に楽しむことができます。また骨格である鋼管製トレリスフレームは非常に強靭なので、振り回すような扱いをしてもビクともしません。運動性も相当に高いレベルを実現していると思います。Φ35mm倒立フロントフォークとモノショック式リアサスペンションのストロークも十分で、作動性には若干硬さもありましたが、12インチタイヤとの相性も良かったように感じました。
ブレーキの効きもまったく不足はありません。フロント210mm、リア190mmローターを持つシングルディスクブレーキにはABSの装備はありませんが、前後連動ブレーキシステムとなっているので安定したブレーキング操作ができます。気になったのはフロントブレーキレバーの操作にアソビがほとんどなかったことです。まあこれは個体の問題ということもあるかもしれませんが、ちょっと使いにくかったというのが正直な感想です。
性能、車体サイズのどれをとっても扱いやすくて親しみが持てるTNT125ですが、30万円台の価格も大きな魅力だと思います。なのでビギナーや女性、さらにはベテランライダーのセカンドバイクとしても最適なバイクなんじゃないかと思いました。
主要諸元
- 車名(型式):TNT 125 (V02)
- トランスミッション形式:常時噛合5速リターン
- クラッチ形式:湿式多板
- 2次減速方式:チェーン式
- フレーム形式:トレリス(格子)フレーム
- 懸架方式(前):倒立テレスコピック
- 懸架方式(後):スイングアーム
- エンジン種類:油冷4ストローク単気筒
- 弁方式:SOHC4バルブ
- 総排気量:125cc
- 内径×行程/圧縮比:Φ54.0×54.5/9.8:1
- 最高出力:8.2kw/9500rpm
- 最大トルク:10.0Nm/7000rpm
- 始動方式:セルフスターター
- 点火方式:トランジスタ(TLI)
- 潤滑方式:圧送飛沫併用型
- 燃料供給方式:フューエルインジェクション
- 全長×全幅×全高:1770mm×760mm×1025mm
- 軸間距離:1215mm
- 最低地上高:160mm
- シート高:780mm
- 車両整備重量:124kg
- ホイールトラベル(前):120mm
- ホイールトラベル(後):28mm
- タイヤサイズ(前):120/70-12
- タイヤサイズ(後):130/70-12
- ブレーキ形式/径(前):油圧デイスク/210mm
- ブレーキ形式/径(後):油圧デイスク/190mm
- 燃料タンク容量:7.2L
- 燃費(WMTCモード):45.5km/L
- 乗車定員:2名